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【脚本】前編 あなたの足跡

登場人物
大村 陸     (21) 大学生
山本 みやび(22) 大村の同級生
光木 礼司    (21) 大村の同級生
志方 裕  (22) 大村の同級生

本編

1. アパート・外観(夜)
   二階建ての木造アパート。
   101号室の扉の上、中央に大村のネームプレート

2. 大村の部屋(夜)
   机の上に置かれた青いハンカチを見つめニヤける大村陸(21)。
   ハンカチを手にとり、匂いを嗅ぐ。

3.(回想)大学・正門・外観
   門に『谷頭大学』のプレート。
   周囲は大粒の雨が降っている。

4. (回想)大学構内
   びしょ濡れで中に入ってくる大村。
   周囲は、怪訝そう無表情で大村をみている。
   そこに山本みやび(22)が近寄ってくる。
みやび「これ使う?」
大村「えっ…あ…はい」
   青いハンカチを受け取る大村
大村「あっあっその…ありがとう」
みやび「授業遅れるよ」
   みやびが教室に向かって歩いていく。

5. 大村の部屋(夜)
   青いハンカつを机の上に置き、椅子に座る。
   日記を開き、ペンを取り、書き始める。
大村(N)「大村陸物語第471話(6月16日(水))今日は、山本みやびに 授業中、手を振られた。そのことが僕の物語に彼女が大きな役割を持って いることを予感させる」
   文を書きながら、笑みが溢れる大村。
大村(N)「彼女からハンカチを借りて半年も経っているにも関わらず未だ に匂いが興奮が残っている。これはきっと運命なのだ」
   大村は、そっと日記を閉じ、ベッドに入る。

6. 大学・食堂
   食券とトレイを持ち、並ぶ大村。そこにみやびが背後から現れる。
みやび「陸くん?一人?」
大村「うん?まあ」
   大村は、食堂の入り口に目をやる。
みやび「じゃあ一緒に食べようよ」
   大村が少し考える。
   次第に顔がニヤける。
   ×    ×   ×
   光木礼二(21)が立ち尽くしている。
   目の前には、大村とみやびが楽しそうに食事をしている姿。
   光木の手には、赤いハンカチを持っている。

7. 大学・教室
   教授がダラダラした声で説明をしている。
   机に座る学生たちは、皆、寝ている。
   後方の席で楽しげに話す大村とみやび。
   端の席でそれを睨みつける光木。
   大村のスマホが振動する。
   スマホのメッセージを見る。
   そこには『お前には失望した』という光木からのメッセージ
   表情が不安げに変わる大村
大村「(小声)どうしよう?」
   みやびが大村の横腹をつつく。びくっとする大村。
   みやびがその姿を見て笑顔になる。
   大村も次第に笑顔に変わっていく。

8. 大村の部屋(夜)
   大村ドアを開け、一目散にハンカチを手にとり、匂いを嗅ぐ。
   次第にニヤける。机に座り、日記を開き、ペンを取る。

9. 歩道(夜)
   赤信号で待つ光木。
   目の前には、志方裕(22)と仲良く話すみやび。
   信号が青になり、二人が光木の方へ近づく。
   思わず人混みの中に隠れる光木。
   二人は、気づかず横を通り過ぎる。

10. 大学の教室
   大村がぽかんと口を開けて立っている。
   目の前には、仲睦まじく話すみやびと志方の姿。
   チャイムが鳴り、周囲の学生たちが席を立ち上がっていく。
   ショックで座りこむ大村。
   志方とみやびが大村の方に向かって歩いていく。
   挙動不審な動きをする大村。
   みやびと目が合う。
大村「あ…あの」
   みやびが一瞬振り向くも、志方の方に顔を向け通り過ぎていく。
   大村の肩を叩く光木。
   大村が顔を逸らす。
光木「俺たちは、あの女に騙されていたんだよ」
大村「嘘だ。絶対にあり得ない」
光木「レストランの水ってあるだろ」
大村「はっなんだよ。急に」
光木「あいつにとっては俺たちは、それだよ
 うまい料理でもまずい料理でもない。
 ただ、口の中に残る味を洗い流すだけで
 しかない。目立つことなく、忘れ去ら
 れる…それが俺たちさ」
大村「そんなはずない。みやびちゃんは、ずっと
 俺のことを見ていた。俺のことが気になっていたから」
光木「これのことか?」
   光木がハンカチを取り出す。
大村「なんでそれ?」
光木「やっぱりお前も…」
大村「嘘だ。絶対嘘だ。」
光木「そう思えばいいさ。ただハマればハマ
 るほど抜け出せなくなるぞ。それだけは、
 覚えておけ」
   光木が離れていく。

11. 大学・体育館
   ダンスをするみやび。音楽が終了し、
   決めポーズをする。端においたタオル
   を手に取り、スマホを見る。そこには
   大量の着信履歴。驚いて相手を見る。
   そこには、大量の光木の名前が並んでいる。
   光木からメールが届く。
   『俺じゃダメなのかな』

12. 大村の部屋(夜)
   日記を書き始める大村。ペンを置き、
   ハンカチを見る。大きくため息をつく。
   大村は、再びペンを取り、日記に一言だけ書く。
大村(N)「あなたにとって僕は、何者でしたか?
 一瞬でも幸せにしてくれてありがとう」
   大村は、部屋の明かりを消す。

後編に続く。

今日から、普段行っている脚本執筆の内容も発信していきたいと思います。

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