「ハイキュー」に天才はいない
ー食え 食え 少しずつ でも確実に 強くなれ
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)8巻69話より
週刊少年ジャンプで連載中の漫画、「ハイキュー!!」
その名の通り高校男子バレーを題材にした作品で、
小さい身長ながらも類まれなるジャンプ力と周囲を圧倒する日向翔陽、
天才的な技術とストイックさを併せ持った影山飛雄、
この“因縁の二人”を中心に据えた大人気漫画です。
私はこのハイキューを既巻が10巻あたりのときに一気に読み、それからはコミックスで追いかけています。
そして今週、ついに最新43巻が発売になりました。
物語も佳境を迎えていて、これからどうなるんだ…と手に汗握って展開を待っている次第です。
この作品がクライマックスに差し掛かっているのとあわせて、最近は自粛期間の続いていて、家にいる時間も長くなってきたので、
これを機にハイキューを読みなおすことにしました。
その結果気づきも多く…思ったことを文章でまとめてみたいと思いたったのでした。
ハイキューの食事に関する描写はやっぱりすごい
さて、ここで何に焦点を置くか?というと、作品内の「食事」に関する描写です。
ハイキューを読みなおすと、印象的な食事に関するシーンが多かった。
この作品における「食事」描写に注目することで、もっとハイキューを理解できるのでは…と思ったのです。
※正直、最強に面白い作品なので、読んでいない人には読め!と言うしかありません。
コミックス派ですが、最新43巻までは読んでいるので、内容には少なからず触れることになると思いますのでご容赦ください。
アニメ一期の“神作画”でも話題になったあのシーン
まず、ハイキューの食事描写といえば…このシーンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
影山の先輩であり大きな敵である及川徹率いる青葉城西高校との試合に惜しくも敗れた後、
コーチの鳥養さんが部員を引き連れ、夕食を食べるシーンです。
まずは、ハイキューにおける食事へのスタンスについえ考えるために、この場面を見てみたいと思います。
「飯…スすか…?」といぶかしげな大地さんとスガさん
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)8巻69話より
部員たちは、試合に敗れた悔しさから、しぶしぶといった形でご飯を食べ始めますが、
一口、また一口と食べるうちに箸が進み、
同時に涙がこぼれはじめます。
そのときの鳥養コーチの言葉
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)8巻69話より
練習を経て疲れた時にはご飯を食べなくては強くはなれない。
強くなるためには、しっかりと栄養をとることが必要なのです。
ハイキューには印象的な食事に関する描写がたくさんありますが、
それはこの鳥養コーチという「大人」の存在によるものが大きいと思います。
(そういった意味で言うと、顧問の武田一鉄先生もそうですね)
これは鳥養コーチのほぼ初登場の場面です(このときはまだ烏野高校のコーチではなく、坂ノ下商店の店番として登場しています) 。
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)2巻16話より
お腹を空かせて中華まんを食べに来た烏野のメンバーを叱る場面。
このあと、高たんぱく&低脂肪の「ぐんぐんバー」なるものを3人に投げ渡していました。
適切な量の練習をし、身体に負荷をかけた後は、「ちゃんとした食事」をとる。そして筋肉をつけていく。つまり、強くなる。
そういったあたりまえのような、でも一番大切なことがハイキューの根底にはあります。この考えは鳥養コーチのにとっても確立された考えのようで、「オーバーワークをするな」「ちゃんとした飯を食え」という台詞は何度も登場します。
このことから、漫画というデフォルメが基本の文化では省かれてしまったり、描かれないことも多い「あたりまえのこと」が
ハイキューではとても大切にされているということを感じるのです。
おれは今何を食えばいい?
そんな指導のもと練習を積み重ねていくうちに、その「あたりまえのこと」の大切さを日向自身も感じるようになります。
そのことが表れたのが、次のシーンです。
「おれの筋肉は今まさに回復したがっている…!!」
「今 何を食えばいい?」
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)24巻213話より
県内選抜メンバーによる合宿に無茶を言って参加させてもらった日向。
しかし、日向はもともとの参加者ではないため食事や寝場所の用意はなく(鷲匠先生きびしい)
練習後、長い時間かけて家まで帰らなくてはなりません。
どうしてもお腹がすいてしまった日向は、いつもならば肉まんなどを食べてしまうところだが…
鳥養コーチに電話するのです。
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)2巻16話より
やはりここでも鳥養コーチが言うのは、「ちゃんとした食事」をとること
どんなに日向にバレーの資質があろうとも、無尽蔵のスタミナがあろうとも、
練習が終わったあとには、ご飯をたべ、栄養を取り、休息する。でなくては筋肉は育たない。
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)2巻16話より
日向もそのことに気づいています。
そして、鳥養コーチもこの表情。
ある意味シビアな「あたりまえ」
この「あたりまえ」の大切さは、ハイキューという作品で何度も訴えられます。筋肉やスタミナをつけるには、適度な負荷と食事と休息。
このことが徹底されていることは、ある意味作中のキャラクターたちにとって、シビアとも言える話だと思うのです。
例えば、烏野高校1の長身で、ブロックを武器とするメンバーである月島蛍や、音駒高校の"脳”、セッターの孤爪研磨。
冷静沈着で、頭脳派として試合のなかで常に思考を巡らせるキャラクターですね。
現代の若者らしく人見知りで控えめな2人ですが、
彼らはそのイメージ通り小食なようです。
↑主将たちにもっとご飯を食べるよう促されるふたり
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)11巻97話より
それゆえに、彼らは試合中などに先に体力が消耗してしまうことがあります。
他のチームメイトや試合相手に比べて、スタミナが不足しているように描かれているのです。
伊達工との練習試合
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)26巻217話
春高での公式戦。相手チームに頭脳派セッターである研磨を動かせ、疲れさせるという作戦をとられていしまいます。
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)30巻267話より
最初に引用したのは、東京での合同合宿の打ち上げであるBBQの一コマです。
言ってしまえば、日常回というか、緊迫した試合の間の箸休めのような回ですね。
主将たちが2人にご飯をもっと食べるように薦める…というのも、彼らのキャラクターを引き立たせるためのユーモア的な描写だと思います。
ですが、この描写(彼らは小食である)は確固たる事実として、その後の試合シーンでもスタミナ不足気味であるという設定へと引き継がれます。
「あたりまえ」のことが作中の中でときにはそれを恨めしいと思ってしまうほどに)徹底されているからこそ、私たちは信頼してハイキューを読むことができるのです。
ハイキューに天才はいない
こういったシビアさは、ハイキューに貫かれている「積み重ねた者こそ強い」という哲学の表れだと思います。
ハイキューの中には、抜群のセンスや優れた身体的資質(高い身長や柔軟性、バネなど)を持つキャラクターが登場します。けれども、彼らは決してその資質のみで強者たりえているのではありません。
私の思うハイキューの各話タイトルで、なかでも秀逸だと思うものに、コミックス6巻53話「及川徹は天才ではない」というものがあります。
周りから天才ともてはやされる青葉城西高校の及川ですが、中学時代には、後輩である影山が持つ資質を脅威に感じていました。
しかし、バレーボールは選手個々の力をチームワークで最大限に発揮することこそが重要だと気づき、それからはチームメイトの資質を最大限引き出させるような努力を積み重ねます。
その結果、青葉城西高校は、烏野高校との初の公式戦で勝利をおさめるのです。
このように、天才的なセンスを持つ影山は及川に敗北しますし、及川は自身のことを決して天才とは認めません。
ハイキューには、生まれ持った資質のみで勝利する人間はいない。つまり、天才はいないのです。
そして、その「積み重ね」のミクロな描写こそ、彼らの日々の食事なのだと思います。
次の公式戦で白鳥沢高校に勝利したあとの烏野
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」21巻189話より
ここまで読んでくださりありがとうございました。
②では、公式試合中の食事のとり方に注目していきたいと思います!(こんな感じ↓)
頑張って書きますのでよろしければ読んでいただけると!うれしい!
ジャンプコミックス「ハイキュー!!」(集英社)28巻243話より
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?