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姉妹作品『Sea of Time ’98』が生まれた地、直島でのタイム設定ワークショップレポート

「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」というコンセプトに基づき、デジタルカウンターを使った作品で知られる現代美術家・宮島達男が、東日本大震災の犠牲者の鎮魂と震災の記憶の継承を願い、東北に生きる人々、そして東北に想いを寄せる人々と共につくりあげる「時の海 - 東北」プロジェクト
「9〜1」とカウントする3,000個のLEDガジェットが巨大なプールに設置される想定の作品は、3,000人の人々が関わり、LEDの数字のカウントするスピードを参加者それぞれが希望する時間に設定できるというもので、各地でワークショップを重ねながら参加者と出会い、2027年の作品完成を目標に活動を展開しています。
現在、参加者は1,373人となりました(2022年8月1日時点)。

様々な地域を実際に訪れ、それぞれの土地でご参加いただく方々と直接対話を重ねながら行う「タイム設定」ワークショップ。
本記事では、今年7月30日、31日に直島で開催したワークショップの様子をレポートします。
(執筆・編集:嘉原妙|「時の海 - 東北」プロジェクトディレクター)
(撮影:宮脇慎太郎)

■直島で「タイム設定」ワークショップを開催した理由

瀬戸内海に位置する直島には、「時の海 - 東北」の姉妹作品『Sea of Time ’98』があります。『Sea of Time ’98』も「時の海 - 東北」と同様に、タイム設定ワークショップを開催し、住民の方々が制作に参加して生まれた作品です。
1998年当時、直島に住む5歳から95歳までの島民125名が参加し、その後、20周年を迎えた2018年には、「タイムセッティング2018〜継承〜」が開催されました。1998年の参加者125名全員の所在を調べ、ご本人や故人となられた方の場合には血縁者の方々に集まっていただき、再度、タイム設定を行なったそうです。詳しくは、以下のウェブサイトやベネッセアートサイト直島広報誌 2019年7月号 P2-15をご覧ください。

人の記憶と想いを継承していくこと
作品は完成して終わりではありません。参加者や作品を見に訪れてくれる人、そうしたさまざまな人の想いが重なり合って作品が育まれていくのだと思います。それを体現されている場が、直島にはありました。
直島でのワークショップを通して、「時の海 - 東北」も20年、50年、100年と人々に想いが継承され、大切な作品だと、ここは大事な場所なのだと思っていただけるような在り方を目指していきたいという思いを強くしました。

■久しぶりの対面でのワークショップ

ここからは、直島でのワークショップの様子をフォトレポートとしてお届けします。
一昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響を受け、対面でのワークショップは中止が続いていたため、約2年ぶりの現地開催でした。そのため、準備や進行の確認も入念に行いました。

ワークショップ会場となった「本村ラウンジ&アーカイブ」にて、
ベネッセアートサイト直島スタッフのみなさんと当日の流れや準備物の確認。
受付の様子。開始時間が近づき、続々と参加者がお越しになられました。
こどもたち対象のワークショップでは、直島中学校の学生たちがたくさん参加してくれました。

■いよいよワークショップスタート

気がつけば会場には、たくさんのこどもたち!親子参加も嬉しいです。
宮島達男が、『Sea of Time ’98』について、当時の制作の様子などについて解説。
「時の海 - 東北」の構想スケッチをお見せしながら、
プロジェクトの経緯やアーティストの想いを語ります。
実際に動くLEDカウンターガジェットをお見せしながら、タイム設定のイメージを共有します。
参加者のみなさん、真剣な眼差しで宮島達男のお話に耳を傾けてくださいました。

■ワークショップで大切にしていることは、一人ひとりの想いを傾聴し受け取っていくこと

ご家族で参加した方と宮島の対話の様子。
ワークショップを通して、参加者同士でそれぞれの経験や知らなかった想いに触れることも。
東日本大震災を知らない世代の小さなお子さまとの対話も大切な時間です。
何秒にしよう…?うーん…と真剣に想いを巡らせてくださる一人ひとりの表情が忘れられません。
「どう?書けた?」「何秒にしたの?」などなど
会場のあちらこちらで、参加者同士の対話も生まれていました。

■最後に、『Sea of Time ’98』を参加者と一緒に鑑賞

角屋『Sea of Time ’98』の作品の前で、宮島自身が制作背景などを解説しました。
角屋の会場でも、参加者が宮島にお声かけくださり楽しい時間を過ごすことができました。

■これからも各地でワークショップに取り組みます

直島で参加者のみなさんとお話しするなかで、「出身が東北なんです」「家族や親戚が東北で暮らしています」「3.11のとき、東北にいました」など、東日本大震災の経験や東北に縁のある方々との出会いがありました。
一人ひとりの東北への想い、命への想いに耳を傾けながら、震災から11年という月日の流れやこれからの未来について想いを馳せる。そうした時間と場を参加者のみなさんと共有しながら積み重ねていくことが、「時の海 - 東北」を育てていく一歩なのだと実感しています。
「時の海-東北」プロジェクトでは、震災の記憶と経験と思いを紡いでいく場を育んでいけるよう、これからも全国各地でワークショップに取り組んでいきます。

【第2弾「タイム設定ワークショップ in 原美術館ARC」開催!】

ワークショップと作品のデモンストレーション展示を同時開催!
次回のワークショップの開催が決定しました!
第2弾ワークショップ開催地は、原美術館(東京・品川)で常設展示していた宮島作品『時の連鎖』を移設し、現在も継続して展示を行なっている「原美術館ARC」です。
さらに今回は、現在までに制作されたLEDの一部を用いた「時の海 – 東北」のデモンストレーション展示(会期:2022年9月10日(土)〜2022年11月9日(水))も同時開催します。
みなさまのご参加、ご来場をお待ちしています!

※タイム設定は、お一人様につき 1 回のみの参加です。過去、本プロジェクトのタイム設定を行われた方はご参加いただけません。

《関連イベント》
原美術館ARC主催『美術を学ぶ学生のためのバスツアー』(新宿駅バス発着)参加者募集中!

2022年9月23日(金・祝)に、美術を学ぶ学生を対象のバスツアーを開催します。詳細は、こちら

《関連リンク》

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