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約束されたメェ作『Goat Simulator 3』のモバイル版が素直に喜べない

私がそのニュースに気付いたのは2023年12月6日。月末月初特有の慌ただしさからようやく解放されたタイミングで、ぼんやりと「帰ったらアップデート2.1とMODの更新しなきゃなー」なんて考えつつ、スマホ片手に冷食だらけの弁当をつまんでいたときのことでした。

『Goat Simulator 3』モバイル版配信開始

『Goat Simulator 3』については説明するまでもないでしょう。ニュートンをも面食らわせるラグドール物理学を世界中の人々に知らしめた歴史的メェ作『Goat Simulator』の続編であり、休日は気心の知れた仲間たちと共にヒヅメサッカーを楽しむリア獣のための令和最新型次世代ヤギシミュレーションソフトです。

ただし、最先端のBAAAチャルテクノロジーと貴重なゴミデータをふんだんに盛り込んだこともあってか、全人類の内なるヤギに訴えかける究極の万人向けゲームであるにも関わらず、これまではゲーミングPCやPS5といったコアゲーマーしか所持していないようなハードでしか遊ぶことができませんでした。
ところが、悪魔の契約(EGS時限独占)が切れる少し前に、スマートフォン向けゲームアプリとしても配信が決定。これにより、ヤギに興味はあってもビデオゲームにはそこまで興味がないような人も、各々のスマートフォンから気軽にヤギに転生して、いつでもどこでも第三のヤギ生をエンジョイできるようになりました。

販売形態は買い切り。Pocket Editionのような基本無料版は無し。お値段はiOS版が1500円Android版が1820円(2023年12月時点での販売価格)と、有料でも数百円程度で収まることが多いスマートフォンアプリにしてはかなり割高な印象を受けます。

ピルガーがついに小さなスクリーンへと帰ってきた。これで、家族団らんのディナータイムにも、もっとゲームに夢中になれるぞ。やったね!

Goat Simulator 3 Mobileでは、PC版やコンソール版と同じオープンワールドを探索し、破壊することができるぞ。市民に頭突きしたり、無免許運転をしたり、ヨガ教室に参加したり!まるで現実と同じことができてしまう。

マルチプレイヤーモードでは友達を誘って、一緒に大混乱を引き起こしたり、7つのミニゲームをプレイして競い合うことだってできるんだ
友達がいない場合は、2台のデバイスでゲームをプレイして、友達がいるフリをしよう。大丈夫、誰にも言わないからさ。

巨大なサンドボックスの島、サン・アンゴラ島があなたの手のひらに!

主な特徴:
- ヤギ!長いヤギ、うさんくさいヤギ、帽子をかぶったヤギ。あらゆる需要に応えるヤギが勢ぞろい
- オープンワールドを探検し、大量のクエスト、チャレンジ、秘密を見つけよう
- マルチプレイヤーモードで友達と一緒に大混乱を巻き起こそう
- 7種類のミニゲームで友情を断ち切ろう
- さまざまな服でヤギをドレスアップして、真の力を解き放とう
- ニュートンをも面食らわせるラグドール物理学

「Goat Simulator 3」をApp Storeで

そんなことはさておき……ストアページに記載されたゲーム概要のなんと愛らしいことでしょう。偉大な劇作家が書き綴ったソネットのように優美で、下手に脚色せずありのままの姿を描いた絵画のように写実的で、時代を超えて愛される児童文学のようにキラキラとした輝きに満ちています。
特に家庭崩壊という深刻な社会問題を「やったね!」の一言で片付けるセンスはただものではありません。村上○樹より先にノーベル文学賞を受賞してもまったく不思議とは思わないほど素BAAAらしい説メェ文です。

おそらく世界中のiOSユーザーならびにAndroidユーザーは、この大いなるヤギの小さな帰還に驚愕し、興奮し、涙を流し、気絶ヤギのようにブッ倒れ、ヤギの鳴き声にも似た歓喜の声を上げつつ、スカ◯リムカートに乗ってずきゅんどきゅん走り出したことでしょう。まあ私はそんな奇行してないけど。

普段なら「ヤギ」という単語をメェにするだけでその場でギャロップするような自称『Goat Simulator』愛好家の私ですが、今回ばかりはそこまでテンションが上がりません。
どちらかというと同じく先日配信された『サイバーパンク2077』の大型アップデートの方に心惹かれたというのも理由のひとつですが、最大の理由は「据え置きゲームのスマートフォン向け移植であるから」という私自身のスマホゲー嫌い……というかバーチャルパッド嫌いにあります。

据置ゲームの携帯機移植版は、スペック上の都合からオリジナル版のすべてを再現しきれないケースが多く見られます。収録コンテンツが削減されたり、画質やフレームレートが低下したり、UIが最適化されていなかったりなどして、結果「無茶移植」や「劣化移植」と呼ばれてしまうことも少なくありません。
特にアクションゲームやシューティングゲームといった機敏な操作が求められるジャンルにおいて、劣悪な操作性と不安定な動作という欠点は致命的です。たとえそれが名作と呼ばれるような優れた作品であっても、快適に動かせないという問題があるだけで苛立ちばかりが加速し、肝心の内容を噛み締める前に「クソゲー」と吐き捨てて投げ出すプレイヤーが大多数かと思われます。

もちろん配信プラットフォームの拡大に伴うユーザーの増加は喜ばしいことだと思います。これまで所持ハードを理由に購入を見送っていたプレイヤーが手を伸ばしやすくなり、本作の魅力に触れる機会が与えられたわけですから、シリーズファンとしては嬉しいことこの上ありません。
なんですけど、初見プレイヤーが触れるそれがオリジナル版のすべてを堪能できないようなクソ操作のモバイル移植版だと思うと、喜ばしいことなのにどうも心から喜べないというか……ああもう、バーチャルパッドという人類史上最低のクソ操作はいかがでしたか系ブログ同様この世に存在してはならないクソ文化だから速やかに滅べばいいのに!!(身も蓋もない本音)

そんなわけで約束されたメェ作の配信プラットフォームが拡大されたにも関わらず、スマホゲーというだけで素直に喜べず、それよりもメトロの車窓から見るナイトシティの風景に想いを馳せる平日の昼下がりでした。

こんな記事に投げ銭するぐらいならレンガかフラフープを買った方が有意義だぞ。