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金田アツ子|舞踏会、少女、その美しい存在証明

 賑やかな話し声、少しずつ大きくなるワルツの調べ。
 きらびやかな喧噪が近づくにつれ、少女の胸に咲く菫の花は、期待に震えはじめる――

 金田アツ子様による本展のメインヴィジュアル《舞踏会の手帖 菫》は、舞踏会で踊った方や、その曲などを書き留めておくための小さな手帖をモチーフとしています。

《菫色の実験室vol.8〜菫色 × 舞踏会》
メインヴィジュアル

 その中身は、期待と希望で波打つ、真っ白なページでしょうか。
 それとも、インクのさざ波が寄せる、記憶の浜辺でしょうか。

 菫色の小部屋は、たくさんの出会いや出来事が交錯する特別な場所。
 菫の花で彩られた小さな手帖は、きっとすぐに楽しい記録でいっぱいになってしまうことでしょう。

 《憧れの思い出》と題された作品では、ひとりの少女が、先ほどの手帖を手にしています。

 そのまなざしは、手帖に記された甘美な思い出を振り返っているためでしょうか、夢見るように遠くを見つめています。

 わたしたちは、彼女が行った舞踏会の様子を直接見ることはできないけれど、その表情を見れば、忘れがたい一夜がたしかに在ったのだと知ることができるのです。

 そして、薔薇と菫の植物画は、まるで移り変わる少女の心をそのまま額縁の中にとどめたよう。いうならば、「少女の心の博物画」。

 それぞれがかけがえのない、大事な、唯一無二のもの。

 こうして少女の想いは、その一瞬間を花のかたちとして、永久に残ってゆくのです。

 金田アツ子様による美しい絵画の数々は、いつかどこかの舞踏会で踊った、少女たちの存在証明でもあるように思えます。

金田アツ子|画家 →Twitter
絵を描いて、個展やグループ展などで時々発表しています。静かな喫茶店とピアノの音が好きです。

嶋田青磁|詩人・フランス文学修士 →note
19世紀末の頽廃・優美さを求め、研究の傍ら詩・小説などの執筆活動中。専門はピエール・ルイスと19世紀フランス文学における身体論。オンライン上のストリート「モーヴ街」では、図書館「モーヴ・アブサン・ブック・クラブ」にて司書をつとめている。



作家名|金田アツ子
作品名|舞踏会の手帖 菫

アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|10.7cm×7.4cm
額込みサイズ|14.8cm×11.2cm
制作年|2023年(新作)

作家名|金田アツ子
作品名|憧れの思い出

油彩・シナベニヤパネル
作品サイズ|19.7cm×13.4cm
額込みサイズ|25.8cm×19.5cm
制作年|2023年(新作)

作家名|金田アツ子
作品名|薔薇(モーヴ色)

アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|7.6cm×5.7cm
額込みサイズ|13.6cm×11.7cm
制作年|2023年(新作)

作家名|金田アツ子
作品名|薔薇(夕焼け色)

アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|7.4cm×5.7cm
額込みサイズ|13.4cm×10.7cm
制作年|2023年(新作)

作家名|金田アツ子
作品名|匂菫

アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|6.5cm×5cm
額込みサイズ|12.5cm×11cm
制作年|2023年(新作)

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