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坂口安吾と矢田津世子〜童貞安吾論〜

眼鏡をすると幻覚が薄くなる。
とはいえこの私、眼鏡をすると外見非常にフシンであり、それがやや気にならないでもない。

十五年ほどそれなりに極端なファッションをしてきたつもりだが、十年以上、職務質問に遭った事が無いのも、また、フシン事である。

最近、坂口安吾全集の15巻を読み始めたのだが、なんと、かの坂口安吾は28歳まで童貞だったという。

その告白を読み、私の中での坂口安吾と矢田津世子の悲恋というものが、
めっきり安吾の片思いだったのではないかという説に首をもたげ始めた。

坂口安吾という作家は、
27歳時、同じく作家である矢田津世子と出会い、熱烈な恋をした事で有名なのだが、
この、片思い説、というのが、
文学史における陰謀論のようなヨタ話になっており、極めて興味深い。

安吾の自伝的小説、27歳というものや31歳というものには、矢田津世子との恋愛が主眼として書かれているが、
ほとんどが安吾の主観である。

この矢田津世子という作家、まず出会った時点で出版界の有名な人の愛人?である。

さらに重ねて言えば、矢田津世子さんには、なぜ結婚してくれないのでしょう、などの類の発言が見られるが、これワンチャンやり手である。
童貞の安吾は恋愛やり手の津世子に見事に踊らされていた可能性がある。

接吻したなどの文も見られるが、
まあこれは事実だろうとして 何故ならサスガニ偽れまい これも安吾が童貞だったという事実を勘案すると、さらにこの矢田津世子のやり手ぶりのように感じさせられてしまい、

極論、安吾の独り相撲だった説は充分ありうると、私は判断する。

矢田津世子側の文章を読んだことが無いので、童貞安吾の肩を持つ形の文章と相成ったが、それはそれで研究途上。
許して頂きたい。

安吾は心理通極まりない素晴らしい眼目をもって世の通底音を読み取り、文学にしたが、
こと、自分について綴った自伝タイプの作品に関すると、一抹のナルシスムを感じずにはおれない。
それは作家あるある・ダンディぶる、であり、私もまた作家あるある・ダンディぶる、を発揮しているため、一語も口を挟むことは出来ない。

愉快なのが、
安吾27のとき、安吾に熱烈に恋してきた17の娘の事を徹底的に処女だ、処女だ、と
チョット下に見ている癖に、
その実安吾先生27歳はまだ童貞である、
という点である。

偉大な作家先生のこのチッポケなセコさを見つけたるに、私は、尚更、この坂口安吾先生を愛してやまないものである。

矢田津世子と坂口安吾の恋愛は、
文学史に残るロマンス…
であり珍事件なので、
お暇な時に是非調べて頂きたい。

以上今日は敬愛する坂口安吾先生についての文章でした。

梶本

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