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一次産業の声はもう届…かない?

国民の食料を確保することは、日常生活の豊かさにおいても、経済安全保障
においても、大切なこと。だから、農業生産は国の政策によって、保護、育成されてきたし、そしてその対価としての「票田」とされる有権者の取りまとめによって、安定と均衡が保たれてきたとも言える。
 でも、もしかしたら、その関係ももう終わりになるのかもしれない…。

1,一次産業と政治との関わり

 食料自給率なんかが、国の一次産業の自律性や他国依存しないで済む主権みたいなものを代表するものとして、指標にされてきたけれど、貿易と経済が世界で複雑に入り組む中で、「自国だけ」での調達だけを見ることが果たして有効か、という声もいまでは生まれつつある。

農業生産が主となる国では、輸出して外貨を稼がなければ、その他の産業は立ち行かなくなるし、いまや、「単独で国を成り立たせること」はこの地球上では困難となっている。お互いが、それぞれの産業の特性や外貨の稼ぐ手段として経済活動をし、国を成り立たせているのが、現在の地球における各国である。

とはいえ、爆発的に増え続ける人口と、地球温暖化の影響とされる砂漠化の進展で、食料生産が可能な農地は地球上からどんどん減少しているし、飲水だけにとどまらず、農業生産に必要な水資源についても、将来、国を超えた奪い合いになるとの懸念も生まれつつある。

よって、国際間での取り決めや調停は、年を負うごとに必要性と存在感を増してきており、現在では、漁業における漁獲高は国際問題に発展しているし、いまやウクライナ戦争を通して、小麦の供給に世界的な懸念も生まれ、いよいよ陸上の生産物においても、国際間での協議や調整が求められる時代に入ろうとしている。

そういうわけで、一次産業は政治となるべくダイレクトな関係性があることが、自国生産や農業生産者の生活や事業としての持続性に大切であるし、またその声を政治に届けられることが、産業や地域を守る上でも重要な役割を果たしてきたと言える。それが「票田」と言われる所以である。

2、飲食の団体ができた

そんな一次産業の重要性は理解しながらも、このコロナ禍において、人との接触を避けたり、換気の悪い環境をなるべく作らない、つまり「3密」を避けるということで、飲食店の多くは営業自粛、短縮営業を長らく強いられてきた。もう2年にもなる。

でも、飲食店の多くは中小零細であり、個人事業主の集まりであり、また、チェーン店という企業体であっても、横のつながりが弱く、こうした自粛要請等に伴う、事業のリスクや負担に応じた補償や代替方法について、政治に声を届けることができなかった。

その反省もあり、「団体」が新たに設立されることになった。
それがこちら

設立記念パーティーには、岸田首相をはじめ、政府与党からも多数の議員が参加。東京都の小池都知事も駆けつけるなど、団体の存在感を強く示すものとなった。

飲食店の従事者数は2020年10月で398万人(総務省)。コロナ禍前は420万人前後で推移していた。一方で、農業の従事者は、152万人(2020年農業センサス)であり、倍以上の「有権者数」を飲食業界は有している。

この「従事者数」と、「団体の設立」は、食に関する産業全体における政治側の姿勢が変わった、と見たほうがいいと思っている。

それは、減り続ける農業での「票田」に頼るよりも、雇用や付加価値額においても規模も成長も伸びしろもある「飲食業界」のほうが、今後の政治基盤としても有益とする考えが起こりつつあるのではないか、という仮説である。

3、国の財政破綻はカウントダウン

この国の財政状況は、将来的に厳しいものがある。人口は減り、法人税収も減る中で、社会保障費だけは伸び続ける。少子高齢化社会で、それは加速をつけていくことは目に見えている。

いますぐ、とは言わぬとも、すべての地方を、今まで通り、手厚い地方交付金で賄うということは、難しいことだろう。そして、高度経済期以降に作った全国各地のインフラは、更新時期を迎える。

どうやって、多額の費用を捻出するか。縮小する社会を描きながら、維持する方法を模索しなければならない。

もちろん、地方の産業の中心は一次産業であることは変わりがない。でも、それが高齢化、耕作放棄地の増大、後継者不足によって、どんどん生産量が落ち込んでいったら…その先の農業がどうなるかは想像がつくことだろう。

自国の農業が大切といいつつも、今、目の前の食を確保するためなら、きっと輸入という手段に頼る政策を打つことになるだろう。そうしたら、ますます「国産」という農作物は希少なものとなり、そして、個別は別として市場全体としての産業的魅力は衰退していくことだろう。
(それがいいとは言っていないが…)

政治は、風を読む。だから、それは時代と勢いに強く影響される。もし、この流れを変えたければ、風を起こすしかない。

個々の農家同士で争っている場合ではない。農業の手法や売り方で区別、差別している場合じゃない。産業そのものが立ち行かなくなるスタートラインが、いま起きているかもしれない…と想像することが、大切だと思う。




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