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Vol.49 最悪な状況で、人生最良の”気づき”を得る瞬間。

「え~!まだ前日譚を作るの?」と思ったのは、映画「クワイエット・プレイス DAY1」の予告編を観た時の話。

過去に2作品が作られている、映画「 ” クワイエット・プレイス ” シリーズ」を、両作品とも劇場公開時に鑑賞した私の偽らざる感慨でした。

ちなみに、
『1作目の「クワイエット・プレイス」のあらすじ』は…
アメリカの田舎町で、音を立てない事に注意を払いながら、自給自足の生活を送っているアボット一家。
実は、音に反応し人間を捕食する ” 未知の生命体たち ” によって、人類は滅亡の危機に瀕しているのだった…


※下記は予告編(1分半の動画です)。

『2作目の「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」のあらすじ』は…
前作のラストにて、犠牲者を出しつつも ” 未知の生命体 ” の退治方法を発見したアボット一家。
家を失った彼らは、新たな居住地を求めるのだが…
冒頭で ” (1作目の)前日譚 ” を見せつつ、 ” アボット一家のその後 ” を描いた続編。

※下記は予告編(1分40秒の動画です)。

…正直、『「 ” 音を立てると即死 ” という、一つのアイデア」で、よく2作品も作ったね…でも、もう先は無いよね』と思っている所への、映画「クワイエット・プレイス DAY1」の予告編だった訳です。

※下記は予告編(1分40秒の動画です)。

完全にスルーするつもりでいたのですが、私の友人(注1)がSNSで えらく褒めていたので、重い腰を上げて鑑賞してみれば「なんだコレ!かなり良いではないか!」

今回の「~DAY1」は前作までと異なり、アボット一家とは無関係の話で、マンハッタンで ” 異変の初日 ” を迎えた女性 ” サミラ ” を主人公に据えた物語。
彼女は末期ガンの患者で、郊外のホスピスからレクレーションの一環でマンハッタンに出かけた時に ” 異変 ” に遭遇する訳です。

そこから先は ほとんどセリフもない中で、 ” 避難 ” とは異なる ” 彼女の行動 ” が描かれ、「 ” そんな行動をとる動機 ” の開示、決着」が『主な話の流れ』になるのですが、それに彩を添えるのが、途中から同行するエリック青年。

彼は物語の中盤に、浸水した地下から ” 溺れた姿 ” で登場して、当初はサミラが話しかけても、いまいちリアクションが薄い ” 不審人物 ” (笑)。
そんな彼が、まるで ” 迷子の子犬 ” の様にサミラの後をついてきます。
{この段階でのエリックは、サミラの飼い猫 ” フロド ” と対称的な存在と言えますし、うがった見方をすれば「水面から現れる(=羊水から現れる)」つまり、 ” 生まれたばかりの赤ちゃん ” や ” 幼児 ” の様にも見えます。}

そんな二人が、サミラにとって馴染み深い ” とある中継地点 ” にて、雷雨で音が かき消される事を利用して、会話によるコミュニケーションをとり、ようやく お互いの身の上話を手短に交わします。
そして、サミラに促されて ” サミラが書いた詩 ” を読んで、目が輝きだすエリック。
{これも うがった見方をすると、今まで立志栄達の為の ” 実務的な勉学 ” を重ねてきたエリックが、初めて ” 詩 ” に感動する(=芸術に感動する)と同時に、サミラの生き様に心動かされる…という、最悪な状況で人生最良の ” 気づき ” を得た瞬間(=新たな人生を歩み出す瞬間)の様にも見えます。}

その後のエリックは、時にサミラを助け、時にサミラに助けられながら、目的地へ向かうサミラと同行する訳ですが、エリックが変に ” マチズモ(男性的)なバイアス ” をかける訳でもなく、二人が ” 恋愛関係 ” になる訳でもなく、あくまでも ” 対等な関係 ” なのは、とてもすがすがしく映りましたし、目的地で見せる彼の行動(気遣い)は「いい奴!」の見本!

そんな ” エリック ” という存在は、ともすれば「スムーズにお話を転がすためのご都合キャラ」になりかねない所ですが、最悪な状況で人生最良の ” 気づき ” を得た瞬間が描かれている為か、そんな事があまり気にならずに鑑賞できました。

そんな ” 心の旅路 ” を丁寧に描いた映画「クワイエット・プレイス DAY1」。僭越ながら、鑑賞をおすすめ致します。

では、今週の締めの吃音短歌(注3)を…

こわばって しゃべれぬつらさ 持ち帰り 言いたい事は その場に消えた

※まぁ最近は、伸音(音が間延びして思った所で区切れない症状)が多いかな…そういえば、伸音に関する吃音短歌は書いてないなぁ…今後の課題か…

【注釈】

注1)私の友人

TBSラジオ「アフター6ジャンクション2(注2)」の ” 名物リスナー ” の一人、 ” 紙○○○○○○○さん ” の事だとは言ってませんよ(笑)

注2)アフター6ジャンクション2

TBSラジオで月~木曜日の22時~23時55分に放送されている「カルチャー・キュレーション番組」略称は「アトロク2」。

注3)吃音短歌

筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注4)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。

注4)吃音(きつおん)

かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。


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