【教職員対象アンケート結果】小学校高学年の教科担任制について
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【教職員対象アンケート結果】小学校高学年の教科担任制について

メガホン by School Voice Project

2022年度から、全国の小学校高学年(5、6年生)で本格導入されることが決まっている教科担任制。

義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について (報告)【 中央教育審議会での整理】には、導入の目的としては、授業の質の向上、小学校から中学校への円滑な接続、複数教員による多面的な児童理解、教師の負担軽減などが挙げられています。

指定校として先行導入した学校、校長裁量により開始された学校の事例などから、すでに実施のメリットも多く集まっている一方で、各学校の事情に合わせて弾力的に取り組んでいく必要があることも伺えます。

アンケートでは、これまでの学級担任制から体制や運用が大きく変化することに対しての不安や、働き方改革としての期待、中学校や高等学校の教員からの視点などさまざまな声が集まりました。

また、教科担任制を先行導入している学校の教員3名へインタビューを行い、導入後に実際に感じているメリット・デメリットの詳細をお聞きしました。

アンケートの概要

School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に、小学校高学年の教科担任制にについてアンケートを取りました。

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2021年10月23日(土)〜11月14日(日)
■実施方法:インターネット調査
■回答数 :40件

アンケート結果

【設問】来年度から導入される、小学校高学年における教科担任制についてあなたの意見を教えてください。

回答者全体の割合
回答者のうち、小学校教職員(28名)のみの割合

「よいと思う」「どちらかというとよいと思う」を選択した方の主な理由

※全回答の中から抜粋して掲載しています。

<教材研究に時間をかけられる>

担当教科が減れば教材研究にかける時間が多くなるから。学年全体を見ることができ、生徒指導でも有効だと思うから。(小学校)

教員の授業準備等の負担が減り、1つの授業への教材研究や準備に時間をかけることが出来る。結果として子ども達に質の高い授業を提供できる。ただし、現在の免許のままでは、苦手な(専門としていない)教科を指導しなければならない教員も出てくることが考えられるので、段階的導入や免許法の改定等が必要だと考える。(小学校)

<複数の教員で子どもたちを見ることができる>

学級担任制による担任1人の抱え込みに対して、複数の教員が1クラスの子どもたちを見ていくという中学校のような体制がとれることに期待している。しかし、小学校段階の子どもたちの発達段階から、学級担任の強みである学校生活という大きな枠組みでの見取りがしづらくなったり、教科担任の学級経営への意識が低いと、学級集団形成やみえにく子の見とりが難しくなってしまうのでは、という懸念もある。(小学校)

担任だけで抱えられないほど、実態が様々である。教科担任制で色々な教員が関わり、担任の負担を少なくしないと学校制度は破綻すると思う。(高等学校)

<教員の負担軽減>

小学校の担任の空き時間をこれまで平然と放置してきたことが、ようやく改善の報告に向かう端緒となります。週あたり、20時間程度が目指すべき時間数でしょう。(小学校/中学校)

教科数が多く、それぞれの教材の準備が大変だからいいと思います。(小学校)

<中学に向けての準備ができる>

中学に向けて、教科担任制の導入は早い段階がよいと思う。また、担任だけでは見きれない児童の様子を多くの目で見ることができる。担任が全教科を教えるのは負担が大きすぎる。(中学校)

中学生になるといきなり教科担任制にかわるので、見知った先生がいるなかで教科担任制を導入しておくと中学生になったときに感じるギャップが少なくなり、子どもにとって精神的な負担が減るのではと思ったからです。(中学校)

「心配・懸念が強い」「どちらかというと心配・懸念が強い」を選択した方の主な理由

<負担が増える>

教科担任制を進めようという論議は、働き方改革のためという目的で始まったはずだが、中学校教員に小学校で授業してもらうなどという情報も出てきている。全く現在の負担を理解されておらず、余計に負担が重くなる懸念がある。(小学校)

<人員確保が必要>

軒並み賛成ですが、そこまで小学校の教員は「その教科の専門性が高い」わけではないと思います。また、学年の担任の数、教科の時数で担当者の負担も変わるので、人員の確保は急務だと思います。(小学校)

教員の人数を増やして教科担任制を行うなら納得できますが、おそらく実質的には増えないまま教科担任制だけが始まると思われるからです。そのような状況でどのように教科担任制を実施するのか、全く不透明です。単なる交換授業レベルのことを「教科担任制」として扱われる可能性が非常に高いと思われます。(小学校)

<時間割組むのが大変>

1人が病休に入ったらできない。時間割を組むのがかなり大変。受け持つ教科によって大変さに偏りがでる。(小学校)

<全人的な教育ができるのか心配>

小学校の場合その教科内容を教えるだけが教師側の教えではない。国語の授業で活躍できなかった子を、他の授業で活躍させる配慮により、その子は自己存在感を得る。ということもあるのでは?教科別に先生が変わり子どもらを総合的に評価できるのだろうか?(小学校)

小学校段階での子どもの発達・学びは全人的なものであって欲しいです。子どもを教科の枠に区切られた複数教員の目で見るよりは、1日を通して1人の教員が総合的に把握することの方がそれを達成しやすいと考えます。(小学校)

<専門性やそのバランスへの懸念>

教科担任制にするのであれば人手が必要です。しかし、今いる教師で分担して、授業交換をするという案が出ていると聞きました。そもそも小学校には、あまり教科専門性のある人がいません。卒業した大学にもよりますが、たとえ専門性がある人がいたとしても、それがバランスよく配置されるわけではありません。実際、理科や音楽の専科がいる学校でも、たまたまそのときに配置されている教員の中から選んでいるので、押し付け合いのようになっている学校もあります。また、その専科がいる学校に長年勤めていると、専科をやる機会がなければ一度もその授業を持たないことになります。
教師は多忙です。新しいことが入ってきても、それを時間をかけて勉強する暇もありません。既存の教科に関しても、勤務校が研究で取り組んでいる教科を辛うじて研究のために取り組むだけです。その研究教科の指導案しか書いたことがないという人もいます。そんな状況で教科担任制が本当に実現するのか疑問です。(小学校)

<その他>

私は高校英語教員で、1年生のアンケートを取った時に「小学生の時から英語が苦手」という答えがあった。1年間小学校で働いた時も本当に英語の授業やJET(The Japan Exchange and Teaching Programme
)の対応に苦慮されていた。苦手な気持ちで英語を教えるよりも小学校の時から英語を好きになる教育をしてほしい。そのためには英語科を教科担任にする方がスムーズになると思っている。今、私は小学校の英語科で働きたい気持ちもある。そういった人が柔軟に教科担任として小学校で勤められるようになったらいいなと思っている。(高等学校)

【設問】小学校高学年における教科担任制のメリットはどのような点だと考えますか?

<専門性の高い授業>

担当教科が減り、教科研究に時間がかけられる。中、高の免許保持者は、専門性を活かすことができる。(小学校)

<複数の大人で見れる>

小学校の先生はクラスを1人で見ることが多いため、周りの先生と協働することが少なく、孤軍奮闘で精神的に追い詰められてしまったり、「学級王国」と言われるような過度の管理体制を敷いてしまうような傾向がある。主要教科での教科担任制は、そのような事態を防ぐメリットがあると思われる。(高等学校)

<教員のチーム力アップ>

複数の教員が児童に関わることで、課題共有ができる。チームとして動きがとりやすいのはメリット。(小学校)

<教員の負担軽減>

教員の授業準備等の負担が減り、1つの授業への教材研究や準備に時間をかけることが出来る。結果として子ども達に質の高い授業を提供できる。担任の力量による子ども達の学びの格差が小さくなる。(小学校)

<中1ギャップ軽減>

中1ショックの低減、学級崩壊の予防。人材が確保できれば教育に有効。(中学校)

【設問】メリットを最大限引き出すためには、運用上、どのような配慮や工夫があればよいでしょうか?

<情報共有>

校内での子どもたちの情報共有の仕組みを組み込む必要があると考える。これまであった学年会以上に、密な共有が必要になると考える。そのためには、これまでと同様の仕組みだけでなく、意図的な学年会をこまめに多く設定する必要があると考える。(小学校)

<人員確保>

人員増は必須です。担任間の授業交換による教科担任制は、デメリットが大きいです。実際に、本校では低学年担任が高学年算数を担当していますが、低学年学級を別の専科に委ねる時間が増えます。その結果、低学年の学級経営に悪影響が出る可能性が高いと実感しています。(小学校)

<専科人事>

1人ひとりの教員の得意分野を活かせるよう、所持している中高の教員免許の教科や特技を考慮して、バランスよく配置する必要がある。(小学校)

【設問】小学校高学年における教科担任制のデメリットはどのような点だと考えますか?

<負担増>

単学級の場合は授業の準備が減るわけではないのでデメリットが多いと思う。複数学級が前提。(小学校)

カリキュラム・マネジメント、探究、資質能力ベースの学びなどを目指す上ではコミュニケーションコストが多い。また、本気で上記の学びを進めていくなら、結局は他教科も教材研究するので負担が減っていない。(小学校)

<児童の実態把握の難しさ>

小学生は一日様子を見る必要のある子が多いと感じるので、教科担任制になるとその変化を見取ることが難しいのではないかと考えます。(小学校)

<人員不足>

人員配置が今のままで無理矢理教科担任を導入するのは、無理があると思います。また、小学校の教員は、それぞれ専門に学んできた分野が違うことが多いので、教科担任を導入するのであれば、それに伴い担当する分野をある程度詳しく学ぶ必要があると思います。そのような人材を充分に確保できるのかが心配です。(小学校)

<時間割の柔軟性>

時間割変更がより難しくなる。(小学校)

<専門性の欠如>

「専門性を活かし、質の高い授業」と謳っているが、小学校教諭はそもそも専門教科を持たずに採用されている。中高の免許を持たない人も多くいる。当たり前のように「専門性」と「高い質」を提供できると言われても自信がない人もいる。また、現在ですら高学年を持ちたがらない先生もいる中、学年配置の偏りが一層大きくなる懸念がある。(小学校)

<連携に時間がかかる>

子どもたちの状況について、各担当者同士の連携を持つ時間が必要になり、現状では、隙間の時間がほとんどなく、子どもたちと過ごす時間がさらに減ってしまうのではないか、と思う。(小学校)

<学級経営への影響>

教科担任の学級経営意識の低下。(小学校)

【設問】デメリットを軽減/解消するためには、運用上、どのような配慮や工夫があればよいでしょうか?

<コミュニケーション>

教師間の連携をどれだけ密にできるかが決め手だと思う。1人の成長をどう見取るかをしっかり協議しなければならないと思う。(小学校)

<管理職のマネジメント>

管理職の運用で何とでもなるかと思う。(小学校)

<人員確保>

人員増加と人員の適正配置です。当然、教師1人ひとりの力量の底上げも重要ですが、それよりも人員増加が急務かと思います。(小学校)

<免許の改正>

教科担任制になる教科のみ、小学校の教員資格の種類を増やす。例えば、音楽を教科担任制にするならば小学校高学年音楽の資格を取得した教員を配置する。(中学校)

導入済みの教員の声

すでに高学年の教科担任制を本格導入している自治体の教員3名に、電話にてインタビューにご協力いただきました。

<兵庫県小学校教員Aさん>

▼ インタビュー
実施当初は、まずはやった事実を残すところから。年度内に一単元だけやってみるという感じで少しずつ開始しました。通年でやるようになったのは最近で、慣れてきたことで一定のメリットや成果が見えてきました。

学級担任制は、時間割を担任の裁量で柔軟に組み換えられるメリットもあり、休み時間中に起きたトラブルの解決等に関して機能していました。ただ、教科担任制になったことで子どもが環境に適応していく様子も見られました。別の先生が来ることで次の授業に切替ができるようになったり、複数の教員が関わることで関係性が固定せず、逃げ道ができるなど子どもの落ち着きにつながりました。

高学年になってからの実施により、中学に向けて心の準備もできるようで、”お兄さん、お姉さん”になっていく過程を子どもたちも実感しながら過ごしているようです。

また教員にとっては、教材研究に時間をかけられるようになるため、専門性が向上することはメリットです。

ただ、運用に関しては時数の関係でとても複雑になります。2クラスだとうまくいっても、1クラス、3クラスだと実施が難しかったり授業交換がうまくできなかったり、導入当初の心理的な抵抗感や混乱もあると思います。
兵庫県でも少しづつ時間をかけて今のやり方が定着してきた感じです。

<兵庫県小学校教員Bさん>

▼ インタビュー
1番のメリットは、授業の準備に集中できる点です。教材研究の質が上がり、子どもたちの反応もいいですし、私自身も楽しく授業ができています。例えば、複数のクラスで授業を行うことで、同じタイミングですぐに修正もできますし、子どもたちの反応によりクラスごとに授業を変えていくことで、精度の高い授業を子どもたちに提供できるようになります。

学級担任制は、担任との相性が良い子にとってはいいですが、相性が悪い子の場合、6時間一緒というのもストレスが溜まるだろうと思います。教科担任制により、いろんな先生が関わることで子どもたちのストレス軽減にもつながります。

また、私が悪い印象を持ってしまった子どもがいたとしても、他の先生がいいところを見つけて共有してくれることで客観的な視点を持つことができます。結果的に子どもとの関係もいい方向にいく感じがします。

デメリットとしては、問題が起こったときの生徒指導や時間割を組む際に複雑になる点。ただ、やってみたらそのデメリット以上にメリットは多いとは思いました。

導入当初は、心理的なハードルが高いと思いますが、まずやってみるっていうのを大事にしてもらえたらと思います。やっていくことでいい感じに回っていくとは思いますし、先生にとっても負担が減る形でうまく導入できたら一番いいですね。

兵庫県では小学5、6年生で、教科担任制と少人数教育を組み合わせた「兵庫型教科担任制」を実施しています。

▼ 教科担任制:
国語、算数、理科、社会から2教科以上選択し、学級担任が授業を交換

▼ 少人数教育:
国語、算数、理科、外国語から1教科以上を選択し、1クラスを2つに分け、学級担任と加配教員が授業

「兵庫型教科担任制」実践研究のまとめ

兵庫県のお2人がどちらかというとメリットを感じている一方、カリキュラム・マネジメントの視点や評価を行う過程において、教科担任制のデメリットを指摘されていたのが今年度から実施している小学校教員のCさんです。

<某自治体小学校教員Cさん>

▼インタビュー
私の学校で実施している現状の授業交換のやり方だと人が増えないままなので、同じ時数の教科しか実施できません。

子どもたちがさまざまな大人と関わるのは賛成ですが、学級担任制にあった弾力性が失われ、子どもの状況に合わせて柔軟に時間割などを変えていくことはできなくなります。

教科を教える(子どもたちが知識・技能を身につける)ことだけに注力すれば教員の負荷は減るかもしれませんが、全教科、全単元で子どもの資質・能力も育てようとなった時、教科横断的な視点とそれに伴う知識が必要なため、他の教科のことを知らないわけにはいきません。カリキュラムマネジメントにおいて他の教科との連携は必須なのでコミュニケーション量はこれまでより増えます。つまり、今の学校教育の目的を果たすには、本気で取り組もうとすればむしろ負荷は大きくなります。

また、例えば初任から5年間社会を全くやらなかった先生が、次の年から担当することもあり得るので、結局、自分の得意な教科だけを知っていればいいということにはなりません。

学校教育が目指していることと、教科担任制の目的や実施内容に矛盾を感じています。

こちらの指摘に関しては、義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について (報告)【中央教育審議会での整理】でも、留意が必要だと明記されています。

学級担任が原則として全ての教科を教えることにより、教科横断的なカリキュラム・マネジメントが効果的に行われてきたという利点が損なわれることのないよう、組織的・教科等横断的な教育課程の編成・実施が可能となるよう留意する必要。

留意が必要と言及されてはいるものの、具体的にその利点を損なわないための方策が示されているわけではないため、その課題に関しては学校裁量に委ねられているのが現状と言えます。

「カタリスト for edu」では、教科担任制の仕組みについてわかりやすくまとめた記事を公開しています。こちらも合わせてご覧ください。

本格導入後も引き続き注目

今回のアンケートでは、働き方改革としての期待の声や教材研究の質が上がるという視点から、導入に対して前向きな意見が多く集まりました。中学校や高等学校の教員からも推奨する声が目立ちました。

一方で、学級担任の裁量による子どもの状況に合わせた弾力性のある時間割や、全人的な教育や評価ができなくなるのではという不安の声も上がっています。

本格導入前ということもあり、その多くの声が未来に対する予測的なものであることから、導入後の意見についても引き続き注目したいと思います。

今後の動向について

教科担任制に関連する動きとしては、2022年4月から教職員の定数を950人増やすことが決定し、今後、4年間で教職員の定数は3800人程度増える見通しとなっています。

2022年度の概算要求では、文部科学省は定数について2,000人、4年間で8,800人の改善を要求していたものの、財務省からは「中学校教員の活用」など定数を増やさない工夫を求められていました。

この定数増がどう機能したかも含め、各学校・子どもの実態に沿った教科担任制の運用ができるよう、丁寧に実態の把握を行い、方策に対する検証結果をもとに必要な環境の整備が行われることを期待します。

全回答は、以下よりダウンロードしてご覧ください。

お知らせ

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(文:高野雅子 編集:建石尚子)

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