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【上】名もなきプロジェクトX vol1こうして民間メンバーとの協働は始まった 編

2022年9月10日(土)の昼下がり、ロート製薬東京支社の会議室にこもって熱い議論を交わす集団の姿がありました。耳を澄ましてみると、
・どうしたら、情報感度の高い人達だけでなく新しい実践に挑む校長・教育長の姿を熱量そのままに他の教育現場に飛び火させていけるか?
・イベントの時だけなく、日常の実践や行動変容につなげていくにはどうしたらよいか?
…等のテーマで、真剣に議論を重ねています。
 
この日に行われた「School Platform 作成カイギ with B」は4年間活動を積み重ねてきた「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム」(以下School Platform)事務局にとって、実は一つの転換点となる出来事となりました。
 本記事では、3回にわたってSchool Platform事務局の新たな挑戦である「名もなきプロジェクトX」の舞台裏をお伝えします!
この記事を読んでくださっている皆様も、今後のSchool Platformの展開にもぜひご参加ください。


物語のはじまり

 時計を巻き戻すこと3か月前。School Platform立ち上げ期から文科省若手官僚の皆様と一緒に事務局を担ってきたNPO法人ETIC.発の企画で「Beyond Work」という社会実験が始まりました。「Beyond Work」とは、社会で進行中の新しい試みや社会価値の創造を目指すプロジェクトに、企業等で働く方が一時的にコミットして組織を超えて共に協働する、いわば会社公認の「プロボノ活動」のようなものです。
 今回、Beyond Work初の試みの1プロジェクトとしてSchool Platformが受け入れ先となってアビームコンサルティング、ロート製薬、軽井沢風越学園の3つの組織から3名のプロボノメンバーをお迎えし、2022年6月から約3か月の協働が始まったのでした。

プロジェクトが目指していたこと

 プロボノメンバーとの協働が始まる前段階のSchool Platform事務局内での議論として、
「毎年イベントとして総会を重ねてきたが、さらに自分たちの活動を進化させていきたい」
という問題意識が起点にありました。School Platformが行ってきたイベント「総会」はテーマの設定、登壇くださるゲストの選定、参加者相互の関係性づくり等、School Platform事務局が心血を注いで創り上げる春の風物詩になっていますが、コロナによるオンライン化での場づくりの難しさ、ユーザー層の広がり等、いくつかの悩みを抱えていました。同時にイベントを実施して一時的な刺激になるだけではなく、全国津々浦々の教育現場での日常の実践にどうつなげていただくか?という点で、アップデートが必要なのではという議論が上がっていました。
 一方、事務局メンバー構成も4~5年の時を経る中で年次が上がり、その多くが職場での役割責任も増え国家官僚としてそれぞれが激務の日々を送る中で、事務局メンバーリソースの確保にも課題を抱えていました。やりたいことはたくさんアイデアとして出てくるのになかなか形にできない、という生みの苦しみ・ジレンマを感じる時期が続きました。
 そんな中、文科省とETIC.という限られた組織に属するメンバーで進めてきたSchool Platform事務局自体も、いっそ民間から新メンバーを募って協働してみては、との実験的な位置づけで、Beyond Workへの参画が決まりました。
 問題は「プロボノメンバーとの協働で何に取り組むか」、です。今後の活動を考える上でもぜひ「ユーザーインタビュー」をやってみてほしいとの声がメンバーからあがりました。School Platform事務局メンバーが教育長・校長等の「ユーザー」に直にヒアリングをすると、どうしても関係性の中で本音を聞き出すことが難しかったり、手放しでの評価(業務時間外で活動している時点ですごい等)を受けがちであったりすることから、School Platformの主役である、全国の教育長・校長がどんな意見をお持ちなのか、まったく利害関係のない民間プロボノメンバーからの調査で明らかにしていきたいということがその意図するところでした。

メンバー紹介 

 ここでプロジェクトに参画くださっていたプロボノメンバーを紹介しましょう(左上は筆者)。
お一人目はアビームコンサルティング㈱ でコンサルタントのお仕事をなさっている竹村剛さん(写真右上)。
続いて、風越学園で広報や事業企画を担う辰巳真理子さん(写真左下)。
3人目は、ロート製薬でマーケティング/商品企画を担当している後藤裕香さん(写真右下)。普段は大阪でお仕事されています。
お三方それぞれに今回のプロボノ活動への参画動機を聞いてみたところ、下記のような回答をよせてくださいました。

竹村:コンサルタントとして自身のスキルが会社の外であっても通用するのか、本業以外の活動が自身のQOLにどのような影響があるのか、把握するためにBeyondワークに参加しました。このチームに参画した理由ですが、息子(8歳)の小学校が杉並区の施設一体型中小一貫校であり、設備の面などで教育が変わりつつあることを体感し、教育現場に変革をもたらすというプラットフォームに興味を持ちました。

辰巳:私の場合は、幼稚園・義務教育学校の設立準備・運営に関わる中で、既存の強固なシステムの中で新しいことを始める、あるいは試みを続けるために管理職の理解が不可欠であること、一方で管理職や教育長によって変わっていけることの余地が多いことを実感していました。ただ自校のことだけを考えると思考がどんどん矮小化していくのを感じ、School Platformに関わるみなさんの視点で学校教育について眺めてみたいとの思いから参画を決めました。

後藤:自分の両親ともに教師で、私自身も教員免許取得→教員になる道も過去考えており、教育にはずっとうっすら関心を持っていました。両親の話や自身の経験から、教育現場は日本の経済と同様停滞し課題が多々ありどうにかしたいと現場は感じていても結局現場仕事に忙殺されて変革が起こりにくいのでは?と漠然と感じていました。実際教育現場で何が起こっていてこのプロジェクトで解決できる課題は何かを一緒に考えてみたいと思いエントリーをしました。

 3人には、「教育現場の変革、新しい試みに関心がある」という共通点はありましたが、所属組織のカルチャーも普段のお仕事内容も全く異なるメンバーがそろったことで、お互いの強みを活かしあいながらの協働プロジェクトをスタートすることができたのでした。
 6月にMtgを開始したプロボノメンバーは、まず大まかなスケジュールを策定。「これまで何度も総会等のイベントに参加してくださっているコアなリピーターは、なぜどこにこの場の価値を感じてくださっているのか」、「潜在的な方はどういう場を欲していてどういったきっかけでご縁がつながりうるのか?」といった具合に想定ユーザーを分類。先の問いを明らかにするために毎週1回のオンラインMtgをマイルストーンにしながら、過去の総会参加者の皆様へのアンケート調査、ならびに10名程度の異なる地域の教育長・校長の方々へのインタビュー調査を行う方向で活動を開始しました。

(次回)プロジェクトX vol2 アンケート結果やインタビュー結果から見えてきたこと へ


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