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Carolina Shout

「カロライナ・シャウト Carolina Shout」は1921年にジェイムズ・P・ジョンソンが作曲したジャズ・ナンバー。ジャズ史としても重要な曲の一つで、最初のソロ・ピアノのジャズの録音の一つ。とくにラグタイムから強く影響を受けた曲で、そうした意味でラグタイムからジャズへの移り変わりを楽しむことができる。日本語ではキャロライナ・シャウトとも表記される。

ハーレムの発展とともに、第一次世界大戦前の音楽家たちは徐々にニューヨークに移住するようになった。彼らが演奏したのはスコット・ジョプリンやトム・ターピンのような優雅なラグタイムではなかった。むしろ彼らの音楽は、リングシャウトとして知られる南部バプティストの教会ダンスのリズムも組み合わせた、より速いラグタイムだった (Waller & Calabrese 1977, p. xii)。まさにこの曲は、ラグタイムと南部のリズムが組み合わさった楽曲ということができる。

また、この曲はニューヨークの萌芽的ジャズ・シーンでは課題曲の一つだった。ニューヨークのカッティング・コンテストでは、この曲が頻繁に演奏され、ジェイムズPの教え子であったファッツ・ウォーラーをはじめ様々なピアニストがこの曲でしのぎを削っていた。カッティング・コンテストでは「ハーレム・ストラット Harlem Strut」もしばしば演奏された。こうしたコンテストを経て、初期のラグタイム・ジャズがストライド・ピアノを作り上げる基礎となった。

録音

James P Johnson (NYC October 18, 1921)
James P Johnson (Piano)
最初の録音。私はジェイムズ・P・ジョンソンがとても好きで、いろいろ聴いたあとにこの曲を聴くとまさにダンスをさせるピアノということがとてもわかるし、なにより気迫のある演奏が気持ち良い。

Fats Waller (Chicago May 13, 1941)
Fats Waller (Piano)
ジェイムズPの弟子ファッツ・ウォーラーの録音。オリジナルから20年後の録音。ジェイムズPよりもテンポが早くまた演奏も複雑になっている。これも素敵。

James P Johnson (NYC Aug 15, 1944)
James P. Johnson (Piano); Eddie Dougherty (Drums)
1944年のジェイムズPの録音。ドラムとのデュオでドライブ感がとてもある。繰り返しのフレーズがとてもファンキーでとんでもなくかっこいい!わたしがもっとも好きな録音の一つ。

Willie the Lion Smith & Jo Jones (New York, 6 Juin 1972)
Willie the Lion Smith (Piano); Jo Jones (Drums)
唸り声からはじまるウィリー・ザ・ライオン・スミスとジョー・ジョーンズの録音。ピアノとドラムのデュオとしてジェイムズPと比べてもおもしろい。こちらの方が勢いがある。ドラム・ソロとその後が聴きどころ。

Doug Riley (Tronto 2006)
Doug Riley (Piano)
トロントのドクター・ミュージックことダグ・ライリーの録音。強烈なストライドを楽しむことができ、またダンサンブルで素敵!

Andrew Oliver (London 2020)
Andrew Oliver (Piano)
ジェリー・ロール・モートンのプロジェクトやその他のバンドや客演でも引っ張りだこのアンドリュー・オリヴァーの録音。これも素晴らしいスウィングが聴ける。

参考文献

Waller, Maurice & Calabrese, Anthony. (2017). Fats Waller. Minneapolis: University of Minnesota Press.

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