恋なんていらない、なんて言わない(モノローグドラマ005)
「恋なんていらない、なんて言わない」
■人物
青年
■本編
青年のMO「愛だとか恋だとか、友情だとか、もったいぶった抽象的な言葉の表現って、胡散臭くて中身がないって心底思っていた」
青年のMO「でも。その疎ましく思う感情が、実は、本当の愛だとか恋だとか友情だとかを全く知らないって理由で発生しているんじゃないか、って、思ったら、急に胸が苦しくなった」
青年のMO「愛だとか恋だとか友情だとか、全てを知らないでいる。そのことの恥ずかしさ、もどかしさの裏返しみたいなものを僕はずっと抱えているだけなんじゃないかって……」
青年のMO「じゃあ、例えば。本当の恋を知ったらどうなるんだろう……。関係が壊れるとか、ややこしくなるとか、複雑になるとか、耐えられなくなるとか、いろんな言い回しがあるけれど。本気で好きになったら、そんなこと、きっとどうでもよくなるのかな。自分の心に溢れる感情や想いを、止められないってどんなだろう……」
青年のMO「そういう点では、僕は、残念ながら、まだ本当の恋さえしたことがない。たぶん、このまま本当の恋も知らずに、人生を終えることになるのかもしれない」
青年のMO「昔はそれでもいいって思ってた。だけど。最近はちょっと違う。恋の一つもなかった人生。それはちょっぴり寂しいのではないかって、考えるようになった」
青年のMO「でも、どうやっらら、本当の恋ができるのか、僕にはさっぱりわからない」
青年のMO「つながりを求めていれば、いつか結びつく出会いがあるのだろうか。ふとしたきっかけから本当の恋は生まれるのだろうか。もうこの先に期待はできない気もするけれど、最初から諦めて行動しないことは意地を張っているだけの子供だ」
青年のMO「他者から距離を置いて、心を閉ざして、拒絶していては、愛も、恋も、友情さえも発生しようがないことはわかっている……つもりだ」
青年のMO「だから、とりあえず、僕は世界に向かって叫ぶことにした」
青年のMO「『恋なんていらないなんて、言わない』って」
(おしまい)
今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。