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海辺の立地の分類と特徴

 先にも書いたように海辺暮らしに何を求めるかによって、適した土地が異なります。一口に海辺といってもいろいろな土地がありますから…

 というわけで、いろいろな土地を分類してみて、選ぶ際の参考になればいいなと思います。

 この分類を作る際に参考にさせていただいていたのが『いつかは海辺の家で暮らす』という本です。

 著者である加藤さん・植村さんは、海辺の家のロケーションを次のとおり、A-1・A-2・B-1・B-2の4パターンに分けています。
参照「いつかは海辺の家で暮らす」(加藤 賢一・植村 誠 著)

Aは海岸線に建つ場合で、Bは海岸線ではないが海まで徒歩圏内と大きく分かれます。

A-1は平地にあって目の前が海の家
A-2は崖っぷちなどの高台にある家
B-1海辺から内陸に少し入った家
B-2海辺から内陸に少し入った高台の家

 これは画期的で合理的な分類ですね。自分が住みたい土地のイメージを明確にするのと、実際物件を探す際に、不動産屋さんに言葉にして伝えやすいというメリットがあります。

 で、ぼくは自分の好みの立地を考えていくうちに、もう少し他の要素があるんじゃないかと思いました。

 加藤さん、植村さんのアイデアをパクったとか剽窃したとか、そういうことではありません。

 アイデアを発展させた!という感じで受けとっていただきたいと、かように考えるわけであります。

 あるいはお二人にインスパイアされた!と意味なくカタカナなど使ってオシャレなイメージにしちゃいましょう。

 ぼくが考えた海辺の立地の要素は次のとおりです。

a:海岸からの距離

b:高さ(標高)

c:陸の地形(平野か山が迫っているか)

d:海の地形(砂浜か磯かなど)

e:土地の用途(宅地か山林か農地かなど)

f:町からの距離(市街地か田舎か)

g:仕事をどうするか

h:その他

 これらの要素があるとぼくの住みたい立地がある程度表現できるのです。  そしてaからfそれぞれにさらに要素があります。それを1から順に番号を振ってみます。まとめると下の表1のようになります。

表1 海辺の立地の分類

 ちなみにぼくの好みの立地を表現してみると…
a1:b2:c2:d2:e2:f2:g1
ということになります。

 ぼくは海に近くて、標高が20m~30mくらいの斜面か丘で、山地かリアス式の土地で(平野はあまり好きではありません)、小さな砂浜と磯があって(そういう砂浜はたいてい両端に磯や岬があるので)で、山も近くて、あまり建て込んでいない田舎が好きです。

 その他の好みとして、海から家までの間に道路が通っていないところが好きです。湘南の134号線のような大きな道が通っているような土地は好きではありません。海と隔てられている感じがしますし、海に行くのにいちいち信号とか横断歩道とか面倒くさいじゃん。

 また、家から海まで階段がない場所が好きです。スロープになっていると、海遊び道具をカートに載せて運べるからです。

 それから(まだあるんですよ)家が道路のどん詰まりになっているところが好きです。なぜならその道を通る人が必ず自分の家に用があるからで、通過するためだけの人が通りません。そういう土地ってすごく安心感があるし、プライバシーが保てるんですよね。

 さて、それでは各要素の長所・短所について、ぼくの考えをまとめます。みなさんが土地を選ぶ際のご参考になれば、ぼくとしてはとても嬉しいです。

a:海岸からの距離

 この項目は海好きな人でも、ウォータースポーツをやる人か、海を眺めるのが好きな人かによって好みが分かれます。

 ウォータースポーツが好きな人なら、海に近い方がいいでしょう。ちなみにぼくの経験では、徒歩5分以内でないと、サーフボードやシーカヤックなどの器材を運ぶのが億劫になります。ぼくの周囲の人を見ていると、海から10分~15分以上離れていると、引っ越して何年かは海に通うんですが、その後は面倒くさくなって、ウォータースポーツからも海からも遠ざかる人が多いようです。

 釣りなどの道具がそれほど大がかりでない趣味でしたら自転車やバイクが使えますので、海から多少離れていても大丈夫でしょう。

 海から近いと塩害、砂の害、津波など心配なことも増えます。ぼくの知り合いで海岸べりの防波堤のギリギリのところに家を建てた人がいますが、ちょっと海が荒れると家全体が潮をかぶってしまうそうです。この人なんかは海辺に住んでいるというより、もはや海に住んでいるという感じです。

 一方、海からあまり離れてしまうと、それってもう海辺じゃないじゃんということになり、何のために海辺に移住したのかわからなくなります。なので離れるといっても徒歩で15分以内、チャリで5分以内じゃないの?というのが、ぼく的な目安です。

海に近い立地

b:高さ(標高)

 これはイメージしやすい項目ではないでしょうか?

 海辺の高台に住むと眺めがいいもんねー、てなことです。

 ただ注意が必要なのは、ウォータースポーツをする人で大きな道具を運ばなければならないような場合、たとえばシーカヤックとかウインドサーフィンとかセイリングとかですけど、そういう場合はあまり急で標高の高いところに住むと、海に行くのが億劫になります。いえいえ、海に行く時は下りだからまだいいんですが、海で遊んで家に戻るときに坂道を登らななくてはならず、立地によってはたいへんなことになります。

 釣りなどの道具立てがそれほど大きくないウォータースポーツなら、自転車やバイクで海へ行くということもありですね。その場合、海辺に自転車やバイクを停める場所があるかがポイントになってきます。

 熱海などはずーっと上の方まで別荘地が続いていますが、あまり上の方なんか、車じゃないと行き帰りできない感じです。

 ぼくが海辺で土地を探すとしたら、aとbのバランスに一番こだわると思います。

 ぼく的にはウォータースポーツをしますので、海辺に近い方がいいなあと…

 一方、家にいるときも海を眺めたいので、ある程度高台に住みたいのです。なので、ウォータースポーツの器材を運ぶのに苦にならない程度の高台(標高20mとか30mで緩やかな坂道…って好みがいちいちうるさいでしょう)で、海まで徒歩3分以内という立地が理想です。

海から少し高台の立地

c:陸の地形(平野か山が迫っているか)

 地形ってけっこう大事です。ぼくは結構地形が好きです。伊豆で柱状節理を見たりするとワクワクしてきます。

 茅ヶ崎とか九十九里みたいな土地って、海からほとんど標高が上がらず、平野がズーッと内陸まで続いています。そういう土地が好きな人もいます。

 平野のいい点は、家が建てやすく、雰囲気が開放的で、移動が自転車とか徒歩でラクラク・ランランというところ。悪い点は津波が来たとき、逃げる場所がないということです。あと、たいていそういうところって家が建てやすいので、建て込んでいるんですよねー。それに竜巻が起きやすい場所ってたいてい平野です。

 ぼくは海が好きですが、山や森も好きで、見た目に変化のある地形が好きです。そういう点で平野はいまいち好きではありません。

 一方、熱海とか熱川とかって山が海に迫っている地形で、平野がほとんどありません。ぼくはこういう土地の方が好きです。

 山が迫っている土地のいい点は、眺めの良さが期待できるということ、森になっていることも多いので緑が豊かで鳥なども多く、田舎暮らしをしている感が強いところでしょうか。悪い点は坂道が多いので移動がたいへん、平地が少なく住む場所が少ない、崖崩れがあるかもしれない、地形によっては風が強く、雨が多いかもしれないということです。

 そしてリアス式の海岸というのは、志摩とか有名ですね。油壺なんかは地形的にはリアス式海岸ではないかもしれませんけど、そういう雰囲気を醸し出していますね。入り江がたくさんあって、丘から海までドロップオフ的にストンと下がっている立地です。陸地は山というより丘というのが相応しい高さだといえます。

 リアス式海岸のいい点は入江がたくさんあり、水深も深くなっているので、海が穏やかなことが多く、天然の良港になり得ること、変化に富んだ地形が楽しめることです。悪い点は平地が少なく住む場所が少ないこと、坂が急なことでしょう。

 また、島もこの項目に含めてもいいかもしれません。ぼくも島好きですが、島は島ならではのよさがあります。ノンビリしていて、島の人同士の繋がりが強いところなどでしょう。

 一方、陸続きではないので、交通の不便さはあります。また、通販を注文したときに、送料が高いとか、物を運ぶのに船を使うので、物価が高いとか、海が荒れると船が来ないので、生活物資が乏しくなるなどというデメリットもあります。最近は少なくなりましたが、飲み水が貴重な島もあります。

山が迫っている立地

d:海の地形(港か砂浜か磯かなど)

 サーフィンをする人は海が砂浜になっている方がいいですよね。一方スキューバーダイビングやスノーケリングをする人は、磯や珊瑚礁になっている方がいいでしょう。また釣りやボートやセイリングをする人は港があった方がいいかもしれません。これらの複数の要素が近接している立地もありそうです。

 珊瑚礁なんて憧れますが、沖縄とか小笠原とか海外が選択肢に入ってきて、ぼくはちょっとそこまで遠くに移住するのは勇気がいるなあ…という感じです。

 ちなみにぼくはそんなに長くない砂浜が好きです。そういう砂浜はたいてい両端が磯か岬になっているので、砂浜と磯両方を備えていて、ぼくのようにサーフィンもするしダイビングもするという人にはピッタリの地形です。

磯と砂浜が両方近い立地

e:土地の用途(宅地か山林か農地かなど)

 いわゆる不動産関係の人が地目と呼ぶ項目です。不動産を買う場合、気になる項目ですが、ここではその土地周辺の雰囲気も指します。地目が宅地ならばだいたい一帯が住宅地で、家が建て込んでいたりします。上下水・電気などのライフラインはキチンと整備されていたりします。暮らしやすいですよね。

 山林や農地だと、周囲に家のない土地かもしれません。また、場所によっては一から水道と電気を引かないといけないかもしれません。

 家を建てるときも宅地なら問題なさそうですが、別に山林でもその分安くていいという方はそれでもいいでしょう。一方、農地だと家を建てる際に制限がありますから、そこは要チェックでしょう。

山林の立地


f:町からの距離(市街地か田舎か)

 田舎暮らしをしたい方は、あまり建て込んだ市街地を好まないかもしれません。一方、生活の利便性を考えると、コンビニ、スーパー、郵便局、病院や学校などが近い方が便利です。自分の好みをはっきりさせてどちらかに振り切るか、あるいはバランスをとるか、自分の考えを整理した方がいいのではないでしょうか?

 ぼくは今近くのコンビニまで車で10分、スーパーまで15分程度のところに住んでいますが、別に不便ということはありません。好みとしてはもう少し不便な田舎っぽいところでもいいかなーと思っています。スーパーまで車で20~30分くらいならぜんぜん許容できます。でも、そんなことを考えているぼくも、もう少し歳をとってくると、ちょっと辛くなるかもしれません。

 今は、宅急便や郵便の配達がしてもらえるところなら、かなりの生活必需品がネットで注文できるので、田舎暮らしが好きな方は、思い切って田舎に住むという選択もありですね。

市街地の立地

g:仕事をどうするか

 日々の生活費を稼がなければならない人の場合、仕事をどうするかという問題があります。

 ぼくの場合は、東京を仕事場として、そこまで通勤するという選択をしました。でも、一般的に移住というと移り住んだ先で仕事を探すというパターンの方が多いかもしれません。

 自営で農業をやるとか、手に職があって、何かを作れる方なら、それを売って暮らすというのもいいかもしれません。今はネットさえあれば、田舎にいても、全国・世界中に何かを販売することができるので、そうした方法で生計を立てていくのもいいでしょう。一方で会社に勤めるような仕事を探すとなると、それなりに産業がある土地を候補にすべきでしょう。

 よく沖縄に移住した人の話が例に挙げられますが、沖縄は賃金水準の割に物価が高いので、昼の仕事と夜の仕事の2つ職を持っていらっしゃる方が多いという話しも聞いたことがあります。

 ぼくは沖縄も好きですし、離島も好きですし、田舎暮らしも好きなんですが、生計を立てるというところがネックで、すごく田舎の田舎暮らしに踏み切れません。

 

h:その他

 これについては、先ほど書きましたが、海から家までの間に道路が通っていないところ、とか、家から海まで階段がなくてスロープになっている、とか、家が道路(できれば私道)のどん詰まりになっているところ、といった好みがあります。

 おそらくこれは人それぞれいろいろあるんだと思います。

 四角い土地がいいとか、南向きじゃなきゃだめとか…

 さてさていろいろ長く書いてしまいました。

 これらの分類は、細かくて面倒くさそうですが、自分の理想の海辺の立地を明確にできるというメリットがあります。明確にできるということは言語化しやすいということで、不動産屋さんに自分の探している物件を明確に伝えることができるということになります。

 もしあなたが海辺への移住を考えていらっしゃるなら、そして自分の理想の立地がイマイチはっきりしていないなら、上の分類を参考にご自身の希望を明確にしてはどうでしょうか?

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