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社内SEの事件簿②・・・ひと昔前のメールシステムダウンの破壊力

「メール使えなくなってるって皆に”メールしなきゃ”!」

IT企業時代、とてつもなく優秀な先輩がいた。冷静で頭の回転が早く、当然仕事もバリバリできた。まさに私とは真逆の存在。心底すげーなーって思ってた先輩が、メールサーバー落ちてパニックに・・・

おいおい、本当に先輩の言葉かよ?・・・我が耳を疑った。

こんなすごい人をここまでパニックに陥れるとは、メールとはなんと偉大なシステムなんだと、ただただ感心したものだ。


■かつてメールシステムとは

昨今、コミュニケーションツールの多様化により、1つのメールのみで仕事をすることはほとんどなくなった。

LINE、チャット、その他数多のコミュニケーションツール、またメールも1つではなく複数(パソコンと携帯だけで2個)使いわけしている人もいる。

しかし私がIT企業に勤め始めた頃(今から20年以上前)、メールというのは、1度に複数の人へ要件を伝えたり、お客様にお手軽に挨拶や資料を送付できるという、他に類を見ない、画期的なシステムだった。

ある部長が、

「営業に電話で発破をかけてると、1人目の営業と最後の営業、勢いも内容も変わっちまうから、メールっつうのは何ていいものなんだ~って思いました!1回だけ気合入れて書けばいいんだからね!」

・・・と、新人の私に面白おかしく説明してくれたのが懐かしい。

1度に複数の相手に・・・というのがポイントで、IT企業に勤めていた10年間、メールは間違いなく仕事に欠かせないツールだった。

そして、IT企業からエンドユーザーの世界へ移り変わった私を待ち受けていたのは、IT企業時代とは比べ物にならないほど、膨大なメールが行き交う世界だった。

特に役職の高いミドル層、シニア層ほど、メールを使いまくっている。ある部長なんか、間違って2日連続で会社を休もうものなら、社内メールだけで、100通未読とかになっている。

これまたある部長が、

「全く営業の奴ら、パソコンの前に座ってパチパチやってるだけで、仕事した気になってやがる!」

と、怒り狂いながら自分はそのことをメールにパチパチ入力して、営業さんに送信し、仕事してる気になっている。

そして、

「メール見てんのか~!」

と電話確認する・・・

ん?、やっぱりパソコンの前にいないと仕事したことにならないのではないでしょうか?・・・なんてその部長に反論できた営業さんは恐らく一人もいないだろう。

兎にも角にも、メールっていうのはエンドユーザーにとって、神がかり的なビジネスツールだったのである。

そして、そのたったひとつのコミュニケーションツールに頼り切ったビジネスモデルが確立されたとき、やっぱりやってくるんだな~、トラブルが・・・


■メールシステムダウン、その時社内SEは

ある日の就業時間後、自宅への帰り道、会社携帯が鳴った。

なんだよ~、今日の営業はもう終了ですよ~なんて思いながら、

「はい、社内SEです。」

と電話に出ると、ある営業さんからだった。

「なんかさ、メール使えないんだよ!今日中に報告しなきゃいけないのに!何とかしてよ!」

私は、

「うーん、インターネットも使えてますよね・・・う~ん、じゃ~パソコン再起動してみてください。駄目だったらまた連絡ください。」

そしてその営業さんと、再び話すことができたのはそれから2時間後。

電話を切ると、着信3件・・・ま・まさかだよな?

そのまさかだった・・・

そう、メールシステムがダウンしたのだ。

社内SEになって初めてだった、社内で利用しているメールシステムがダウンしたのは・・・

社内SEになって初めてだった、30分で携帯電話着信履歴保有限度30件が満杯になり、ひと回りしたのは・・・

社内SEになって初めてだった、着信あった人全員に折り返しをあきらめたのは・・・

メールシステムは外部業者に依頼していた。その時間帯は既に受付時間外だったから、連絡も取れない。

・・・というより、今、その外部業者も大騒ぎになっているだろう。きっと原因究明、バックアップの確認、サーバー再起動・・・あらゆる復旧の努力をしてるはずだ。元IT企業サービス・保守出身の私には、その人たちの気持ちが痛いほど分かる。起こしたくて起こしたトラブルじゃないんだよね。落ち着いて頑張って復旧してくれ~

・・・なんていう風に、その当時は分かっていても寄り添う気持ちにはなれなかった・・・とんでもねー事態引き起こしてくれたな!と、泣きそうになりながら独り言を連発した。

あらゆる部長、部門担当者、営業さんと2時間話し、おんなじ説明を延々と繰り返した。

「メール、トラブっちゃったみたいで~、みんな使えないんですよ~。業者とも連絡取れないし、今日は復旧しないと思うんですよ~」

そうすると案外、

「あ!みんな使えないんだ!だったら部長も俺たちの報告メール見れないんだよね。それならいいんだ!明日には大丈夫だよね~」

・・・と”あなただけじゃありません情報”を与えると、8割の人は安堵して電話を切ってくれた。

残りの2割の人には・・・延々と食い下がられた。

「報告、今日までなんだけどさ~、何とかなんないかな~。なんか方法ないかな~」

気持ちは分かるが・・・いやそれは嘘、あんたの気持ちは分からねーが、今日のところはとにかくあきらめてくれ!・・・と出掛かる言葉を何度も飲み込み、ひたすら謝った。私のせいじゃない!私には何もできない!そう心の中で何度も叫びながら・・・

1つのメールシステムに頼り切ったビジネスモデルから脱した今現在、振り返ると、こんな出来事もいい思い出だ。

あの時の自分に教えてあげたい・・・10年経てば笑い話になるよ・・・と



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