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1.2 コロナと経済

新型コロナウイルスの影響は医療現場に止まらず、経済も大きな打撃を受けました。

「経済」

と聞くと、社会規模でのお金の動きを連想しがちですが、今回は国ごとの経済政策だけでなく、家庭や事業などにもクローズアップして考えてみたいと思います。


1. 家庭内での経済状況

ひとり親世帯は経済的に厳しい状況に置かれている割合が高く、国からの支援を必要としているのが現状です。これは日本だけでなく、世界で共通しています。新型コロナウイルスの流行によってこの状況はさらに厳しいものとなっています。ではそれぞれの国でどのような対策を行っているのでしょうか。

〜日本国内:ひとり親世帯〜

日本では、ひとり親世帯の貧困への対策として就業の改善を目指しました。ですが、母子家庭の場合81.8%ほどある就業率の43.8%はパートやアルバイトで、働いていても収入が少ないという状況です。また、ひとり親世帯への給付金も、前年度の所得が低い人に限られていることから、全てのひとり親の人が給付金を受け取れているわけではありません。

これが新型コロナウイルスにどのような影響を受けたのでしょうか。
ひとり親世帯でも一定の収入があると給付金を受け取ることができないと先ほど述べましたが、これがコロナ禍で大きな打撃をもたらしました。コロナによって失業率が上がり、十分な収入を得られていないひとり親世帯が増えています。それにもかかわらず、前年度の収入から給付金の付与を必要と判断されなかった家庭が、貧困に悩む状況が深刻化しています。日本ではコロナで全国民に10万円の給付金に加えてひとり親世帯向けの給付金も講じられましたが、これについても児童扶養手当受給世帯に限定されていることから、コロナの流行で給付金を必要としている家庭もそれを受け取れていないというのが現状です。

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​ひとり親世帯の交流活動などを行っている「couch」という団体は、ひとり親世帯が支援を受けられるよう署名活動を行っています。

〜アメリカ:ひとり親世帯〜

アメリカでは、1996年からひとり親世帯への支援が始まり、現在ではそれが発展した

“Earned Income Tax Credit (EITC)”:給付付き勤労所得税額控除

という制度が普及しています。これは、低所得者に対して所得税の徴収を行わず、収入の最大34%のサポートを受けることができるシステムです。これを受給するためには様々な条件を満たす必要がありますが、生活に必要な資金を補うことができます。下のグラフは異なる状況下での税金の控除額の推移を示しています。

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これに加えて、公正労働基準法によって最低賃金を定めることで、以上なほど低い収入で働く人が減り、収入を引き上げる効果をもたらしました。また、ひとり親の人が子どもを預けて働けるような環境もつくっているそうです。実際、これらのシステムによってアメリカの母子家庭の貧困率は大幅に改善され、1996年に35.8%だったものが2017年に27.9%まで低下しています。アメリカでひとり親世帯をサポートするシステムが定着しているのは、アメリカのひとり親世帯は世界でも多いと言われているという背景が関係していると考えられます。
これを踏まえて、アメリカのひとり親世帯はコロナでどのような影響を受けたのかに着目していきたいと思います。

2020年10月の時点でアメリカの失業率は6.9%までに達していて、今後もレストランなど接客を伴う事業を中心に雇用自体が減ることが予測できます。これはひとり親世帯にとっても収入源を失う確率が上がることを意味し、対策として、アメリカの財務省は

The Coronavirus Aid, Relief and Economic Security (CARES) Act

を打ち出し、収入が$99,000未満の人に最大$1,200、また17歳未満の子どもに$500の給付金が付与されました。(2020年時点)

日本とアメリカを比較すると、コロナ以前からひとり親世帯への対策に圧倒的な差が見られます。この状況をどう変えていくかが今後の課題になるのではないかと考えます。

ここから生まれる疑問点は:
どうしてひとり親世帯への給付金の付与は限られてるのか?
直接的な関係を持ってない私たちに何ができるのか?
などなど......
私自身、今回リサーチをして学んだことが多く、これから得た知識をもとに、私たちに何ができるのかについて考えていく必要があると感じました。

2. 事業に対する経済政策

コロナウイルスの影響で衰退してしまった経済を立て直そうと、日本でも海外でも様々な経済政策が取られてきました。これがどのような特徴を持っているのか、海外との比較を含めて説明していきたいと思います。

〜日本国内:GoTo Travel・GoTo Eat キャンペーン〜

新型コロナウイルスの対策として緊急事態宣言などが出されたことで、レストランなどの接客業や旅行会社などのサービス業の利用者は大幅に減少しました。このことで経済活動が衰退することを問題視して、日本ではGoTo Travelキャンペーン、そしてGoTo Eat キャンペーンが施行されました。これは、旅行や外食への支出を政府が一部負担することでお金を動かすことを推奨する働きがあります。

個人的に授業のレポートでGoTo Travelキャンペーンについて調べたのですが、課題点も多いのではないかと感じました。経済学の「外部不経済」というコンセプト、簡単にいうと消費者がある商品を買ったりサービスを利用することでその売買に関わりのない人に悪影響をもたらすこと、がこのキャンペーンに大きく関係しているのではないかと感じました。もちろん、このキャンペーンにはその目標の通りお金を動かして主に生産者を支える効果もありますが、例えば消費者が旅行をすることによってその旅行先で暮らしている人の感染リスクを高める危険性があると考えられます。下の図はそのプロセスを簡単に表したものです。

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〜イギリス:Eat Out Help Out〜

イギリスでも、日本と似ているEat Out Help Out、つまり外食をすることで飲食店などを支えようという経済政策が施行されました。ですが、首相自身がこのキャンペーンが感染拡大を促したと考えられると発言しています。このキャンペーンは8月に行われていたもので、この頃は一時感染の拡大が改善されていましたが、このキャンペーンで多くの人が外出してしまったことも関係してか、9月にはまた感染が拡大してしまいました。

日本での事例もイギリスでの事例も、生産者を支えると同時に感染のリスクが高まってしまうデメリットがあったようです。

ここから生まれる疑問点は:
生産者を支えつつ、感染リスクを抑えるために、消費者として私たちはどんな行動をとるべきなのか。
などなど......
国が定める経済政策に私たちが直接アクションを起こすことは難しいかもしれませんが、消費者としての立場を見直すことや、問題意識を持つことで、状況を改善できるのではないかと感じました。


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