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web広告の内製化にはどのような体制と考え方が必要なのか:広告効果を改善するための具体的なソリューション

事業会社のマーケティングにおいて、web広告の運用を外注するか、内製化するかというのは常に存在する課題の一つです。ここでは、web広告運用を内製化したいと考えた場合に、必要となる職種や役割を考えつつ、実際の運用段階における効果改善の具体的手法について書きます。


広告運用を内製化する場合に必要となる役割

web広告運用をインハウスで行う場合、どのような役割・職種のメンバーを揃えれば良いのでしょうか。理想としては、以下の4職種の役割がいれば円滑に運用が進むことが多いです。必要となる職種とはそれぞれ「責任者」「コンサルタント」「運用者」「デザイナー」の4職種です。これらはあくまで役割であり、必ずしも4名が必要になるわけではありません。責任者がコンサルタントや運用者を兼ねるケースも多く、ベンチャー企業などではマーケティング責任者1名がすべての役割をこなすこともあります。それぞれ必要な役割を以下に解説していきます。

責任者:web広告全般の責任を持つ。マーケティング部やブランディング部などの責任者を兼ねることも多い。web広告の管理監督だけでなく、他部署との折衝も重要なミッションとなる。

コンサルタント:web広告及び数値のスペシャリスト。出稿判断や媒体選定、効果測定から情報収集に及ぶまでweb広告の専門家として管理・アドバイスを行う。責任者が兼任するか、または外部のコンサルタントがこの役割を担うことも多い。

運用者:web広告の実作業を担当する。自社で行う場合、管理画面での入稿やレポーティング(数値の抽出)なども内製の人員で行う必要があるが、その実際の作業を担当する。web広告の規模が小さい場合は責任者が兼ねることも多いが、規模が大きくなると責任者だけではリソースが足りず、専任の運用者を採用する必要が出てくる。

デザイナー:クリエイティブ(制作物)の責任者であり実制作を担う。多くの場合、責任者と連携し、企画と制作を並走する。web広告の重要性が高い部署では専任のデザイナーを雇う場合もあるが、他部署のデザイナーが兼任して制作を行う場合もある。または、外注先の制作会社の監督を行う。

以上が、web広告を内製化するにあたって必要となる4職種です。会社の規模にもよりますが、これからweb広告内製化をはじめて行いたいという場合は小さく始めることも可能です。責任者がすべての役割を兼任しつつ、デザインやコンサル・運用作業は一部から外注していくという動きも可能だからですね。すべての役割を自社で行う必要もありませんが、ある程度の規模の会社になれば、必要な役割を自社で行ってしまったほうがコストパフォーマンスが良くなります。特に、責任者とデザイナーの役割はプロダクト理解の重要性が高いため、自社で優秀な人材を育成することが長期的にもメリットになりやすいです。反面、コンサルタントや作業者といった役割は、外部のパートナーに役割を振ったほうがメリットが大きい場合も多いですね。

ちなみに広告代理店は、責任者以外の役割を担当する会社です。コンサルタント・運用者・デザイナーに加えてディレクター(営業担当)という職種が存在するケースがほとんどです。事業会社側の責任者がミッションに集中できるように、それ以外の役割を引き受けるのが広告代理店というわけですね。ディレクター・コンサルタント・運用者・デザイナーの4職種が存在すれば、広告代理店を立ち上げることも可能ということも言えます。

中小企業では代表自らがweb広告を直接見ている、というケースも多いでしょう。その規模であれば、責任者以外の役割を広告代理店に任せてしまったほうがうまくいくケースが多いです。リソースの分担としても円滑に進みます。企業規模がある程度成長し、代表者と別にマーケティングまたはweb広告の責任者が存在するのであれば、その人材の育成や、追加採用による内製化の推進によって、web広告の改善を目指すことがスムーズになります。大企業においては、コンサルタント以外のすべての役割を内製化することで、web広告が改善するケースが多いように感じます。


コラム:ヒューマンエラーをいかに防ぐべきか

広告運用を内製化した際に懸念すべき問題の一つは、ヒューマンエラーをいかに防ぐべきかという点です。広告代理店は広告運用のプロとしてチェック体制を敷いている上で、ミスが起こった場合も広告主に対しての補填を検討するなど、広告主がミスを心配せずに依頼できるような体制を敷いています。広告運用を完全に内省した場合は、ミスは自ら防がなければなりませんし、仮にミスが起きて大量に広告費を消化してしまっても、誰も補填してくれません。

広告運用は手作業で行うもので、必ずヒューマンエラーが発生します。「手動入札の価格を間違えてしまい、CPAが高騰してしまった」「予算上限の設定を忘れ、大量に広宣費を消化してしまった」「遷移リンクの設定を間違えてしまい、ユーザーが正しいページに遷移できなかった」「不適切な広告バナーにより炎上してしまった」…以上のように、起こりうるリスクは多岐にわたります。特にweb広告の場合、資金を取り扱う業務であることから、エラーは致命的なダメージになりがちです。無駄に資金を使ってしまうリスクが常に存在します。広告運用を内製化する場合には、こういった起こりうるリスクを事前に把握し対策しておく必要があります。

ヒューマンエラーを完全に防ぐことはできませんが、その防止と早期発見のために体制を敷くことは重要です。ヒューマンエラー防止のためには、チェック体制を敷くことです。デイリーで数値を確認する体制を作る・新規で制作したキャンペーンは必ず予算設定をダブルチェックする・CVRが異常に低いキャンペーンは実際の遷移を確認するなど、チェック項目を作って管理する体制を敷く必要があります。このような社内ルールを設けることで、大きな被害を防げる可能性が上がります。体制構築に正解はありませんが、運用体制だけではなく管理体制もきちんと検討しておく必要があります。


運用段階におけるよくある悩み

これらの役割を理解し体制を構築することができたら、実際の運用サイクルに入っていきます。広告の設計・制作・入稿・配信・効果測定を行っていき、長期的にweb広告を管理監督できる体制を構築しましょう。これまでに解説したweb広告の設定方法を進めながら、細かな運用調整に入っていきましょう。

実際にweb広告を配信したうえで課題になることのほとんどは「広告のボリューム」と「広告の効果」でしょう。前者はつまり、消化したい予算に対して広告の配信ボリュームが適切でないケース。後者は、単純に想定していた効果より悪いケースです。運用フェーズに入ってからの企業の悩みのほとんどが、web広告の最適なボリュームコントロールと、CPA削減です。

想定しうるケースは以下の四つです:「広告ボリュームが多すぎる」「広告ボリュームが少なすぎる」「CPAが高すぎる」「CPAが低すぎる」。我々はそれぞれのケースで、どのような対応をとるべきでしょうか?


広告の配信ボリュームをコントロールする

広告運用を行っている際に大きな課題となる一つが、広告のボリュームコントロールです。具体的には「予算に対してweb広告の消化がうまく進まない」という悩みをよく聞きます。例えば「リスティング広告が効果良いため月500万円の予算を準備しているが、月100万円しか使えていないため成約数が足りない」といった具合の悩みが多いでしょう。web広告の配信ボリュームをコントロールするには、その構成要素を知ることが重要です。

web広告の費用は、広告の表示回数×課金行為の掛け合わせによって決定します。現代の広告のほとんどがCPM課金(広告の表示回数に応じた課金)またはCPC課金(クリック数に応じた課金)になっています。一部媒体ではCPA課金(成果型課金)の形式もあります。いずれの形式にせよ、表示回数を母数として、そこから発生したアクション数に応じて課金されるのがweb広告です。すなわち、①表示回数をなるべく増やすこと②それに対しての課金単価を減らすことが広告の効果改善に繋がります。

表示回数に影響する要素は「ターゲットの規模」と「広告の反応率」です。特に、ターゲットの規模が大きく影響します。ターゲットの規模をコントロールすることが、広告の露出量をコントロールすることができます。

ターゲットの規模はあらゆる要素の分母となるものですが、その調整は非常に難易度の高いものになります。現代のweb広告では、ターゲットの規模を出稿側が調整できることが当たり前です。性別や年齢・居住地などのデモグラフィック情報などに加えて、興味関心などの情報でターゲットの規模を設定することができます。何も設定せず最大範囲に配信をかけることをブロード配信といい、これが各媒体ごとの最大分母になります。ブロード配信では最大限に広告を配信することができますが、商材に不適切なユーザーに広告が配信されてしまい無駄なインプレッションが出てしまう可能性も高くなってしまいます。かといって、ターゲットを絞り過ぎてしまうと、広告の配信量が少なくなってしまったり、入札単価が高くなってしまうデメリットがあります。実際のweb広告配信では、広告予算と商材に応じた最適なターゲット規模を設定する必要があるのです。これは運用をしながら探していく必要があるため、難易度が高くなります。

もう一つ広告の配信ボリュームに影響するのが広告の反応率です。Googleやfacebookはじめ、機械学習による最適化を目指す現代のweb媒体では、反応率の高いクリエイティブはより露出され、反応率の低いクリエイティブは露出を抑制させるという設計になっています。ターゲット規模がいかに担保されていても、反応率の低いクリエイティブしかなければ、広告は露出されません。

つまり、広告の表示回数を増やすためには、ターゲットの規模を拡大し、クリエイティブの反応率を高めることが必要になります。Facebook広告などのSNS広告では配信ボリュームが問題になるケースは少ないですが、リスティング広告などでは配信ボリュームの少なさが課題になるケースが多いです。これは、リスティング広告における分母が「検索数」であることから、キーワードやクエリの設定を広げることが難しいケースが多いからです。

続いて、課金単価を調整するためには、入札設定を設定します。入札設定とは例えば、1クリックあたりの単価ですが、これらは手動で設定することができます。入札の項目でも書きましたが、現代の主力媒体のGoogleやFacebook広告における入札設定のメインは自動入札であり、ほとんどの場合は入札は手動で設定せず、自動設定にしていることが多いでしょう。けれども、自動入札は時に入札単価を引き上げすぎてしまうケースがあります。そういった場合は、手動で入札単価を設定することで、1クリックあたりの単価を抑制して、消化金額を適正な金額に落ち着けることが可能です。

つまり、広告の配信ボリュームを調整するためには「ターゲットの規模」「広告の反応率」「入札設定」をそれぞれ調整することで、最適な配信金額に落ち着けることが可能です。これらの設定は非常に難易度が高く、配信予算と配信媒体にも大きな影響を受けるので、優秀なコンサルタント・運用者と相談し、実際に運用しながら常に調整を進めていくことになります。


配信ボリュームの増減に対するソリューション

実際に広告のボリュームが少なすぎる場合は、「ターゲットが少なすぎる」「広告の反応率が悪い」「(手動入札にしている場合)入札単価が低すぎる」これらが原因です。ターゲットを以前よりも広めに設定するか、反応率の高いクリエイティブを投入するか、入札価格を優しく設定(あるいは、自動入札に変更)することでボリュームを増やしていくことができます。どの要素が原因のうち大きな影響を与えているのかどうかは、管理画面数値を見ながら判断していきましょう。

反対に、広告の配信ボリュームが多すぎる場合も、web広告の配信状況として適正とは言えません。ほとんどの場合、web広告の配信は日予算が設定されているため、広告配信が多すぎるケースは見過ごされるケースが多いのですが、日予算に対して配信ボリュームが多すぎないかは一度確認したほうが良いでしょう。例えば日予算を一万円に設定していたとします。日付が変更される0時から24時間の間にバランスよく配信が進んでいれば最適なのですが、広告の配信ボリュームが多すぎる場合は、0時から朝までの数時間で日予算1万円に到達してしまい、実は24時間のうち2-3時間しか広告が配信されていなかった、というケースがあります。このケースが広告の配信ボリュームが多すぎる場合であり、運用としては不健康な状態です。

広告の配信ボリュームが多すぎる場合は、ターゲット設定や入札価格が広すぎる可能性があります。日予算と全体予算を設定したうえで、日予算に対してどれぐらい配信ペースがオーバーしているのかをウォッチしましょう。1日中配信している中で、だいたい何時ごろに配信が終了(日予算に到達)しているのかに注目し、日予算に対する配信ボリュームのポジショニングを知ります。1日のうち早めに日予算に到達してしまっているのであれば、配信ボリュームが日予算に対して多すぎます。この場合は、配信ターゲットと入札単価を抑制しましょう。配信ターゲットを絞るということは、より濃いユーザーリストにアプローチしていくということであり、広告効果の改善が見込めます。


CPA削減に向けた動き

配信量の問題に加えて、多くの会社が頭を悩ませているのが、CPA(成約単価)の高さの問題でしょう。CPAが高すぎると、ROAS(費用対効果)の悪化に繋がります。web広告に資金を投資すべきか、そもそもの投資判断の決定に影響を及ぼすでしょう。すべての会社がCPAを少しでも削減しようと、あらゆる手段を講じています。さて、出稿したweb広告のCPAが高い場合に、われわれは何を検討すべきでしょうか?ここではCPAの要素を分解し、最適な打ち手を探すヒントを探ります。

CPAとは、成約単価のことです。成約単価とは、配信コストを成約数で割ったものです。つまり、配信コストを減らしながら成約数を増やすことがCPAの削減に繋がります。もう少し分解して見てみましょう。広告が露出され成約に至るまでの道筋は単純化すると以下の通りです。広告の表示回数→クリック数→成約数です。それぞれの遷移率をCTR(クリック率)およびCVR(成約率)と呼びます。そして多くの場合、広告費を決定しているのは表示回数またはクリック数と、それに応じた入札単価です。CPAが高い場合のほとんどの原因が①CTRが低い②CVRが低い③入札単価が高い、のいずれかです(すべての場合もあります)。CPAが高い場合、まずはどの原因がクリティカルな原因なのかを探ります。

CTRが低い場合:このケースは、CPM型配信の際にクリティカルな原因になります。CPM型配信の場合、広告の表示回数に応じて費用が課金されます。すなわち、表示回数が多くてもクリック数が少なければ、サイトに訪問者が少ないままに金額だけが消化されていってしまいます。CPM型配信の場合は、兎にも角にもまずCTRを引き上げることが重要です。CTRを引き上げるために最も重要なのはクリエイティブの改善です。

CVRが低い場合:このケースは、いずれの場合でも問題です。クリックされてから制約するまでの率が低い場合、CPM型でもCPC型でも無駄なコストを垂れ流すことになってしまいます。CVRは、広告効果に影響する最も重要な変数です。CVRに影響する最も大きな要素はホームページ(LP)及び商材の内容です。他にもターゲット・クリエイティブと商材との親和性なども影響します。

入札単価が高い場合:このケースは、自動入札・手動入札いずれの場合でも起こり得ます。多くの場合、ターゲット規模が狭すぎる・またはクリエイティブの反応率が低いことによって、入札単価が無駄に引きあがってしまうことによって起こります。そもそも広告媒体の相場が高いというケースもあります。広告媒体を再選定する、ターゲット範囲を拡張する、クリエイティブの反応率を上げることで改善していきます。

まず全体の数値を見ていずれの課題がクリティカルなのかを特定してからは、その原因を深掘りしていきます。例えば、CTRが低い場合、特にCTRが低い場所はどこか?といった深掘りを行っていきます。全体の数値を見たあとはキャンペーン・広告セット・クリエイティブごとの数値を見ていきます。さらに配置やターゲットといった詳細も掛け合わせて見ていきましょう。すべての数値が同じCTRを示しているはずがありません。それぞれに効果の良い数字・悪い数値があります。悪い部分を削り、良い部分を伸ばしていくことで、CPAの改善を進めることができます。例えば「Facebook広告のうち、Instagramのストーリーは効果が良いが、Facebookメッセンジャーでは効果が悪い」といった事象が起こり得ます。大きなスコープで見るのではなく、細かく分解してそれぞれの原因を探っていくことで、効果の悪い部分だけが見えてきます。細かな分析を行い、改善点と継承点を探っていきましょう。

キャンペーン・広告セット・クリエイティブ・配置・ターゲットなどの変数それぞれに対して、CTR/CVR/入札単価の課題を検証していきます。これだけでもかなりの検証項目になります。さらに配信設計に応じて検証項目は増えていきます。その中でどの課題がクリティカルなのかを判断し、それに対する打ち手を考えていきます。この流れが、CPAを削減するためにweb広告責任者がやるべきことの一つです。


ここではweb広告運用を内製化する際に必要となる職種・役割について考えつつ、実際の運用段階における具体的なソリューションを考えていきました。本noteでは、web広告と内製化に関するコラムを投稿していきます。よろしければフォロー・いいねを頂けると嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました。


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