死因

あんなのは勝利者たちが美化した仮初の物語
最も肝心なところが割愛されている　騙されるなよ

いつだって頼りになるのは自分の力だけ
しかしそれには生まれつきの上限が重く圧し掛かる

助けを得られるのは魅力という最強の力があるから
美談とは臭いものに蓋をした上での談合だ

他人と競争して勝たなければ価値にならない仕組み
当然金にもならない　余計なものは燃えないゴミ

つまるところ全ては力学的なやり取りであり
資本主義下で擁護されている各種の力を用いた騙し合い及び殺し合いである

危険な武器を扱う奴らほど
都合のいいファンタジーの中から出てこようとはしない

それどころか外部へと侵食し始める
白昼夢だって大勢で見れば具現化する

持たざる者はさらに失い　富めるものはさらに富んでいく
金だけの話でもない　余裕のない人間は敬遠されて独りになる

全ては市場原理へと回収されてしまった
さっきのあの͡娘にかけた言葉から　そっと閉まっておいた幼き約束まで

価値を高めなければならないという号令が粛々と執行されている
演技が通用しなくなれば　より上手な演技が求められ
それが通用しなくなれば　自分自身すら騙せる演技が求められる

だったら勝てなかったのも当然で
全ては意味の無い八百長試合に過ぎない

僕らはまるで悪感情を投げ込まれ続けたくずかご
投げ込んだ奴らは向こうで笑ってる

だったらやることは一つしかない

君の日々の満たされなさが本音の話し合いをしようと叫んでる
少年のような目でずっと見つめてるよ暗い部屋の片隅

定まった勝敗をひっくり返すのは凡人には無理だよ
でも突き返すのなら素直な自分を思い出すだけでいい

脳裏に焼き付いてるあの汚い面を引き裂くのは
存在が蘇るような強烈な解放感をもたらす

犯した罪の報いを受けさせるだけ　何も悪い事じゃない
そうしなければあなたは代わりに現在未来の大切な人に刃を向ける

だったらやることは一つしかないだろ

もう誰ともあの頃みたいに笑えないよね
歳を取るごとに広がっていく格差　狭まっていく行動範囲

彼らの当たり前の日常や悩み事の話が自慢にしか聞こえない
そこに悪意が無いことに二重に惨めにさせられている

早々に首を吊った彼の選択こそが正しかった
そろそろ僕もこの場所にはいられない

憐れまれるのにも疲れました
本当は歓声を浴びたかった　華麗なシュートを決めた彼みたいにね

それは何度も夢想した光景
そしてついに実現しなかった模様で

生物として生きるための効率的な欺瞞
不都合なことには誰も興味ないね　気持ちよくなりたいだけ

君ももう頑張らなくていいよ
本気でやってこなかったとしても後悔しなくていいよ

どちらにせよ同じこと
箱の中が空だってことを確認するのもつらいもんだよ

あがけばあがくほど惨めさは拡散し罪は重なるんだよ
すみませんでした

もともとが巨大な茶番劇
どこにも何も残さなくていい

君は君のままにただ滅べばいい

僕もそろそろ眠ります　ありがとう　さようなら

死因は人間を辞められなかったことでした