W杯全32カ国紹介③ GROUP B

イングランド

サッカーの生まれた国として知られるイギリスは特権として、四つの地方であるイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドのそれぞれがワールドカップ予選に出場することが許されている。

その中でも、常に実力で頂点に立ってきたイングランドは選手層では今大会№1といっても過言ではない。

エースとしてイングランドをけん引してきたハリー・ケイン(トッテナム)と筆頭に、19歳のベリンガム(ドルトムント)や22歳のフォーデン(マンチェスター・シティ)などこの先数年のサッカー界を引っ張る若手たちが台頭し、穴のない戦力になった。

しかし、指揮官サウスゲイトの手腕には疑惑の目が向いている。前回大会では4位、EURO2020では準優勝と好成績を収めてきたがあと一歩のところで勝ちきれない部分に一部のファンからは不満が漏れている。
このままでは宝の持ち腐れとなりかねないだけにサウスゲイト率いるイングランドは真価を発揮できるか注目だ。

また、毎回、世界最高峰のタレントをそろえ、優勝候補にも挙げられるイングランドだが、意外にも優勝は1966年の一度のみ。
それも、決勝での疑惑の判定によってもたらされたものだった。今大会こそは正真正銘の世界一に輝けるか。

注目選手 ハリー・ケイン(トッテナム)

“ハリー・ケイン(トッテナム)”

前線でのポストプレーやヘディングのほか、エリア外からのミドルシュートも得意とする上、ドリブルやクロスで味方の攻撃をサポートすることもできる万能型FW。

イングランド代表のエース兼キャプテンとして欧州予選では8試合12得点と持ち前の得点力を存分に発揮し、母国を本選出場に導いた。
前回大会では6得点で得点王となったが、母国を決勝には導けず。

今大会では抜群の得点力を武器に高貴な母国の最大の鉾として、騎士となり、チームを優勝に導き、自身のキャリア初のタイトルを狙う。

イラン

アジアでは並外れた体格と身体能力でFIFAランクでは日本を上回って20位となっているイランは、アジア最速で本選出場を決めた。

スコチッチ監督のもと、本選出場を決めたイラン代表であったが、直前になってスコチッチ監督を電撃解任。その後任として監督に就任したのは過去2度のイラン代表監督の経験があるカルロス・ケイロス。
かつてポルトガル代表や名古屋グランパスを指揮した経験豊富な名将に白羽の矢が立った。

また、イランの最大のストロングポイントは攻撃陣。
エース、アズムン(レヴァークーゼン)と前線でコンビを組むタレミ(ポルト)は今季クラブで絶好調。数年前まで代表選での最多得点の記録を持っていた同国の英雄アリ・ダレイの影を追う。
彼らが先頭に立って、イラン国内でカリスマ的人気を誇る監督のもと、初のベスト16を狙う。

注目選手 サルダル・アズムン(レヴァークーゼン)

“サルダル・アズムン(レヴァークーゼン)”

「イランのメッシ」とも呼ばれ、神童として若くから注目を浴びたアズムンは19歳で代表デビュー。流星のような鮮やかさでファンを魅了する。

今大会の予選では10得点でチーム得点王となり、母国をアジア最速での本選出場に導いた。
昨年冬にはドイツの名門レヴァークーゼンにステップアップを果たし、順風満帆とも思われるアズムンだが、実は悪童としても知られ、2019年のアジアカップ準決勝では日本代表柴崎を相手にラフプレーでイエローカードをもらったこともあった。

また、反政府デモにも参加して代表選出が危ぶまれたこともあったが、今大会は無事に選出された。
今大会では悪童としての側面を封印し、得点を量産できるか注目だ。
 

アメリカ

前回大会の出場を逃し、リベンジを誓うアメリカは欧州で活躍する若手が代表を引っ張る。

10番兼キャプテンのプリシッチ(チェルシー)を筆頭に、マクケニー(ユベントス)、デスト(ミラン)、ジョバンニ・レイナ(ドルトムント)など将来を嘱望される若きヒーローたちが中心となってかつて3位にもなったアメリカの復権を狙う。
そして彼らを支えるのは50人を超えるコーチ陣。アメフトのような大規模なチームとなっていて、攻撃コーチや守備コーチなど役割を細分されている。

また、オールドファンには魅力的な選手がアメリカには一人いる。ティモシー・ウェア(リール)である。
かつてPSGやミランで活躍し、バロンドールを受賞した「リベリアの怪人」ジョージ・ウェアの息子である。
現在、リベリアで大統領を務める父親とは違い、彼は出生地であるアメリカの国籍を選択した。

まだ世界的なスターにはなれていないが、父親から受け継いだのポテンシャルは常人離れしている。父の背中を追う未完の大器が今大会で一皮むけられるか注目である。

注目選手 クリスチャン・プリシッチ

“クリスチャン・プリシッチ(チェルシー)”

アメリカで生まれ育ったが、祖父がクロアチア種子院でクロアチア国籍も持つ彼は、16歳でドイツに渡ると、名門ドルトムントで頭角を現す。

現在はイングランドの強豪、チェルシーで蒼のユニフォームをまとい、皇帝のようにフィールドを支配する。
インサイドハーフや両サイドハーフなど複数の攻撃的なポジションでプレー出来るユーティリティー性と足元の技術が非常に高く、切れ味鋭いドリブルが魅力的。

キャプテンアメリカというアメコミヒーローの異名を冠した彼は代表で24歳ながら10番兼キャプテンと、国民からの絶大な信頼と期待がうかがえる。
予選では10試合5得点と、きっちりと仕事をこなした彼が本戦でも同様の活躍ができるのか注目が集まる。

ウェールズ

近年好成績を残しているウェールズは1958年大会以来2度目のワールドカップとなる。
ウクライナとのプレーオフを制してやってきたウェールズの執念と底力は計り知れない。

そんなチームのリーダーはギャレスベイル(ロサンゼルスFC)。どんなに難しい試合でも最後には英雄の一撃で敵を沈めてきた。
そんな近年のウェールズ代表を支えたギャレス・ベイルやラムジー(ニース)ら黄金世代はおそらく今大会でワールドカップは最後となる。

ブレナン・ジョンソン(ノッティンガム・フォレスト)、ネコ・ウィリアムズ(ノッティンガム・フォレスト)など若手との融合で、勝負強さを武器に世界中に衝撃を与えた2016年のベスト4となったEUROの再現を狙う。

また、ウェールズにはかつてマンチェスター・ユナイテッドで11番を背負ったライアン・ギグスという英雄がいた。彼は2018年からウェールズ代表を率いていたが、数々の女性トラブルによって今年6月に辞任した。

ワールドカップイヤーに激震が走ったウェールズだが、それを乗り越えてベスト16への切符を得られるか注目である。

注目選手 ギャレス・ベイル(ロサンゼルスFC)

“ギャレス・ベイル(ロサンゼルスFC)”

サッカーよりもゴルフ好きとして知られる彼は、神から与えられた特別な才能で魔法をかける。

その天賦の才は圧倒的で、もし彼がサッカーに対して真摯に向き合っていれば、メッシ(PSG)やクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)と肩を並べる選手になっていたのではないかと一部で噂されるほど。

レアルマドリー時代には、チームを5度の欧州王者に導いた。
今年6月にアメリカのロサンゼルスFCへと移籍し、第一線からは退いた彼だが、代表において彼の影響力はいまだ健在。

流れの中からだけでなく、フリーキックからも得点を奪える彼の力でウェールズ代表は混戦のグループBを勝ち抜けるか。
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?