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”ほっ”と一息つける、あたたかな小説2冊【徒然読書番外編3】
心に余裕がないときにこそ、読書をする。
そんな”読書のかたち”もあると思います。
時間もまとめて取れなくて、でも心の揺れというかあたたまるような感覚を味わいたい。
だから、SFや歴史とか難しいものではなくて、軽いけど深い本が欲しい。
そんな時に読んで満足した小説を2冊紹介します。
読了感もすっきり、なので電車の中で読むのにぴったりだと思います!
水墨画の世界にどっぷりつかりながら、”いのち”の本質に迫っていく小説
ちょうど映画化されている小説です。
小説を読むのは久しぶりでしたが、一気読み。
小説といっても自己啓発にもつながる本だと思います。
著者も水墨画をされていて、独特な表現や水墨画の描写に引き込まれました。
四君子や「蘭に始まり、蘭に終わる」、気韻などの、水墨画の世界ならではの言葉も。
読んでいる最中ではゆったりと、確実に時間が流れているような感覚にひたっていました。
その一瞬一瞬の"いのち"と自分の心を通わせて、線にうつしていく。
水墨画の本質にも触れられていて、新たな世界を覗き見ることが出来る本だと思います。
現代社会の”読書”に対して疑問を投げかける小説
この本は帯に惹かれて買っちゃいました。
「お前はただの物知りになりたいのか?」35か国以上で翻訳!
著者は『神様のカルテ』の夏川草介さん。
これは気になるなあ。
小説はあとがきや解説も読んでから、買う派です。
そのあとがきに、こう書かれていました。
しかし槍ヶ岳の頂上まで登らなければ、どうしても目にすることのできない景色がある。先に述べた、人間の本性に触れる真実、時代を超える普遍性という絶景である。
(中略)
ただ本書を読み終えた読者の幾人かが、これをきっかけとして、いささか難解と言われる名作を手に取ってくれれば、これこそまさに私の策略の成功ということなのである。
よし、買おう。
買った次の日ぐらいに読むと、これまた一気読み。
わかるわかる、と共感しながら読んでいました。
本好きならわかるというか、現代社会の読書に関する課題にいろんな登場人物を使って切り込んでいます。
あまり書くとネタバレになりますが、自分への戒めにもなりました。
著者の策略にまんまとはまったということだけ書いておきます。
あまり呼んだことのない本。難しそうな本。
だけど、難解でも自分なりに本と心を通わせてみる。
何度も何度も読んでみる。
このスタンスは、以前書いた『読書と社会科学』にも通じる部分があるように感じました。
実は小説の中でもミステリーや現代小説に苦手意識があって、SFや歴史ばかり読んでいたんです。
なぜ苦手意識があるかというと、”リアルすぎる”からなのかもしれません。
感情移入しやすい反面、なんか持っていかれそうな気がする。
SFや歴史ならいまと時間軸が違っていて、別世界としてイメージできるし、勉強になる。
まだ自分の中で言語化できていないので、ここまでにします。
言えることは、そんな私の小説全体に対する感覚を20%ぐらい塗り替えてくれたのがこの2冊だということ。
それは確かです。
本好きと言ってもどんな本も好き!ではなくて、変なこだわりというか線引きがあります。
自分のなかの変な線をうまく調整しながら、読書ライフを楽しんでいきたいです。