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小さな親切でヘトヘトになったこと

ー バルセロナ きらきら太陽の真下のカフェで ー

◇このエッセイは二十年ほど前のバルセロナのお話しです◇

美術学校の新学期が始まろうとしていた頃、
友だちと一緒に
画材を買いにで出かけたことがあった。

ふとしたことから
友だちが版画を習いたいと言い出し、
それならちょうど画材屋さんへ行くから
きっと何か情報がつかめるだろうと
軽い気持ちで『版画教室探し』ははじまったのだった。

まず最初にゴシック地区の坂の途中にある
画材屋さんへ行き、たずねてみた。
「版画を教えてくれるところを知ってますか?」
「版画ねぇ、ここでは教えてないけれど、、、でも、この道をまっすぐ行って左に曲がったところの場所で教えていると思うよ」
と、丁寧に場所を教えてくれた。
「ありがとうございます」と笑顔で店を後にし、
その場所へ行ってみた。
「あの、版画を教えてくれると聞いたのですが、、、」
「うちではやってないんだよ。でも、この道を出て右へ曲がってすぐのところにアトリエがあるから、そこで版画を教えているはずだよ」
と、言うので「ありがとうございました」とお礼を言い
そして、そのアトリエへ行ったのだった。
「あの、ここで版画を教えてくれると聞いたのですが、、、」
「うちではやってないけどね。でもこの道を出てすぐ右へ曲がるとタバコ屋があるから、そこの向かいの美術書専門店の本屋さんで教えてるみたいだよ」
とのこと。
「あぁ、そうですか、、、ありがとうございました」
歩き疲れてもう笑顔もなく店を後にした。

そういえば以前、バルセロナに住む
スイス人の友だちから聞いたことがあったが、
スペイン人の「でも(スペイン語ではperoぺろ)」には気をつけた方が良いと。
私たちはここでピンときた。
おそらく、『でも』の後に続く言葉は、
なんとなくこうではないのかなぁと
その人が個人的に勝手に推測して語っているだけなのだろうと。

とにかく私たちは何ヶ所もの
誰かが想像するだけの版画教室の場所を
探し歩いて疲れてしまい、
本当の版画教室にたどり着けないいらだちで
ぶつぶつと文句を言いながら歩いていた。
もういい加減にこの辺で『版画教室』探しをやめないと
バルセロナ中を一回りさせられるような気がしてきた。
とにかく、疲れた足を休めるために
カフェに入って、
友だちと今日一日の『版画教室』探しについて反省した。

私たちは純粋すぎたのだろうか?
すぐに人の言うことを信じてしまった。
友だちが言うには、
ここの人たちは「知らない」と言うことが
恥ずかしくて言えず、
でも、、、」を使って
自分の想像で親切に教えてくれるのだと思うと。
たった一言「知らない」と言ってくれれば、
それで私たちはなんとか次の方法を考えるのに
次から次へと想像の場所を教えてくれるので
まんまと『でも』の魔術にハマってしまった。

もし、バルセロナへ旅行に来て
道に迷った時に、
案内人の言葉の中に
でも(スペイン語ではperoぺろ)」を聞いたなら
それは充分気をつけた方がいい。
そう思う。

ここからは二十数年前からヒューッと時間をもどし、現在のことをかきます。

そうそう、こんなことがあったあった!
もう、10年以上住んでいると
こちらの性質に慣れてしまって
全く気にならなくなってきている
自分が怖くなっている。

よく朝の市場とか
威勢のいいお店の店主のところで買うと
挨拶でこんなことを言われる。
誰にでも言っているのだ。
「Hola guapísima!」
日本語に直訳すると「こんにちは、すごい美人さん」
「Hola reina!」
日本語に直訳すると「こんにちは、女王様」
と、まぁこんな意味になるけれど
はじめは、間に受けて
くすぐったくてしょうがなかったのだ。
けれど、長く暮らしていると
これは直訳してはいけない言葉だとわかる。
「Hola guapísima!」も
「Hola reina!」も
「あら、元気?」
と言う、ただの誰にでも使うあいさつ言葉なのだ。
とはいえ、未だに自分の口からは
くすぐったくて言えない。
言ったことがない。
きっと、これを口にした時
自分でなくなってしまう気がするのだ。
さっき、Google翻訳で「Hola reina!」を
日本語にしてもらったら
やっぱり「こんにちは、女王様」だった。
翻訳機能がこのニュアンスをわかるようになるには
あとどのくらいかかるのだろう。
とにかく、今の私にとって
翻訳機は生活に欠かせないものとなっている。
がんばれ!翻訳マシン!!!

いろんなことがありましたが、
バルセロナが大好きです。
バルセロナのガイドブック
『心おどるバルセロナへ』
観光地はもちろん、食べ物のことや
レストラン、ショッピングなど
情報が満載です。
手に取って見て頂けたら嬉しいです。

どうぞよろしくね

それでは、良い週末をお過ごしくださいませ。
ボン・カップダセマナ!



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