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輪行で行く!神津島旅行記‼

~はじめに~ 


伊豆諸島の神々が集う島、神津島。
これは、そんな神秘的な島を目指す青年3人の奇妙な冒険である。


──輪行(※1)袋入りのチャリンコと旅行用バッグを肩に引っ提げ、熱海駅に降り立った異常独身男性3人。彼らは、大勢の人が行き交う熱海駅前で汗だくになりながら自転車を組み立て、まるでF1モナコGPのような熱海の坂を滑走し、フェリー乗り場へ向かった。

「神津島中の旨いもんを全部食い尽くしてやるぜ!」

そう息巻いて、彼らは再び自転車を輪行袋に収納し、神津島行きの高速ジェット船に乗り込んだ──

熱海港から見た、熱海の街並みとジェット船

※1 輪行:自転車を、電車やバスなどの公共交通機関で運搬すること。一般的には、輪行を行う際には専用の収納袋(輪行袋)に収納しないと輪行が認められない。

~神津島までの移動手段と高速ジェット船について~

神津島への移動手段は、主に下記の3種類である。

  1. フェリーの場合
    ・静岡県下田港発 :最短2時間20分
    ・東京都竹芝桟橋発:約12時間

  2. 高速ジェット船の場合
    ・静岡県熱海港発 :約1時間55分
    ・東京都竹芝桟橋発:約3時間45分

  3. 飛行機の場合
    ・東京都調布飛行場発:約45分

旅のメンバーは3人とも静岡県民であることから、移動の楽さを考慮した結果、今回は熱海駅まで輪行し、高速ジェット船を利用することに決定した(静岡県西部から下田まで車で行くのはかなりの労力を要するし、電車で行くにも熱海経由で下田まで行く必要がある)。

高速航行時の高速ジェット船の乗り心地は、フェリーと比較すると揺れが少なく大変良好。ただし、出航時と入港時はフェリー同様、波によって揺れる。

注意しなければいけない点は、神津島には2つの港があり、当日の天候によってどちらで発着するかが決まるという点だ。島の西側に位置し、村落に近い前浜港(神津島港)と、島の東側に位置し、村落から山を越えた先にある多幸湾(三浦港)。当然、前浜港に入港した方が自転車での移動が楽になるのは言うまでもない。
結局、この日は多幸湾への入港が決定し、村落へ向かうための峠越えを強いられることとなった。

~旅行行程詳細~

1日目:自転車移動
多幸湾→昼食【藤屋ベーカリー】→まっちゃーれセンター→赤崎遊歩道→名組湾とトロッコ跡→神津島温泉保養センター→民宿(𠮷栄丸)

多港港を出て早速、斜度10%レベルの坂がお出迎え。

港へ迎えに来てくれた宿の方に重い旅行バッグを預け、自転車に跨り多幸湾を出る。そこで待ち受けていたのは、斜度5%~10%の坂であった。

はじめに言っておくが、快適に神津島観光を行いたい人は、原付または自動車のレンタルを強くオススメする
一方、ママチャリのレンタルはあまりオススメしない。なぜなら、20kgに満たない鉄塊を引きずって坂を歩いて上ることになるからだ。

無事に峠を越え、僕たちは昼飯の調達に走る。民宿の方曰く、島の飲食店のランチ営業は大体13:30にラストオーダーになるとのこと。なので、島で唯一のパン屋さんである藤屋ベーカリーでパンを購入し、まっちゃーれセンター前の広場で昼食を取った。

まっちゃーれセンター

まっちゃーれセンターとは、東海汽船の窓口と神津島観光協会がある、言わば前浜港の玄関口のような施設である。フェリーや高速ジェット船の待合所にもなっており、休憩スペースが存在する。また、神津島のオリジナルグッズや島の名産品であるパッションフルーツなどの販売もされている。同じ敷地内には、海産物の販売や海鮮料理の提供を行っているよっちゃーれセンターも併設されており、島の特産品を堪能できるようになっている。

2Fから見下ろしたまっちゃーれセンター内部の様子。1F左上の窓口でパッションフルーツジェラートを購入したり、オリジナル・ステッカーを入手することができる。
神津島産パッションフルーツのジェラート。程よい酸味と甘みでさっぱりとしており、大変美味。山越えにより全身汗だくになり、人権を失ってしまった身体を癒してくれた。

ここに来るまで全く知らなかったのだが、神津島はアニメラブライブ!スーパースター‼」の聖地になっているらしく、島内の至るところにポスターなどの展示がされていた。全く知らなかったのだが。まっちゃーれセンターでは、神津島出身のスクールアイドルであるSunny Passionのスタンプが押印できたり、オリジナル・ステッカーが貰えたりするらしいので、ファンの方々は是非訪れてみてはいかがだろうか。

アニメ・キャラクターのパネル展示。試しに並んでみたが、どうやら等身大ではないようだ。
アニメ・キャラクターのぬいぐるみとスタンプ台。
島内の施設・売店・飲食店にラブライブ!スーパースター‼のポスターが掲示されているのを良く見かけた。それだけ、この作品が街おこしに一役買っているのだろうと推察される。

赤崎遊歩道

赤崎遊歩道には、エメラルド・ブルーの海へ飛び込むことができる飛び込み台が設置されている。繁忙期の日中は常時ライフセイバーによる監視がされているため、安心して飛び込むことができる。飛び込みは足からが原則で、イキって1回転前転するような危ない飛び込みを行うと注意される。

島でアクティブな海遊びをするならばやはり赤崎遊歩道だろう。神津島の中でも一番の人気スポットなので、大勢の観光客で賑わっていた。潮位によって飛び込める場所が制限され、僕たちが訪れた時間は2か所からの飛び込みが可能であった。約3mほどの飛び込み台から飛び込み、そのまま海に潜ってみると、黄色や青色のカラフルな魚たちが優雅に泳いでいた。大小様々な魚が観察できるうえ、景色も素晴らしいため、飛び込みをしなくても十分に楽しめるスポットだ。ただし、貴重品を預けるコインロッカー等は無いため、貴重品の管理には要注意。

名組湾トロッコ跡

陸側から見たトロッコ跡。
側面から見たトロッコ跡と友人M。

形あるものは、その生涯を終えて初めて完成する──
赤崎遊歩道で海水浴を満喫した僕たちは、帰りの道中にある名組トロッコ跡に立ち寄った。長年、波によって浸食されてきたのか橋脚はボロボロになっており、中の鉄骨がむき出しになっていた。神津島の中でも圧倒的な存在感を誇る廃墟なので、訪れた際は是非立ち寄ってみてほしい

神津島温泉保養センター

神津島温泉保養センター入り口から見た露天風呂と海。内風呂と露天風呂があり、露天風呂のみ水着着用必須の混浴となっている。露天風呂の温度は体感38℃ほどで、いつまでも入っていられるような水温だった。また、館内にはレストランも併設されている。

民宿(𠮷栄丸)

𠮷栄丸入口。細い路地を進んだ先に民宿があるというのはいかにも港町らしい。
𠮷栄丸での1泊目の夕食。地元で捕れた新鮮で美味しい魚が振る舞われる。

今回、僕たちは𠮷栄丸という民宿に宿泊した。釣船を保有しており、釣り人に大人気の民宿である。𠮷栄丸を選んだ決め手は、ホームページに載っていた夕食の写真がとても美味しそうだったからという理由であったが、その選択は正しかった魚料理が美味しいのはもちろんのこと、油淋鶏も副菜も本当に美味しかった。この内容だと、理論上はご飯が最低6杯は食べられる計算になるが、一応減量中なのでご飯1杯で自重した。

2日目:徒歩移動
民宿(𠮷栄丸)→村落散策→昼食(Cafe' & Diner `AILANA)→神津島ジオスポット巡り【ありま展望台(ジュリアの十字架)→千両池→神津島灯台→神津島空港】→民宿(𠮷栄丸)→星空観察【よたね広場】

2日目朝の前浜。本州南部に広く雨雲が分布しており、いつ雨が降るか分からないような状況であった。

2日目の天気はあいにくの雨模様。本来は天上山でのハイキングを計画していたが、朝起きた時点で激しい雨が降っており断念。9時頃に雨が止んだため、2日目は徒歩で村落の散策とジオスポット(※2)巡りをすることにした。また、離島の空港を訪れる機会も中々無いため、ジオスポット巡りのついでに神津島空港に立ち寄った。

※2 ジオスポット:大地や地球を意味するジオ(Geo)と、地点を意味するスポット(Spot)の造語。火山活動や地殻変動、波の浸食によって出来た景観地を指す言葉として使用される。

村落散策

村落内の細道。村落は入り組んでおり、基本的に幹線道路以外の道路は狭いうえ、歩行者や2輪車しか通れない道も多い。
濤響寺本堂
濤響寺山門
村落から前浜港へと続く坂道。村落の中はこのような坂道だらけであり、島民は主にスクーターや軽自動車で移動している。
島唯一の信号機。交通量が多くないためか、青信号から赤信号へ切り替わる間隔は非常に短い。
都道224号線 神津本道。神津島のメイン・ストリートである。
前浜の水配り像。伊豆諸島の神々が神津島に集まって、どの島にどう水を分配するかを話し合ったという伝説に基づいた像である。何者かによって、Swarmに「神津島高まりオタク像」というスポットで登録されている。
水配り像の中で一人気持ちよさそうに寝ている神。
神津本道の概略図。

昼食(Cafe' & Diner `AILANA)

`AILANA Burger 単品:900円 フレンチフライセット:1000円

海鮮料理は民宿で朝晩と食べられるため、神津島で唯一本格ハンバーガーが食べられるCafe' & Diner `AILANAで昼食を取ることに。前浜やまっちゃーれセンターから近いこともあり、開店と同時に満席になるぐらいの大繁盛ぶり。開店前から並んでいたこともあり、待ち時間無く着席することができた。早速、店の看板メニューである`AILANA Burgerを注文。全粒粉入りバンズの香りが良く、つなぎ不使用のビーフパティは離島で食べられるものとしては十分なクオリティ。そして、スパイシーで特徴的なハンバーガーソースがとても美味しかった。島で魚料理以外のご飯が食べたくなった時にオススメできる店だ。

神津島ジオスポット巡り

冒頭に、神津島での移動はスクーターまたは自動車の利用を推奨すると述べたが、景色をじっくりと堪能できる徒歩での散策もオススメだ。時間に余裕がある人は是非徒歩での散策にチャレンジしてみてほしい。
散策に出る前に、中豊商店で和菓子を購入。ケーキ生地のような饅頭を六面押し固め焼いた「六方焼」は、優しい甘さの自家製あんがほろほろしっとりとしている生地に包まれており、とても美味しかった。購入して店を出た後、気が付いたら六方焼は無くなってしまっていたので写真は残っていない。

ありま展望台(ジュリアの十字架)
上から見下ろした千両池。下まで降りるのに険しい道を進む必要があり、途中までは道が整備されているが、その先は岩肌にロープを張っただけとなるため、ビーチサンダルなどの装備では滑落しケガをする恐れがある。また、電波が届かないため、一人では行かないほうがいいかもしれない。
こちらを向いてポーズをとっている異常成人男性の背後に見える岩肌を降りていくことになるため、間違ってもビーチサンダルに海パン、上裸の海水浴スタイルで降りてはいけない。
神津島灯台脇の展望台から一望した、神津島空港方面の景色。まるで高原道路のような広大な絶景が広がっていた。
神津島空港
神津島空港のロビーおよび発着口

散策を終え、民宿へ戻る前に島唯一の洋菓子屋さん「梅屋商店」でブルーベリータルト(270円)とチーズケーキ(300円)を購入。めちゃくちゃ安くてビックリ。言うまでもないが、箱を開けた直後にまばたきをしたら購入した洋菓子は既に無くなっていたため、写真は残っていない。

夕食【民宿(𠮷栄丸)】

𠮷栄丸での2泊目の夕食。この画像を見るだけでご飯が食べられる。

𠮷栄丸に戻り、楽しみにしていた2日目の夕食にありつく。来島する前からずっと楽しみにしていたキンメダイの煮付けが出てきて、テンションMAX。おそらく明日葉(あしたば)が巻かれているささみチーズカツお刺身、あおさのお吸い物、きんぴらごぼう、明日葉のおひたしと本日も贅沢なラインナップ。理論上はご飯が8杯食べられる計算になるが、減量中なのでご飯1杯にセーブしておこうと思った。しかし、あまりにも料理が美味しすぎて、気が付いたらご飯4杯をたいらげていた。なんで?

星空観察【よたね広場】

よたね広場から見上げた星空。日中雨が降ったことに加え、21~22時頃は月が空に昇っていない時間帯であったため、星空観察を行うには最高の条件だった。また、流星群の時期であったため、多数の流れ星を観測することができた。

日中は雨が降っていたが、天気予報によると夜は晴れるとのこと。待ってました。前日、曇り空で諦めた天体観測。21時、期待を胸に村落を上り、よたね広場に出て夜空を見上げてみると、そこには広大な空に浮かぶ幾千もの星々と流れ星。そして、空のど真ん中に堂々と流れる天の川が、僕らを見下ろしていた。間違いなく、今まで見た夏の星空の中では一番解像度が高く、美しい星空だ。出来ることなら、この星空を見ながらここで眠りに就きたい。そんな星空が、ここにはあった。

よたね広場に常設されている遊具。この玉にぶら下がり、横移動しながら空を見上げると、満点の星空が動いて見えてとても楽しいので、是非皆さんもやってみてほしい。
※よたね広場はとても暗いので、周囲の安全を確認し遊具を使用のこと。また、フラッシュ撮影を行う際は、星空観察を行っている他の方の迷惑にならないよう配慮のこと。
夜の神津本道。昼間と違い、交通量はごく僅か。
島唯一の信号がある交差点。夜間の交通量が少なくても、点滅信号にはならないようだ。

3日目:自転車移動
早朝サイクリング【𠮷栄丸→ぶっ通し岩→前浜港→𠮷栄丸】→神津島離脱【多幸湾→熱海港】

3日目の朝、前浜に虹が架かっていた。

今日で島ともお別れ。名残惜しいので、朝5時に起きてサイクリングに向かった。神津本道を走り、赤崎遊歩道へ向かう道中にあるぶっ通し岩までまったりと脚を回した。朝の神津島は涼しく、サイクリングやウォーキング、ジョギングをするのに最適な気候であった。そして、朝の前浜港に寄って宿に戻り、朝食を済ませて帰り支度を始めた。この日も、フェリーの発着場所は多幸湾となり、また山越えを強いられることに重い旅行バッグを背負って家まで帰るのが嫌だったので、宅急便で家まで送ることにした。往路も事前に重い荷物は宅急便で送っておけば良かったと若干後悔した。

ぶっ通し岩。長年波によって岩が浸食された結果、貫通し孔が空いたとのこと。
朝の前浜港。この日は波が高く、フェリーや高速ジェット船の発着は島東側の多港湾に。
神津本道を通って多幸湾へ向かう道中にある、松山展望台から見た多幸湾。火山活動により形成された島の形状と、雄大な海が織りなす風景がとても美しい。
多幸湾展望台から見た多幸湾。彩度や色温度をいじった嘘くさい写真のように思えるかもしれないが、実際に肉眼で見ても同じぐらい美しい景色が一望できる。
多幸湧水横から眺めた砂糠山と多幸浜。余談だが、被写体背後の大崩落部は廃道であるという報告がなされている。また、多幸湧水は飲用可能な湧水であり、多くの島民が水を汲みにここを訪れていた。
この素晴らしい海とも今日でお別れしなければいけないと思うと、とても名残惜しい。
バイバイ、神津島!
復路便の高速ジェット船「セブンアイランド・友」
出港し、砂糠山を東側から拝む。

熱海港到着、そして帰路

??????

熱海駅で東海道本線普通・浜松行に乗ったと思ったら、気が付いたら僕は沼津駅に降り立っていた。




なんで?




仕方がないので、沼津駅南にある喫茶店に入り、美味しい珈琲と食事をいただくことにした。
仕方がないので、内浦の三津海水浴場で夕景を堪能することにした。

~あとがき~

「離島へ旅行したい!!夏に!!!」

かねてからの野望を、ようやく実現することができた。
数ある離島の中でも神津島を選んだ理由は、下記の4点である。

  1. 2泊3日で観光するのにちょうど良い規模であること。

  2. 多数のジオスポットを有すること。また、公共交通機関を使用せず、徒歩や自転車でも観光や散策を楽しめること。

  3. 美味しい魚が堪能できること。

  4. 静岡県からのアクセスが良好であること

結果、2泊3日の輪行旅では神津島を堪能し尽くせなかった。
また行きたいと強く思えるほど、神津島は魅力的な土地だった。
次回は別の離島に…と考えていたが、また神津島に行くかもしれない。
今回見られなかった神津島の景色や、堪能できなかった料理も、次回訪れるまでの楽しみにとっておこうと思う。
以上、この旅行記をもって、本旅行を終了する。

fin.

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