金田アツ子|真正ラベンダーとニガヨモギ
Text|KIRI to RIBBON
春のモーヴ街の散策を楽しみながら、修道院の廻廊を抜けて、馨しい花々が格別な丁寧さで育てられている「金田アツ子の温室」に着きました。菫、勿忘草——こじんまりとしたガラス張りの温室に、ひっそりと、そして気高く、可憐な春の花々が咲いています。
密やかな佇まいを邪魔しないように、花々の息遣いに心を寄せながら、ゆっくり見て回ります。——ふと、どこからともなく、ハーバルな芳香が漂ってきました。香りを追って歩みを進めると、奥の方に、ちいさな薬草園が設えてあります。学名ラベルが貼られた植木鉢には美しいグリーンの葉が繁り、菫色の花々と心地よいコントラストを描いていました。
薬草園のすぐ横には、半地下へ降りる小さな階段がありました。ひんやりとした空気を感じながら降りた小部屋の棚一面に並ぶ、たくさんの薬草壜——そこは、収穫された薬草を乾燥させ、調合・熟成するポプリ室でした。
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モーヴ街・9番地「モダン・モーヴ・フラッパー」内に新しくオープンした、「架空のアブサン酒」を売るお店《Du Vert au Violet》。
「架空のアブサン酒」とは、リキュールに様々な薬草が調合されているように「文学・アート・モードを調合したコンセプト作品」のこと。
このほど、訳詩・絵画・ポプリを調合した《架空のアブサン酒〜Paper Sachet》シリーズが発売されました。そのシリーズのラベルとカードに、金田アツ子さまの馨しい植物画が配されています。
上写真|ヴァージニア・ウルフ「BLUE|青色」を題材にしたPaper Sachet
上写真|ルネ・ヴィヴィアン「VERT|緑色」を題材にしたPaper Sachet
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ポプリに調合された薬草を描いた植物画をご紹介いたします
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真正ラベンダー、矢車菊、丁子(クローブ)が伸びやかに繁る一作。アツ子さまがこれまで数多描いてきた可憐な花々とは少し異なる鬱蒼の趣きで佇んでいます。
清涼な真正ラベンダー、シパイシーな丁子が香り立つかのよう。青菫色の矢車菊が健やかな彩りを誇っています。細やかに描かれた葉々のグリーンの階調が花蕾をいっそう馨しく引き立てています。
額装された植物画はアンティークの薬草標本の雰囲気。ミニ額より大きめの存在感ある一作は、壁掛けはもちろん、ガラスケースに入れて標本風を演出するのも素敵ですね。
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本作品のみ非売品となります
頽廃のアブサン酒の原料であるニガヨモギがひときわ印象的な一作。ニガヨモギの鬱蒼の奥から真正ラベンダーが覗き、周囲にはジンの香り付けで知られるジュニパーベリーの実がリズミカルに舞っています。
精緻な葉振りが見事なニガヨモギの陰影からはそこはかとなく頽廃のムードが漂い、アブサン酒の魅惑を讃えているかのよう。
香りの饗宴はジュニパーベリーが並んだような額縁で飾って。
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植物を愛するアツ子さまの筆により香り立つ薬草園の風景。「架空のアブサン酒」と共に、ぜひゆっくりご高覧頂けましたら幸いです。
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作家名|金田アツ子
作品名|Lavandula angustifolia
アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|15cm×8.5cm
額込みサイズ|24.5cm×18cm×1.5cm
制作年|2021年(新作)
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作家名|金田アツ子
作品名|Artemisia absinthim *非売品
アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|14cm×9.5cm
額込みサイズ|17cm×14.5cm×1.5cm
制作年|2021年(新作)
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