ニコチンネックレスの話
最近なんだか人気なのでニコチンネックレスについて語ることにする.人気が出始めたのはRAVELさんのツイートがバズったあたりからかな?一番最初に作ったver2のうちのひとつだったが,一番最初に作ったver2の子らの中で最も売れていなかったのがニコチンだったのに,この頃にわかに人気である.
トップ画像はver2.0のもので,いまはver2.1で作っているが,写真をきちんと撮るのが間に合っていない.微修正なのでほとんどの方は気にならないと思うが,早く撮り直さなければな〜と思いつつ,商品写真リストの最後に「こちらのパーツになる場合があります」とver2.1の写真を載せているだけである.ちなみにver2.1はこちら.ピリジン環の窒素に穴が開いているのがver2.0との違い.
ニコチンはタバコの葉に含まれるアルカロイドで,依存性がきわめて高く,依存してから脱するまでの期間は26年を要するとも言われる.タバコがニコチンを作るのは虫による食害を防ぐためで,タバコ以外にもナス科の他の植物(ジャガイモ・ナス・トマトなど)にもごく微量に含まれていたりする.
ニコチンは少量の摂取では精神刺激薬として作用するが,高用量では鎮静的に作用し,ネスビットのパラドックスとして知られる.また,代謝酵素CYPの発現を誘導するため,喫煙者はCYPによって代謝される薬の効きが悪くなることがあるので注意する必要がある.
よく誤解されるが,ニコチン自体に発癌性はなく(プロモーターかどうかは不明),ニコチンの代謝物であるニトロソアミンや,燃焼時に発生するタールに発癌性がある.小児のタバコ誤飲事故は非常に多く,従来はタバコ1本が致死量といわれてきたが,実際飲み込んだ場合は胃液の酸性のためにニコチンの溶出が悪く(15分で3%程度しか吸収されないという),1本程度では死なないどころか,胃洗浄も必要がない(経過観察でよい).しかし,すでに水に溶けたニコチンは非常に吸収が速く症状も重い.タバコ収穫作業労働者の間では「生葉タバコ病」と呼ばれる経皮吸収による急性中毒が時折発生することがある.
タバコの喫煙自体は,ヨーロッパの探検家が到達する前からアメリカ先住民によって行われており,マヤ文明の美術作品にも描かれている(マヤ人は宗教目的で用いていた).ゲーテは喫煙(者)が大嫌いだったらしく,「喫煙にはひどい無作法、無礼な非社会性がある。喫煙者はあたり一帯の空気を汚し、喫煙したくない、社交性のある、普通の優しい人間を窒息させる……」と手紙に書いている.喫煙と肺癌の関係性が注目されるようになったのは1900年代中頃である.WHOは,喫煙によってもたらされる世界経済へのコストは年間1兆ドルを超えるとする一方,2013-2014年のタバコ税の税収は約2690億ドルと推定している.
喫煙をやめるためのニコチンパッチやニコチンガムが開発されているが,それらの形態でも乱用(ニコチン依存症)が発生することがあり,依存・離脱をもたらす能力は喫煙・経口・経皮の順に弱くなる(ただし含有ニコチン量に左右される)という.
禁煙を行うには,いきなり喫煙を一切やめてしまうのではなく,徐々に減らしていくのが効果的である.唐突にやめると,特にヘビースモーカーだった人において,抑鬱などの離脱症状が生じることがあり大変危険なので,たとえば「最初は1日10本まで」と決める.そうしたらその10本だけを取り出しやすい場所に置き,残りは取り出すのが非常に困難・面倒な場所にしまう.それから日にちを置いて手元に置く本数をだんだんと減らしていく.
ちょうどきのうから超ヘビースモーカーのボスが禁煙を決意しだしたところだったので,タイムリーな作品紹介(?).ちなみに「漸減法」を伝える前は,彼はなんとかブラックコーヒー(カフェインも精神刺激薬)で乗り切ろうとしていた.涙ぐましい努力.
ヘビスモのみなさんにぜひ着けていただきたいニコチンネックレス,こちらから買えます!
lit.link/scientia