小説「大地に落ちる汐の思い出」(連載第3回)
兄は家の手伝いをしていたが、それより幼い私にも仕事が割り当てられるようになった。
まず兄と私の交代で、朝食の支度を任されるようになった。前の夜に炊飯器をセットし、朝に味噌汁を作る。ほとんどそれだけだった。目玉焼きを焼くという役目を任されたのはしばらく後になってからで、すべて大人ならばなんということのない仕事だった。当然、子供の私にはすべてが未知のもので、失敗も多かった。けれど、先生はどんなにしょっぱい味噌汁や消し炭の目玉焼きを見ても黙って食べるだけで、正しいやり方は教え