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『初音ミク Project DIVA』のクローバー♣クラブが飲みたくて

最近、ちょっとカクテル作りにハマってます。

といっても、趣味と呼べるほど本格的なものではありません。お酒に関する知識も無ければ、専門的な道具もなく、それどころか「お酒をジュースとかで割ると美味い」という認識のまま、100円ショップで買ったプロテイン用シェーカーをシャカシャカ振って満足しているようなレベルです。
けれども美味しそうな飲食物のレシピを調べ、実際に作って口にするという一連の流れは、私にとってささやかな楽しみになっていることだけは事実。ゲーム飯の考察や再現などと同様に、休日の良い気分転換になっています。

ジン、ラム、ホワイトキュラソー、コーディアルライム、トニックウォーター……カクテル用にと買い集めた飲料のボトルが日に日に冷蔵庫を圧迫していく様子を見ると、得体のしれない満足感に包まれます。
同時に、冷蔵庫の一角を占めるをアルコールとノンアルコールのボトル群見て、気付いたことがありました。

これならゲームに登場したあのカクテルが――それもビールと唐辛子入りのテキーラ・オールドファッションドじゃないやつが作れるな、と。

クローバー♣クラブ(『初音ミク Project DIVA』)

「狂騒の20年代」とも呼ばれる1920年代のアメリカといえば、あの悪名高い禁酒法時代として有名です。同時に、その裏で一見「お酒に見えない飲み物」を提供することで法の目を欺いたり、粗悪な密造酒の味を誤魔化すためにジュースやシロップで割ったりと、カクテル文化が大いに発展した時代でもあります。
今回取り上げる「クローバー・クラブ」も、そうした時代背景の下に生まれたカクテルの一つ。どうやらフィラデルフィアに実在した同名の紳士クラブで誕生したらしく、なんでも当時はメンバーの連帯感を高めるために各クラブでオリジナルドリンクを考案するのが流行っていたようです。

画像はPSP版でなくSteam版『初音ミク Project DIVA MEGA39’s+』より

私がそのカクテルの名前を知ったのは大学生の頃。それもPSPソフト『初音ミク -Project DIVA- 2nd』に収録されたミクオリジナル曲『クローバー♣クラブ』がきっかけでした。
ニコニコ動画における初音ミクブーム初期の名曲ということで、この曲で同名カクテルを知ったというボカロリスナーは私以外にもいるのではないでしょうか。

ただし、その当時は「そういう名前のドリンクがある」という認識止まりで、実際に飲んでみたいとは特に思いませんでした。
お酒といえばサークルの飲み会ぐらいでしか口にする機会がなく、飲むとしても果実酒やカシス系といった甘いものばかり。さらにビールやワインをまったくおいしいと思えないような子供舌に加え、スクリュードライバー1杯でリバースした苦い記憶を持つレベルの超絶下戸体質。そのためアルコールに関しては、興味関心よりも苦手意識の方が大きかったのです。

が、それは過去の話。下戸といえど宅飲み上等で、カクテル作りがマイブームとなった今は違います。
冷蔵庫にジンもレモンも玉子もあるし、グレナデンシロップもつい先日衝動買いしたばかり。ついでにスクリュー1杯でダウンしていた私自身のアルコール耐性も、スクリュー3杯までならリバースせず飲める程度には成長しました。
つまり今こそ、名前だけは知っていても一度も飲んだことのないあのドリンクの味を知る絶好の機会ってワケです。

正確には「ゲーム飯」というより「曲再現レシピ」。もっと言えば「レシピ通りに作るスタンダードカクテル」でしかないのですが、ゲームを通じて知ったということは、ある意味で「ゲーム飯」も同然です。
細かいことはどうだっていい! 私が「ゲーム飯」だと思ったなら、それはもう立派な「ゲーム飯」なんだよ!(暴論)

そんなわけで、懐かしのボカロ曲を口ずさみつつ調理開始。玉子を割り、黄身と白身を分け……たところで、小さな疑問が浮かんで手が止まりました。
卵白を使用するカクテルがあることは知っていても、実際に使うのは今回が初。なので扱い方がさっぱりわかりません。そのまま他の材料と一緒にシェーカーに入れていいのか、あるいは先に泡立てておいた方がいいのか、もしくはメレンゲ状にしたものを最後に乗せるのか……

……いえ、よくよく考えたら迷う必要なんてありませんでした。だってこれはスタンダードカクテルの「クローバー・クラブ」じゃなくて、ミクオリジナル曲『クローバー♣クラブ』の再現ドリンク。一般的なレシピよりも歌詞の方を優先して作るべき飲み物です。
なのでミクさんが「卵白はよく混ぜてね」と言うなら先に混ぜておくのが正しい手順ですし、「いつもと違う髪型に気付くこと」と言うならよく似合うと褒めるのがマナーですし、「幸福なのは義務なんです」と言うならその義務を全うする必要があります。

ハンドミキサーが見当たらなかったので手動で泡立てた卵白

ということで、ミクさんの指示に従って卵白を泡立てたら準備完了。余った卵黄は……まあ玉子焼きにでも入れるとしましょう。
ジン、レモンジュース、グレナデンシロップを3:1:1の割合で(プロテイン)シェーカーに注ぎ、そこにかき混ぜた卵白を加える。そして製氷機で作った普通に溶ける氷を入れて蓋をし、両手に想いを込めつつ……

shake shake 今夜は止まらない! だから今は oh 夢の中!

……とノリノリで『shake it!』したら、ストレーナー代わりの茶こしで氷を取り除きつつグラスに注いで完成。
クローバーだけどピンク色で、紳士クラブ発祥だけど女子力が高そうな飲み物ができました。

実飲

ショートカクテルは度数が高いものが多いので苦手意識があったのですが、これは一口飲んだ瞬間から気に入りました。
さわやかなジンの香りと、甘々なグレナデンシロップの味。そこにふわふわの卵白が加わることで、アルコールのキツさが和らいで、ものすごく飲みやすい甘口カクテルに仕上がっています。これでアルコール度数が約20%なんて信じられないぐらい飲みやすいし、おまけに見た目もかわいいのでテンションが上がります。

2杯目にはこれの卵白無しバージョンも作ってみたのですが、香りと味は同じでも、口当たりと飲みやすさは大違い。黄身と白身を分けるというひと手間があるだけでこうも劇的に変わるのかと、卵白のすごさにただただ感動しながらグラスを空にしました。

とはいえ、これはお酒で私は下戸体質。少量といえど立て続けに2杯も飲むと全身がグレナデンシロップ色になりますし、3D酔いの前兆に似たあの感覚がじんわりと忍び寄ってきて、ソラも世界もくるくるマワって見えてきます。
どうあがいても下戸なんだし、無理して度数の高いカクテルを作って飲むより、ノンアルコールのレパートリーを増やした方が賢明かもしれない。……なんて思いつつも、3杯目にジンリッキーを作って飲む週末の夜でした。

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