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地域に本当に必要なレストランとは?
久しぶりのnote。今回はサステイナブルなレストランについてのお話です。
今、僕は食を中心としたまちづくり会社「ミナデイン」で、里山transitという飲食店の運営や、地域の食材を活用した小売商品の開発、新規事業の立ち上げなどに携わっています。
この会社ではそれぞれの飲食店にコンセプトがあるのですが、里山に問われているのは「地域に本当に必要なレストランとは?」です。
僕自身は以前から食品ロスや環境問題に関心があり、自然環境に配慮したサステイナブルなレストランを形にしたいと思っていますが、この問いの答えもその道の半ばにあると考えています。
そこで今回は、サステイナブルなレストランの実現に向けた里山transitの現状と今後の方向性についてお話したいと思います。
里山transitとは
里山transit(以下、里山)は、2018年12月に千葉県佐倉市ユーカリが丘にオープンした料理店です。ランチはファミリーレストラン、ディナーは居酒屋の二毛作形態で、全国から取り寄せた名物や地域の食材を活かしたお料理、トップシェフによる逸品など幅広い商品を取り扱っています。
ユーカリが丘は、都心から京成線で約1時間ほどの場所にあるニュータウン。山万株式会社というユーカリが丘に特化したディベロッパーが街づくりを進めており、地域の不動産開発・販売をはじめ、鉄道の運行や警備・介護、農業など幅広いサービスを提供しています。
ミナデインは、この山万さんと戦略的業務提携を結んでおり、食を通したより良いまちづくりを進めています。
これまでの取り組み
里山のコンセプトの一つは「地域の資源を暮らしに活かす」。これまでにも、地元の農家の方が食材を持ち寄り、住民の方に提供する「持参自消」や地域の余野菜を店舗にて調理・加工して活用する「里山リサイクル」といった取り組みを進めてきました。
また、資源の利用量(水道光熱費)や食品廃棄物の種類・量などをスプレッドシートで管理・可視化したり、プラスチックストローの代わりに4Natureさんの生分解性さとうきびストローを使用するなど、自然環境に配慮した体制に徐々に移行しています。
(引用:4Nature)
サステイナブルレストラン協会
昨年12月には、サステイナブルレストラン協会(以下、SRA)にも加盟しました。食材の調達や廃棄物の削減、労働環境の整備、地域との関係性など様々な観点でレーティングをしていただけるため、数字的な目標や計画をもとにサステイナブル化を推進することができます。
eumo CEO / 元鎌倉投信ファンドマネージャーの新井さんが、著書「持続可能な資本主義」で”八方よし”という考え方を提唱していますが、”サステイナブル”であるということは、こうした様々なステークホルダーとより良い関係を築くということではないでしょうか。
(引用:「持続可能な資本主義」/ 新井和宏)
コロナウイルスの影響により外食産業は大打撃を受けましたが、改めて飲食店のあり方や周囲との関係性について見つめ直す時期なのかなと。
里山も、それぞれのステークホルダーに対する提供価値を高められるよう、既成概念に囚われず、総合的により良い飲食店を目指したいと思います。
サステイナブルなレストランとは
このような飲食店を実現するためには、従来の飲食店を様々な観点からアップデートする必要があります。21世紀はスマホ一つで情報が手に入る便利な時代で、色々なところにヒントが散らばっています。
「D2C」の体験型店舗
(引用:CNBC)
ビジネスモデルという観点で、個人的に注目しているのはD2Cのスタートアップなどが提供している体験型店舗です。
基本的には、下記のような流れだと思われます。
「実店舗を体験の場として、ブランドのコンセプトや世界観への共感を広げ、商品の購入はECやアプリで行なってもらう。収集したデータを元に顧客にとって最適な商品・サービスを届けられるよう改善・提案をしていく。」
飲食店も”料理”という媒体を通じて、様々な食体験や世界観を伝えることができます。その先に出口を用意することができれば、お客様に提供できるサービスを拡充することができ、飲食店側も生産性の向上に繋がります。
飲食店のDX化と叫ばれていますが、そうしたオンラインとオフラインが融合した新しい飲食店の形を模索したいなと。
自ら経営支援・来客予測ツールを開発した「ゑびや」
(引用:TechCrunch)
日々の業務の負担を和らげるためには、あまり得意ではないテクノロジーとも向き合う必要があります。
例えば、三重県伊勢市にある老舗「ゑびや」は飲食店でありながら、自ら経営支援ツール「TOUCH POINT BI」を開発・提供しています。
顧客・注文情報など様々なデータを管理・可視化したり、過去の売上データや天候情報をもとに来客予測を行うことができるそうです。実際に導入した結果、お米の廃棄量が約70%削減したり、データ収集時間を1/60に短縮できたとのこと。
飲食店でもテクノロジーの活用が徐々に進みつつありますが、まだ決済や注文など表側の部分がメインです。上記のような需要予測をはじめ、仕入や食材管理、オーダー処理など、大きな開拓の余地は裏側にあると感じます。
都市型農業を手掛ける「Pizza 4P's」
(引用:IDEAS FOR GOOD)
こうして生まれたリソースを地域社会や自然環境との関わりに還元していくのが理想的です。
そのような飲食店として、個人的に注目しているのがベトナムのピザ屋「Pizza 4P's」。このお店では環境負荷を低減するために、様々な施策を実施しています。
・キッチンの食品廃棄物を堆肥化するミミズのコンポスト
・上記のミミズと堆肥を活用したアクアポニックス
・プラスチックストローの廃止
・太陽光発電の導入
SRAの評価基準をもとに、各店舗のサステイナビリティを数値化する仕組みも自ら作成したそうです(実は里山がSRAへの加盟を決めたのも、上記の記事がきっかけです笑)。
Pizza 4P'sのように、自然環境と向き合い、限りある資源を大切に扱う飲食店の価値が今後益々高まっていくと思います。
「すかいらーく」のコミュニティレストラン構想
最後に、日本を代表する外食企業「すかいらーく」です。ガスト、ジョナサン、バーミヤン、夢庵など街中で目にする多くのチェーン店を運営しています。
(引用:すかいらーくグループ)
興味深いのは、同社に勤めていた梅谷羊次さんが著書「ファミレスは進化する!」で記している”ネイバーフッドレストラン”や”健康と食の新産業モデル”といった構想です。
地域密着ネイバーフッドレストランとして地域社会との関係性を強める。自治体、学校、企業などと組んだ多世代向けの食育イベント、地域のお祭りなどとの共同イベント、スポーツや文化活動などの地域活動をサポートする。地域住民のコミュニティの中心的な役割も担う。
健康志向の高まりや高齢化社会に備え、農業と消費を連結した「健康ステーション」としてのレストランや総菜企業、さらには食育などの体験などの新ビジネスを創出する。
・レストランがその地域の生活者と生産者、加工業者、行政などの出会いの場となる。
・生鮮食材はすべて地元産で、生産者を開示する。生産履歴の情報はすべて把握する。
・農作物直売所を併設し、スイーツ、乳製品、ジャム、ワインなど県産品の加工食品も販売する。
・管理栄養士を置き、食育イベント、料理教室、農業体験などのイベントを行う。
・県・市・病院とも連携して簡単な健康チェック、健康的な生活をアドバイスをする。
チェーン店の良さは、どのお店に行っても同じクオリティの料理が食べられる一律制です。一方で、個人店に見られるような独自性や地域性が薄れてしまいます。
梅谷さんは、チェーン理論のメリットを活かしながら、それぞれの地域社会に寄り添い、農業や医療など幅広いサービスを提供するコミュニティレストランの実現を目論んでいたようです。
この構想には、従来のファミリーレストランを超えた、新しいレストランチェーンの形が垣間見えた気がしました。
今後の方向性
結論から言うと、「地域に本当に必要なレストランとは?」という問いの答えはまだ見つかっていません。
今は一つ一つヒントを拾いながら、具現化したい飲食店のイメージを膨らませています。あるいは、このようにお客様のニーズや環境に合わせて変化し続ける飲食店がその答えなのかもしれません。
ただ、何らかの手段で売上・利益率を向上し、その余剰のリソースを再投資し、各ステークホルダーへの提供価値を高めていくこと姿勢は徹底したいと思います。
その上で、現在動き出しているプロジェクトや取り組み、今後の展開についていくつかご紹介します。
地域の資源を活かしたオリジナル商品の開発・販売
店内だけでなく、店外でも里山のお料理の味をお楽しみいただけるよう、地域の資源を活かしたオリジナル商品を開発中です。
現在は、山万の子会社である山万ユーカリファームさんのミニトマトを活用したトマトソースやトマトカレーを作っています。
基本的には、「地域の資源を暮らしに活かす」というコンセプトや世界観を体現したいため、里山の店舗内や地域の小売店などで販売予定です。
ただ商品や地域の魅力をより多くの方々に届けられるよう、メディアによる情報発信やECでの販売も検討しています。
サステイナブル化に向けた具体的な計画と実施
SRAのレーティングの結果が返ってきたため、この数字をもとにサステイナブル化に向けた具体的な計画を立てていきます。
こちらに関しては、別のnoteで詳しく取り上げたいと思いますが、今後実施したい取り組みの一つとして「コンポストによる地域内循環」があります。
店舗で発生する食材廃棄物や生分解性の消耗品をコンポストにより堆肥に変え、地元の農家さんに使っていただく。そこで栽培された作物を店舗で活用する。こうして初めて、地域内で循環する食のバリューチェーンの構築に向けて一歩前進できるのかなと。
他にも色々と構想中ですので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
飲食を超えたフードサービスの提供
ただ美味しい料理を提供するだけでなく、料理という媒体を活かした様々なサービスも提供できると考えています。
例えば、上記ですかいらーくの梅谷さんが挙げていた教育やヘルスケアがあります。里山は地元の農家さんとの距離が近いため、食材に関する生の情報発信や農業体験などのイベントを実施することができます。また、医療機関と連携し、お客様の体調やニーズに合わせたヘルシーなお料理を提供できるかもしれません。
このように、飲食という垣根を超え、地域の住民の方が必要とする様々なフードサービスを形にしたいと思っています。
地域に本当に必要なレストランへ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、里山transitの現状と今後の方向性についてお話させていただきました。地域をはじめ、多方面で価値を提供できるよう、常に変化し続けたいと思います。
今後もワクワクするような取り組みをしていきますので、ぜひ里山transitの応援をよろしくお願いします!
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