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日本ユニセフ協会の「子どもの権利とスポーツの原則」を知っていますか?

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こんにちは。いつもコラムをご覧いただきありがとうございます。S.C.P. Japan共同代表の野口です。

2020年6月にユニセフから「子どもの権利とスポーツの原則」が発表されたことはご存知ですか?

子どもの権利条約

ユニセフは1989年の国連総会で採択された、「子どもの権利条約」を1990年に発効し、日本も1994年に批准しています。子どもの権利は大きく分けて4つあります。①生きる権利、②育つ権利、③守られる権利、④参加する権利。

全ての子どもの命は守られ、持って生まれた能力を十分に伸ばしながら成長する権利を子どもたちは持っています。子どもに対して行われることは、「その子ども」にとって最も良いことが選択されるべきであり、如何なる子どもは差別されることがなく、自由に自分自身を表現することが保証されなければならないと書かれています。また、ここでの子どもとは、18歳未満の全ての者を指します。(画像からユニセフ協会さんのHPをご覧いただけます。)

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2019年には、「子どもの権利条約」を条項別にピクトグラムにして、わかりやすくデザインされたポスターも発表されているようですので、是非ご覧ください。(全文はこちら

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子どもの権利とスポーツの原則

日本ユニセフ協会が発表した「子どもの権利とスポーツの原則」は、この「子どもの権利条約」に即すもので、子どもが持つ「遊ぶ」権利にスポーツが該当しているために、整備されました。

こちらの、原則は大きく4つのカテゴリーに分かれていますので、1つずつ見ていきます。

①スポーツ団体やスポーツ指導者への期待
まずスポーツ団体や指導者が、子どもの権利とは何なのか?どういう状態が子どもの権利を守るということになるのか?を理解して、行動にコミットすることを促しています。また、子どもは、学校、家族、習い事、友人との交流といった、いろいろなバランスの中で成長していくため、子どもからスポーツ以外の安らぎの場を奪わないことを求めています。また、スポーツ現場における子どもの安全の確保、暴力の撤廃、負荷のかかりすぎる練習が起因する健康被害への警笛なども記されています。さらに、子どもが被害にあわないように、ガバナンスの整備や、子どもの安全を守りながら暴力被害を通報できるシステムの構築などがスポーツ団体に求められています。

②スポーツ団体を支援する企業、組織への期待
スポーツ団体を支援する企業・組織は、資金提供や支援を決定する際には、子どもの権利を守ることにコミットしているスポーツ団体を選定基準にするように期待されています。また、支援企業や組織から、スポーツ団体に暴力撤廃に関して、働きかけを行う必要性が記されています。

余談ですが、開発途上国で、地域課題の解決にスポーツを活用しているNGO団体などは、チャイルドセーフガーディングポリシーを有し、団体スタッフが子どもへの暴力防止の研修を受けていることが欧米諸国から助成金を受ける際の基準になっていることが多いです。そのため、日本よりも子どもの権利について意識が高く、暴力被害を報告するシステムも整備されていることがあります。

③成人アスリートへの期待
成人アスリートは、指導者からのプレッシャーやスポーツ団体からの重圧によって、なかなか声を上げられない子どもたちの変わりに声をあげることが期待されています。また、そういった暴力が起こる環境を変えていくために、スポーツ団体や子どもたちとの対話を重ねていく役割を求められています。

④子どもの保護者への期待
そして、最後に保護者は、子どものバランスの取れた成長環境に責任を持つとともに、スポーツ団体における問題解決をサポートし、スポーツ関係者と対話を重ねていくことを期待されています。

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スポーツ界における暴力被害は身近にある

私は、子どもの時、「子どもの権利条約」があることを知りませんでした。子どもとして、私が持っている権利を知りませんでした。果たして、私の周りにいた大人たちは、どれだけ理解していたのだろう。そう考えると、もしかしたら、周りの大人たちも知る機会がなかったのかもしれないと思うことがあります。

幸いなことに、私は、暴力を受けたという認識を持つことなく、引退することができました。しかし、自分の身近なチームメイトや仲間が苦しんでいた記憶は鮮明に覚えています。それは、殴る、蹴るの身体的な暴力ではありませんでしたが、大勢の前で怒鳴られ恐怖ですくむ姿、何をしても怒られ自尊心が保てなくなる姿、自分のミスでチーム全員が罰を受けることを申し訳ないと思う姿などです。チームをまとめる立場を任された際には、指導者の考えを汲み、仲間を励ますことで、少なからず、そんな暴力的な環境の肯定に加担していたのだなと、自分を思い返すと情けなくなります。でも一方で、私にもチームをまとめるという立場が与えられ、チームの構造に組み込まれ、チームを成立させるために、それ以外の選択肢を持てなかったのだとも、今なら分かります。

日本のスポーツ界における子どもへの暴力被害は、目を逸らすことができないほどひどい現状です。正確な大規模調査がなされていなかったことが原因で、これまで私達の耳に届きませんでした。

7月20日(月)14時より、ヒューマンライツウォッチが新調査報告書「『数えきれないほど叩かれて』:日本のスポーツにおける子どもの虐待」(全57頁)」の発表記者会見をします。決して目を逸らすことのできない、日本のスポーツ界の身体的、精神的、性的暴力の実態を知ることができると思いますので、ご関心ある方は下記ウェビナーのリンクから視聴することができます。

暴力と決めるのは被害者

暴力とは、その行為の意味付けにより、それが暴力なのか、暴力ではないのかが決まります。同じ「殴る」という行為でも、ボクシングの試合で相手を殴る行為は、「暴力」という意味付けはされません。同じ行為でも、加害者には「指導」、被害者には「暴力」と意味付けされることがあります。被害者の視点で行為を意味付けなければ、そもそも「暴力」なんてものは存在しなくなります。(加藤修一著「はじめてのジェンダー論:第9章<被害者>の視点と<加害者>の視点」参照)

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