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「 口笛の上手な白雪姫 」

夜、入浴剤を入れたお風呂に入りながら、この短編集を1つ読むという最近の楽しみがなくなってしまった。

1つ15分前後で読める短いお話にも関わらず、小川洋子さんの不思議な世界観に入ることができる素敵な短編集だった。

小川洋子さんのお話といえば、有名な「博士の愛した数式」と高校の現代文の教科書に載っていた「バックストローク」しか読んだことがなかったが、これをきっかけに小川洋子さん独特の世界観にはまりそう。

まず、この短編集は日常が舞台となっているはずなのにどれも非現実感がすごい。

周囲には理解してもらえず少しの孤独を感じながらも、ひっそりと確かに自分の領域を守りながら生きていくそれぞれのお話の主人公が少し羨ましく感じた。

そして読了後にはもの寂しくて不思議な感じと同時に優しい気持ちにもさせられる。まさに1日の締めくくりに読むのにぴったりな1冊だった。

小川洋子さんの作品でもこの短編集は狂気や毒といったものはあまり感じなかったので比較的誰にでも読みやすい作品だと思う。
(バックストロークは少し怖く感じた。)

ちなみに、特にお気に入りのお話は「亡き王女のための刺繍」と「一つの歌を分け合う」の2つだ。

「亡き王女のためのための刺繍」は、幼い頃の優しい思い出を追想しながら進んでいく物語全体の世界観が好き。今度は亡き王女のためのパヴァーヌを聴きながら読みたいなあ。

「一つの歌を分け合う」は、急逝した息子を、顔も似ていない年も離れたミュージカル俳優に重ね合わせる伯母のお話。この伯母について、最初は愛する息子を失って現実を見ることができていないんだなと単純に感じていたが、読み終えてもっと深い印象に変わった。号泣するほどの感動というわけではないが、静かに感動できるお話。

小川洋子さんの本、他にも「猫を抱いて象と泳ぐ」という本もこの本と一緒に古本屋で購入したからこっちも早く読みたい。

あと、最近「あとは切手を、一枚貼るだけ」という堀江敏幸さんとの共著の本も本屋で購入した。これも面白そう。

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