海雀撃鳥

文を書くのが好きです

海雀撃鳥

文を書くのが好きです

最近の記事

  • 固定された記事

ジョスト・フロントの蠢動

 地下階層幽霊都市、通称ジョスト・フロント(GeostFront)。  最低標高マイナス5キロメートル、旧人類文明の夢の跡。 「ツヅリ、今は何階層だ」 「地下5階、ちょうど半分。潮時じゃない?」 「まだだ」  小柄な機械鎧を着た男女が、地下廃墟空間の蒸し暑い闇の中を脚部車輪で駆けていた。前で槍を持つ男がシオヤ、後ろの女がツヅリ。 「無理は禁物。もう一回スキャンして、それで駄目なら帰ろ」 「頼む。冬を越すには、獲物が要る」  ツヅリが停止し、機体背部の音響センサーを展開

    • バックスタブ・ショットガン

       巨大都市国家クイントピア。南区。夜の路地裏。  路地の入口にあった魔王殺しの勇者像はひどく苔むしていた。銃と魔導車、文明の発展の中で忘れ去られたレガシーだ。 「あんたのせいで冒険者ギルドは大いに迷惑してる」 「東区から俺目当ての物騒な奴らが流れてくるから?」 「他に何があるっての?」  鋼鉄ステッキを手にした女冒険者が、俺を横目に睨んだ。  クイントピアは東西南北中央の5区画からなる。  今いるのは南区で、つい最近までいたのは東区だ。南区は冒険者ギルド、東区はギャング

      • 渾然誘拐狂騒曲

         モーニングコーヒーを飲みつつキューバ葉巻を燻らせていると、事務所に依頼人がやってきた。  黒いキートンのスーツを着た若い男。名刺には大層な肩書き。 「殺しの依頼を」 「事情を聞きましょう」 「ゴロツキが10人ばかし、娘を誘拐した」 「そいつらを殺せと?」 「いや、殺してほしいのは娘の方だ。……私には婚約者がいてね。お互いにこれが初婚となる」  私は顎髭を撫でて溜息をつき、そばの壁掛け棚に触れた。  棚の下半分が展開し、拳銃とナイフを納めた隠し収納が現れる。 「つまり、

      • 固定された記事

      ジョスト・フロントの蠢動