SXSWファイナリスト 『PONG!PONG!』はどう生まれたのか
SEESAWはデザインファームとして新規サービス開発支援をしています。よく「新規事業の開発って、どうやっているんですか?」と聞かれます。”下請け”ではなく”パートナー”としてどのように事業に携わっているのか、今回の記事では過去の事例を元に具体的に説明いたします!
今回ご紹介するのは、SEESAWが制作に携わったゲームに関する事業です。それはスマートフォンアプリでもテレビゲームでもありませんでした。私たちが作ったのは、世界初・デジタル卓球アクティビティ『PONG!PONG!(ポンポン)』。簡単に説明すると、卓球台にプロジェクションマッピングで画面を投影し、相手の陣地のブロックを実際のピンポン玉を使ったラリーで壊していくゲームです。発表されたのは2018年で、国内外のニュースやメディアでも取り上げられたので、知っている方がいらっしゃるかもしれませんね。
そんな『PONG!PONG!』は、テキサス・オースティンで開催される世界最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバル「SXSW2018」において、Interactive Innovation Awards のAI & MACHINE LEARNING部門でファイナリストにノミネートされました。世界から計13部門、65のノミネートが発表され、日本からは唯一のノミネートです。(参考:https://aktsk.jp/press/8331/)
球技 ✕ テクノロジーが生み出す新しい体験
2017年のとある日、日本最大級のゲームパブリッシャーである株式会社アカツキから、SEESAWのディレクターにこのような相談がありました。
「最近、子供も大人もこぞってスマートフォンのゲームをやっている。それは確かに面白いけれど、やっぱり老若男女が揃って熱くなるものって”球技”なんじゃないか?”新しいアクティビティ”になる球技を作りましょうよ!」
最初はそんな相談ベースの企画でした。確かに最近は球技ができる公園も減り、ボールに触れる機会は子供も大人も少なくなっています。でも、誰もが熱くなれるような”新しいアクティビティ”ってなんだろう?
話をしているうちに、浮かんだひとつの案が「球技とデジタルゲームの掛け合わせ」でした。昨今、球技の競技人口は減少傾向にあります。もちろんゲームの普及も理由のひとつですが、都会だと体を動かせる広い場所を確保できなかったり、年を重ねるにつれ大勢で集まることが難しくなったり、その理由は様々です。チーム制の球技は、現代の遊び方にマッチしていないのかもしれません。
それを差し置いても、球技を始めとしたスポーツはプレイする側でも、応援する側でも、人々を熱狂させる力があります。それは今も昔も同じです。
そんな球技にクライアントが培ってきた最新のテクノロジーの力を加えたら、現代のニーズに合った”新しいアクティビティ”が生まれるはず……と考えた私達は『PONG!PONG!』のプロジェクトをスタートさせたのです。
”卓球”を選んだ3つの理由
まずは実現可能で多くの人に受け入れてもらえそうなゲームデザインを企画します。ここはプロデューサーもディレクターもデザイナーも、脳みそを使って考えるフェーズです。プロジェクトを発足して程無くし、私達は”卓球”に目をつけました。なぜ卓球を選んだのか?それには3つの理由があります。
①場所を取らない
スポーツをやるハードルのひとつは、場所にあります。フットサルをするにはフットサルコートへ、バスケをするにはバスケットコートへ行かなくてはなりません。軽い気持ちでキャッチボールをやるにも、それなりの広さや開けた場所がないと危険を伴います。
その点卓球は、卓球台さえ設置できれば、そこまで大きなスペースは必要ありません。ゲームセンターや宿泊施設、なんならレストランなんかにも設置することが可能です。海外だと家に所有している方も多数いらっしゃいます。また、卓球台という限定されたエリアへのプロジェクションはそこまで大掛かりな機材を必要としないため、導入も低コストで済むところも重要なポイントでした。
②初心者でも楽しく遊べる+やりこみ要素がある
卓球に触れたことがある人は、他のスポーツに比べると意外と多いのではないでしょうか。特に日本人であれば、学校や温泉などで触れる機会が度々ありますよね。それほど身近にあり、老若男女が公平に楽しめる球技です。テニスは難しいと思う方でも、卓球は「ちょっとやってみようかな」という気持ちになりやすいでしょう。
ライトにプレイできる一方で、やり込めるのも卓球の魅力のひとつ。オリンピックで見るような卓球選手のプレイには圧巻されますし、大会があればテレビ中継されて盛り上がる国民的スポーツでもあります。
③手軽にプレイできる
ユーザーにとっての「手軽さ」は普及につながる一歩だと考えました。『PONG!PONG!』のプレイヤーは従来の卓球用ラケットとピンポン玉さえあればすぐにプレイできます。
デジタルとスポーツの掛け合わせは、VRのスコープを使ったり、スマホと連動させたりなど、ガジェット次第でいくらでも面白いものが作れます。ただ、”球技”と考えた時にガジェットを使用することはプレイの障害になりかねません。今回は「プロジェクション」と「高性能トラッキングセンサー」を使った仕組みを採用し、プレイヤーが特別なガジェットを用意する手間を省きました。これを野球やサッカーなど大きなフィールドでやるには壮大な開発とコストがかかってしまいますが、卓球台くらいの大きさであれば実現できると踏みました。
ゲームデザインに初挑戦!「幅広く愛されるゲーム」を作るには?
このような理由を踏まえ「卓球✕テクノロジー」というコンセプトが決まり、ゲームの内容も決まりました。
相手の陣地に投影されたブロックをピンポン玉で崩し、得点を競う非常に単純なルールで、ところどころに逆転が狙える特別なブロックがあり、最後まで飽きずに楽しめます。ラリーをするだけで遊べるので卓球の技術は問われず、初心者から上級者まで同じように遊べることにこだわって制作しました。
課題は「幅広い世代に受け入れられること」
大まかにゲームルールや遊び方が決まったら、総合的なアートディレクションがスタートします。ここからはSEESAWのビジュアルデザインの力を発揮させるフェーズになります。
まず第一に考えたのは、ゲーム全体のトーン&マナー(トンマナ)です。
ひとえにゲームと言えど、美少女がたくさん出てくるゲーム、ロボットが戦うゲーム、美しいカードを集めるゲームなど、ジャンルは様々です。『PONG!PONG!』はより幅広い世代が楽しめることを目的としたゲームなので、総合的なトンマナは誰にでも受け入れられやすいポップでシンプルなフラットデザインを採用しました。
初めてのキャラクターデザイン
ゲームの世界観には「宇宙」というテーマを選択。プロジェクションやトラッキングを使用したこのゲームの大きな特徴である最先端テクノロジーのイメージと、未知の空間というワクワクする雰囲気が「宇宙」によって表せるのではないかと考えたのです。
ゲームのメインビジュアルやプレイ画面では、壮大な宇宙を可愛らしい球体のキャラクターがポンポン飛び回ります。その中に登場するキャラクターは全4体。花を咲かせて攻撃するキャラは植物モチーフにし、それぞれの攻撃方法や設定と見た目のデザインをリンクさせました。こういったキャラクターデザインは普段SEESAWが制作しているグラフィックデザインにはあまりないものなので、難しくも楽しい、新たな経験になりました。彼らがユーザーに愛されるキャラクターになりますように……!
こんな経緯があり、球技とテクノロジーをかけ合わせた、なんだかワクワクする新たなサービス、『PONG!PONG!』が誕生したのです。
こちらはエンタメ寄りな企画でしたが、SEESAWではWebサービスやアプリ、メディアなど様々なデザインのUXやUIを含むサービスデザインをサポートしています。
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「サービスを根本からデザインしたい!」という思いを持ったデザイナー、ディレクターの方、ぜひ一度お話ししてみませんか?
SEESAWならやりたいことを実現できるかもしれません。
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