アーリーフェーズのスタートアップが MVV を作成した話

こんにちは、SecureNavi株式会社 代表取締役 CEO の井崎です。

SecureNavi では、約 1 年前に 1 人目の社員がジョインしてから、ここ 1 年間で、社員数が 10 人を超える組織となりました。現在も積極的な採用を行っており、組織は急拡大中です。そんな最中、問題となっていたのは、組織を 1 つにまとめる指針、いわゆる「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」が無かったことでした。このタイミングを機会に、SecureNavi では初めての「MVV」を作成しました。

この記事では、決定した MVV の紹介、MVV の決定の流れ、MVV の活用方法、反省点と振り返りなどをご紹介します。

決定した MVV

まずは、決定した MVV からご紹介させてください。

VISION 目指す世界

悲報をなくす

革新的な製品やサービスが次々と生まれ、世の中がますます便利になる一方で、その製品やサービスがきっかけで、悲報がもたらされることもあります。情報漏えいやサイバー攻撃は、その最たる例です。

世の中を便利にしたいという思いに反して、世の中の悲しみが増えてしまうことを未然に防ぎたい。私たちは、情報セキュリティ分野での事業を通じて、起こるべきではない悲報をなくし、誰もが悲しまない世の中をつくります。

VALUE 大切にする価値観

TRUST TEAM
チームを信頼する。また、信頼されるメンバーであり続ける


私たちは、1人で課題を解くのではなく、チームで課題を解きます。課題は難題だらけで、それを解くには多様な考えが必要です。自分の考えとは異なる意見やアイデアを尊重し、メンバーの立場や性格によらず、全てのメンバーが平等に発言できる場を作ります。
そして、各メンバーも、自身の役割にとらわれず主体的に業務に取り組むことで、他のチームメンバーから信頼を得る努力をします。

HIGH PERFORMANCE
自分のベストパフォーマンスを発揮し、それを更新し続ける


高いパフォーマンスを発揮し、成果を出し続けることに貪欲になります。
そのために、自身が求められている役割を理解し、常に周囲からの期待を超えられるよう努力します。生産性を向上させるため、業務内容はドキュメントに落とし込み、徹底した標準化・自動化を行います。業務を行うための環境整備には、惜しみない投資を行います。
また、家族や自分の心身の健康を大切にし、高いパフォーマンスが発揮できないと判断した日には、休める勇気と文化作りも重要です。

HUMAN CENTRIC
顧客の成功と事業の成長の源泉は「人」である


人の成長こそが、顧客の成功と事業の成長のための最も重要な要素であり、企業活動における最も効率の良い投資だと考えます。
成長には、自主性と経験が大切です。積極的な権限移譲と、情報の透明性の確保に取り組むことで、自主的な行動を促します。
また、失敗を許容する文化を醸成し、失敗経験から学びを身につけることを是とします。様々な意思決定のシーンにおいては、短期的な売上の向上よりも、長期的な人の成長にベットします。

各項目を紹介するのはまたの機会として、以下では、どのようにしてこの「ビジョン」と「バリュー」が作成されたのか、その背景を紹介します。

ちなみに、お気づきかと思いますが、今回「ミッション」は作成しませんでした。その理由についても、以下で説明します。

どのような流れで決定したのか

「文化の芽プロジェクト」が始動!

MVV を作成する半年ほど前から、近い将来に MVV を作る必要性が生じることは、十分に理解していました。また、MVV を作る方法として「数日の合宿で、一気に作り上げる」とう話をよく耳にしましたが、これも少し違和感があるなと考えていました。というのも、今後、何年何十年と続く会社の文化ですから、たった数日間の思考で全て決め切るのではなく、可能な限り長い期間を取り、その間で蓄積された情報をもとに決定するほうが適切だと考えていたからです。思考にも、日によって波があったり、テンションが違ったりしますからね。そこで始まったのが「文化の芽プロジェクト」でした。

弊社はフルリモートワークなので、基本的なコミュニケーションログは Slack に残っています。そこで、Slack で「文化にしたい」という emoji を作り、その emoji でリアクションを行うと、Notion にストックされる仕組みを作りました(余談ですが、私自身 Web エンジニアで、こういった仕組みを作るのが大好物なので、Make というサービスを使って1時間くらいでサクッと作りました)。そして、約 4 ヶ月もの間、各メンバーが「これは SecureNavi の文化にしたい」という投稿にリアクションを押し続けました。

ドキュメント化しました!系の投稿は、よく「文化にしたい」が押されていました
私も「文化にしたい」いただきました!


ストックされた情報は、毎週の全社ミーティングで振り返り、称賛し合う仕組みを作りました。

Slack の投稿を、自動的に Notion に溜めていきました

毎週の全社ミーティングでは、称賛と同時にタグ付けを行うことで、称賛される投稿には、どんな傾向があるかを確認しました。SecureNavi には、初期の頃から物腰柔らかくて優しいメンバーが集まっており、「プライベート大事にしよう」「優しいコミュニケーションしよう」といった、ハートフルなタグが目立ちました。

溜まった文化の芽のタグ その1
溜まった文化の芽のタグ その2

一回目の MVV ミーティング

文化の芽が 100 件近く溜まったころで、初めて社員全員がリモートで集まり、MVV 決定のための初回ミーティングを実施しました。初回ミーティングのゴールは、ミッションのコアになる概念を決めることでした。ワーディングまではゴールとせず、まずはざっくり「こういう言葉や考え方を、ミッションに含めたいよね」について共通認識を取ることを目指しました。

このミーティングの事前準備を行う上で、1人目社員の @taaakuuu07 に活躍いただき、アジェンダの準備から、ミッション決定のフレームワークまで、あらかじめ準備してくれました。感謝!!!その一部がこちらです。

この方程式をもとに、ミーティングでは、CEO である私 井崎が今までどんな人生を過ごしてきたのかを紹介し、井崎が人生をかけて実現したいこと、つまり「CEO のライフミッション」をスライドにまとめて発表しました。その後、メンバーとディスカッションをして、井崎の中に内在するメラメラとした思いを理解してもらいました。また、情報セキュリティ領域における社会課題を一通り説明し、全員で理解を深めました。

最後に、どんな言葉がミッションになりそうか、キーワードをブレスト形式で洗い出していきました。

ミッションのもととなった言葉の一部

この一回目のミーティングでは、思わぬ問題も見つかりました。それが「ミッション」と「ビジョン」の違い、全員で認識を合わせるの難しくない?問題でした。例えば、多くの企業では、ミッションが再上位概念で、その下にビジョンを位置づけていますが、そうではなく、ビジョンが最上位概念になっている例もありました。また、ミッションの定義、ビジョンの定義をそれぞれ調べてみると、それは説明するサイトに依って異なっていました。

ミーティングの議論の中でも、「それってビジョンじゃない?」「それはミッションなのでは?」といった、本質から離れた、的を得ない空中戦になりかけたこともありました。

そして、ミーティング終了後、改めて議論の内容をもとに、井崎が脳内を整理し、1 つのドキュメントに整理しました。ここでようやく「悲報をなくす」という言葉が誕生しました。全員の意見をどのように私が解釈したかについても、きっちりと説明するようにしました。

一回目のミーティングの取りまとめ資料の一部

二回目の MVV ミーティング

二回目のミーティングは、バリューの元となる言葉を集約することにゴールを設定しました。弊社はフルリモートですが、流石にこのミーティングは物理的に集まったほうが良いだろうと判断し、全員でオフィスに集合して議論しました(ちなみに、弊社では 3 ヶ月に 1 回、東京のオフィスで全社員が集まる「出社DAY」があります)。

前述した「文化の芽」があったため、SecureNavi が大切にしたい文化は共通認識が取れており、議論は非常にスムーズに進みました。4 人ずつのチームに分かれて、4 ヶ月分の文化の芽を材料に、どのようなバリューがいいのかをまとめました。その結果を井崎が持ち帰り、ワーディングを行うことにしました。

ミッションの作成を諦め… そして最終決定へ

ここからは Slack や Notion を活用し、非同期でディスカッションを進めました。

一回目のミーティングで議論になった、ミッションとビジョンの定義や関係性については、まだ弊社には早すぎると思い、ミッションの策定を捨てることにしました。

ミッションの廃止が提起されたドキュメント

上記以外にも細々した論点はありましたが、それらはすべて Notion 上に整理し、社内でコミュニケーションを取りながら(ときには全社ミーティングで口頭説明をしながら)解消していきました。そして、ワーディング→意見募集→ワーディング→意見募集 を何度か繰り返し、無事に SecureNavi のビジョンとバリューが完成しました。

細かいですが、策定において気をつけたこととしては、

  • できるだけ短くキャッチーな言葉にすること

  • ビジョンはできるだけ大きな絵を語ること。規模の小さいビションを策定することによるメリットはないと判断しました

  • バリューは増やしすぎないこと。5 つ or 3 つでに迷いましたが、多少強引でも覚えやすさを優先して、3 つに絞りました

などがあります。なお、この意思決定においては、ある社員が教えてくれた以下の記事を大変参考にしました。

ビジョンとバリューをどう活用しているか

入念な事前準備と、全員の協力があって、とてもよいビジョンとバリューができたと思いますので、あらためて再掲させてください!

SecureNavi の「ビジョン」と「バリュー」

文字が小さい場合は、こちらの会社ページからもご覧ください。

ちなみに、各バリューには、以下のような意味も込められています。

  • TRUST TEAM には、チームを信頼するだけではなく、信頼されるに足るメンバーになろうという意味を込めました

  • HIGHT PERFORMANCE には、いたずらに頑張りつつけるだけではなく、必要なときにはしっかり休もうという意味を込めました

  • HUMAN CENTRIC には、短期的な売上向上よりも、従業員の成長を重視するという、少し背伸びした表現を加えました

社内では、早速デザイナーが、Slack でバリュー emoji を作成してくれました!

バリューを Slack の emoji にした

また、結果論ですが、それぞれのバリューはキャッチーな言葉に省略できることがわかりました。それぞれ「とらちー」「はいぱふぉ」「ひゅーせん」です!可愛らしくて覚えやすいですね!

これまた Slack の emoji。仕事がはやい…

これは、有給休暇の共有に対して「HIGH PERFORMANCE」のリアクションが行われている様子です。休むときは休んで、働くときは HIGH PERFORMANCE で。こういった文化は SecureNavi っぽいです。

有給休暇をとると「いいね」がつくのも、いいね!

また、冒頭紹介した文化の芽のように、emoji でリアクションが行われると Notion に蓄積される仕組みができており、毎週の全社ミーティングで、バリューに沿った行動が称賛し合う仕組みができています。

今後は、1on1 のテーマとして、採用基準として、評価制度として、それぞれ活用を予定しています。

最後に、この一連の MVV 策定プロジェクトを通して、良かったことと、反省点をまとめておきます。皆様の会社の MVV 策定のヒントになれば幸いです!

良かったこと

  • 「文化の芽」の取り組みが事前にあったことにより、バリューのすり合わせが非常にスムーズに進んだ。また、過去の 4 ヶ月間の情報を元に決定したため、全員の納得感があった。

  • MVV を全部決めないといけないという思い込みを捨てて、会社の状況を踏まえて「ミッションは決めなくてもいいや」という意思決定ができた。結果として、メンバーが覚えないといけないワードの量が減った。

  • 議論の流れをすべて Notion にまとめ、リモートでの打ち合わせはすべて録画したため、途中から入社してくる方にとっても、なぜこのようなビジョン・バリューが策定されたのか、その背景が理解しやすくなった。結果、議論に参加していた初期メンバーと同じ考えや感情で、業務に向き合えるのではないかと考えています(この先への期待)。

反省点

  • 「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の定義がはっきりしないまま議論に突っ込んでしまったため、「ミッションとはなにか?」「これはビジョンでは?」といった、あまり本質的ではない議論に足を突っ込みかけてしまった。

  • 時間と予算がなく、社内でワーディングを行ったため、外部リソースを活用すれば、もう少しきれいな言葉ができたのかもしれない。しかし、現在の弊社のフェーズではこれが最適解だったと考えています。

おわりに

最後に、このビジョンとバリューを策定するにあたって、CEOである私 井崎が考えていたことについて、補足をして終わりたいと思います。

人生は有限で、その有限の時間の多くを費やす「会社」という存在は、その人の人生に大きな影響を及ぼします。自分が設立した会社に対し、お金では買えない有限な「時間」を割いていただいているチームのメンバーには、日々感謝の連続です。そのような思いから、私自身、この会社は、顧客を成功に導き、世の中をより良くするだけではなく、従業員の人生を成功に導く責務を追っているとも考えています。

初期の採用では、そんな私の思いに共感したメンバーが集まってくれました。そして、そんなメンバー全員で決めたバリューが、人やチーム(人の集まり)にフォーカスした内容になるのは自然な帰着だったと思います。スタートアップや SaaS 企業のバリューには、「スピード」「ユーザー」「カスタマー」「テクノロジー」などの単語がしばしば登場しますが、それよりも「人」だよねと、3つ全部が「人」にフォーカスしてしまったのは、なんとも SecureNavi らしいなと思います。

ようやくビジョン(目指す世界)と、バリュー(大切にする価値観)の言語化ができて、ここから SecureNavi はグロースフェーズに突入していきます。この記事をみて「ちょっと SecureNavi という会社に興味が出てきたぞ」という方は、ぜひ以下からご連絡いただけると嬉しいです!

採用情報

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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