スクールロイヤー、〝教育行政に係る法務相談体制〟をのんびり眺める

文部科学省がこれから始めるスクールロイヤーもどき制度と、そこに大きく関わる弁護士会の大きな2つのグループについて感じてることをさくっと。

スクールロイヤーではなく、教育行政に係る法律相談体制の話

文部科学省が現時点(2021.02)で、スクールロイヤーという言葉を看板に掲げなくなったなーというのを↓でポツポツと書いた。

↑では、この体制としての大きな流れみたいなのをなんとなく書いたのだけど、今回は弁護士会の関わり方について感じるところをなんとなく書いていく。

民事介入暴力対応と子どもの権利

この記事を書いてる2021年2月の時点で、文部科学省は、↑のようにスクールロイヤーという言葉を使わなくなったのだけど、スクールロイヤーという言葉が使われている頃から、弁護士会では大きく二つの委員会がこの辺りの制度について強い関心を持って関わっている。

弁護士会の委員会って何?と思うかもしれないので簡単に説明する。理由はさておいて、弁護士がお金をもらって代理人として裁判をしたり交渉をしたりするには、自分の働く地域の弁護士会という会に所属しないといけない。例えば働く場所が大阪なら大阪弁護士会、沖縄なら沖縄弁護士会といった感じだ。

そして、弁護士会という組織の中には、これまた理由はさておき、さまざまな社会・人権問題に取り組む委員会というのがいくつか存在している。名前は微妙にちがうことがあるけれど、たとえば、交通事故委員会、両性の平等に関する委員会といった感じだ。

この中で、スクールロイヤー制度の関係でよく名前を聞く委員会が二つある。

ひとつが、子どもの権利委員会、そしてもうひとつが、民事介入暴力対策委員会だ。

現実にある、〝モンスター退治〟のニーズ

子どもの権利委員会というのはなんとなくイメージが湧くとして、民事介入暴力対策って何?と思う人が多いと思う。これまたざっくり説明すると、ヤクザ(或いはヤクザみたいな人)との間での民事上のトラブル対策に特に取り組む委員会である。

なぜヤクザ対策がスクールロイヤー制度に関係あるの?と思うかもしれないけれど、この委員会でも一昔前のゴリゴリな脅迫めいたヤクザ的なトラブルというのは数が減ってきているようで、むしろヘビークレーマー的なトラブルの対応が増えてきており、また、その対応ノウハウが蓄積されている。

そして、この委員会がなぜスクールロイヤー制度の中で名前が出てくるのかといえば、端的に言ってモンスターペアレント対応へのニーズが現場にあるからだ。

自分は、司法修習生の頃、この委員会の研修を選択してクレーマー対応のポイントを教えてもらい、そのノウハウは今のクレーマー的な保護者の対応には活用していたりする。スクールロイヤーとして働く上で、ここのノウハウが特定の場面で有用なのは間違いない。

さらにいうと、そういった「毅然とした対応」という交渉の経験も引き出しもない弁護士が自分みたいな形の仕事をするのは、かなり辛いし頼りなく思われるだろうなと思う。毅然と対応する段階に結果入らないにしても、最悪、私が預かってどうにか対応しきるんで、まずは勇気を持って、きちんとこの子のために親に言うべきことを伝えましょう!と背中を押してあげるのは、学校現場が子どものために一歩踏み出す上で、とても価値がある。

交渉の大筋立てには、子どもへの意識は必須

民事介入暴力対策のノウハウ特化だけだと、色々不安はある。

↑冒頭にも挙げた記事だけど、そこにも書いているように、「バッサリ切る」と言った毅然とした対応は、手段を尽くし、悩みきった末の最後の手段だと考えている。

最終的にそういうことができるという安心感を与えながら、学校に子どもの健全な成長のために学校ができることを、交渉のギリギリまで粘り強く取り組ませることも、とても意義がある。

特に学校現場も人間なので、対応がキツイ保護者を対応していると冷静に判断できず、「この人との関係を断ち切りたい」という方向にどうしても進みがちである。

その中で、「渦中のお子さんは今どうしていますか?何を望んでますか?」といった質問をすると、保護者のことばかりで子ども自身から意識が離れていることにハッとされることもある。

そういった視点にきちんと引き戻してあげることも、法的ならトラブルの予防という側面でもとても意味がある。

これも以前の記事に書いたけれど、過度に攻撃的な姿勢は、それだけ大きな不安やSOSの裏返しであることを忘れて欲しくない。福祉的心理的な支援の観点からすれば、「バッサリ切る」対応をとることはリスクが大きい。表面的に攻撃的だからといって、すぐにバッサリ切っては、保護者も子どもも救われない結末を生みかねない。

ハートもスキルもないとスクールロイヤーはきっとつとまらない

リーガルマインドや弁護士の使い方が浸透していない教育現場の現状からすれば、弁護士をどう使えばいいのかも、弁護士側がある程度幅広く提案できないといけない。

その際に、交渉の引き出しとして、ゴリゴリの毅然とした対応方法もしっかり持ち、幅広い交渉方法を示しながら学校に安心感を与えることも、交渉方針を決めていく中で、子どもの権利、子どもの幸せという原点を弁護士自身もしっかり意識していくことも、どちらも重要だなと日々の業務を通じて感じている。

どちらの委員会が果たして関わるべきなのかといった議論が時々聞こえてきたりするけれど、どちらの力も必要で、どちらかだけでは不十分だなと思う。

だから、この文部科学省の制度に派遣する弁護士を選定するのであれば、どちらの委員会のノウハウも共有できるような研修を受けさせ、現場のニーズに真に応えられる弁護士の素養は最低限つけて欲しいなーと思っている。

まぁ、もし自分の自治体にアクセスできる弁護士が派遣されたら、ひとまずその辺の含めて弁護士さんと色々話してみたいなー。と感じている。

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