見出し画像

体験の回避という罠

「体験の回避」とは、思考や感情を抑制しようとする行動で、たとえば、痛や、落ち込み、不安などの嫌なものを排除しようとする行動や、意図的にないことにしてしまうような態度のことです。

具体的な例で言うと、
 ・嫌な事を忘れるために、お酒を飲む
 ・恥ずかしい思いをしたくないので、会議で黙っている
 ・やらなければいけない事があるにも関わらず、テレビを観る
などで、我々は体験の回避を日常的に行っていることがわかります。
このような体験の回避の行き過ぎが、精神病理と関連していることがわかっています。

「体験の回避」の反対が「アクセプタンス」です。
アクセプタンスとは、やっかいな思考や感情、感覚を避けるのではなく、オープンに受け入いれる、観察するというような概念です。

マインドフルネスは「今、ここ」に注意を向けている状態を指します。注意を向ける対象は外の世界のみでなく、我々の内側の世界(思考、感情、感覚、記憶など)も対象となります。
心の状態にマインドフルネスに関わるということがアクセプタンスと言ってもよいでしょう。
このアクセプタンスを取り入れることで、精神疾患だけでなく、夫婦関係のような人間関係にも効果があることが最近の研究でわかっています。

例えば、Barlow等は、広場恐怖症のクライエントに感情的、身体的な暴露を加えることにより治療効果が改善したことを示しています(Barlow & Craske, 1989; Barlowら, 1989)。

Marlattは、薬物乱用者の衝動の受容を促すために東洋心理学から導き出された技法を取り入れ、再発防止に効果を上げました(Marlatt, 1994)。

Linehanの弁証法的行動療法は境界性人格障害を対象とした治療法であり,その基本的考え方は,情動調節のスキルを身に付けるトレーニングが必要であるというもので、スキルトレーニングの中核としてマインドフルネス・スキルが位置づけられています(Linehan,M. M 1993a)。

瞑想やヨーガを科学的研究に耐えるようにしたのがKabat-Zinn,J. (1990) です。マインマインドフルネスを「意図的に,今この瞬間に,価値判断をすることなく注意をむけること」と定義し、 マインドフルネスのトレーニング(瞑想)が慢性疼痛の緩和に効果があることを示しました(Kabat-Zinn, 1991)。 

感情焦点化療法(Greenberg & Johnson, 1988)は、感情のアクセプタンスを高めることでカップルの関係性に良い結果を示しています。

アクセプタンスアンドコミットメントセラピー(Hayes, 1987; Hayes, Stro sahl, & Wilson, in press; Hayes & Wilson, 1994)は、うつ病(Zettle, 1984; Zettle & Ra ines, 1989)やその他の障害の治療に効果があることを示しています。

嫌な感情をコントロールするのではなく、オープンに受け入れること、つまりうまく関わっていくことが、心の健康に大きく影響するのは間違いないようですね。

アクセプタンスのエクササイズについては、また記事にしていきます。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?