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Handful of Keys

「ハンドフル・オブ・キーズ Handful of Keys」はファッツ・ウォーラーが少なくとも1929年まで書いたストライド・ラグ。一応だがアンディ・ラザフが書いた歌詞があるのだが歌での録音/演奏は極めて少ない(というか聴いたことないんだけど録音あるのだろうか)。

ストライド・ピアノの必修曲

カッティング・コンテストやレント・パーティーにてしばしば演奏されたスタンダード。ファッツ・ウォーラーのソロ・ピアノの曲としてはもっとも印象深い曲の一つ。ジャイムズ・P・ジョンソンの「カロライナ・シャウト」やウィリー・ザ・ライオン・スミスの「フィンガー・バスター」と同じように「ハンドフル・オブ・キーズ 」はハーレムのストライド・ピアノ奏者にとっての必修の曲となった (Jasen & Jones, 2002, 115)。

録音

Fats Waller (NYC, March 1, 1929)
Fats Waller (Piano)
記念すべき初録音で金字塔。流れるような美しいメロディとリズム。イントロを聴いているとやはりジャイムズ・P・ジョンソン流のラグタイムの流れにも位置付けられるように思う。

Benny Goodman Quartet (LA. July 6, 1937)
Benny Goodman (Clarinet); Teddy Wilson (Piano); Lionel Hampton (Vibraphone); Gene Krupa (Drums)
ブロードキャストのトランスクリプション。ジーン・クルーパのドラムがとにかくかっこいい。バスドラなんかもう踏みっぱなしで、そこに乗ってくるテディ・ウィルソンのピアノとハンプトンのヴィブラフォン、そしてグッドマンのクラリネットがとんでもなく美しい。

Fats Waller (NYC, July 5, 1938)
Fats Waller (Piano)
ラジオのトランスクリプション。少し短い録音なんだけどテンポも速く楽しい。

Fats Waller (London, August 2, 1939)
Fats Waller (Piano)
ロンドンでの録音。速いところとゆくりなところのコントラストが美しい。少しクラシカルなかおりもする。

Ralph Sutton (Scheveningen, October 24, 1975)
Ralph Sutton (Piano)
ラルフ・サットンのダンサンブルな録音。少し録音が短いのだけど勢いがあり、かつ美しい。

Dick Wellstood (Dublin, February 2, 1977)
Dick Wellstood (Piano)
ディック・ウェルストゥッドの録音。ダブリンでの実況録音。足で取るリズムの音も生々しく、ソロも爆発的。鳥肌が立つ。

Dick Hyman (Santa Ana, CA, August 13, 1988 - December, 1988)
Dick Hyman (Piano)
巨匠ディック・ハイマンの録音。ファッツ・ウォーラーの録音にわりと忠実。ある人のブログにこの巨匠を「無名」「ビッグバンド専属」「演奏家として定評がある訳でもない」など書かれている。ビバップ史観で考えるとたしかに無名かもしれないが、トラッド・ジャズにおいては超有名人だし演奏家としては間違いなく素晴らしく、数々の名盤に参加している。

Ralph Sutton With Michael Silva (Amilly, France, November 27, 1988)
Ralph Sutton (Piano); Michael Silva (Drums)
ラルフ・サットンとマイケル・シルヴァのデュオ。これもまたかっこいい!サットンが口ずさみながら弾いているんだけどそんなところも非常によい。演奏が終わったあとの観客の熱狂もよい。

Ralph Sutton (Sydney, May 17, 1991)
Ralph Sutton (Piano)
なんといっても高音の音色が煌びやか。またルバートからテーマに流れるところなんて本当に美しい。それとコードの当て方も実に素晴らしい。

The Ruby Braff Quartet (NYC, September 12, 2001)
Ruby Braff (Cornet); Dick Hyman (Piano); Howard Alden (Guitar); Jake Hanna (Drums)
ルビー・ブラフの録音。高速の録音で全員の演奏がどれもが素晴らしい…。どこを聴いてもかっこいい。

Guillaume Nouaux  & The Stride Piano Kings (Paris, Released in 2020)
Luca Fliastro (Piano); Guillaume Nouaux (Drums)
現在のストライドの名手であるルカ・フリアストロとギヨーム・ヌオーの録音。これ生で見たいなー!!!ちなみにエメット・コーエンとこの曲を連弾しており、これも素晴らしい!

参考文献

Jasen, David A and Jones, Gene. (2002). Black bottom stomp: Eight masters of ragtime and early jazz. London: Routledge.


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