「飛べない鳥のかけるん」物語:かけるん 絵画:片岡洋子(kaede)を読んで
感想文集ー統合失調症をもつ人の著作を中心にー no.15
「飛べない鳥のかけるん」は 短くやさしい絵本ですが、読後に強い印象を残す作品です。
かけるんは飛べない鳥。飛ぶことに何度挑戦してもうまくいかないのです。
生きる意味を見出せずにいました。さらにこんなことを考えてもいました。
この一節は、宮沢賢治の「よだかの星」を思い起こさせます。
その昔「よだか」という鳥がいて、殺し殺される世界や虫の命をとる自身を悲しみ、自ら天へ還っていった。
かけるんもまた、そんな苦悩を抱えていたのです。
やがて かけるんは「心の病気」を発症します。
がんばれと言われても、もうがんばれない。
統合失調症を患った作者自身の体験が物語に色濃く反映されています。
しかし かけるんは、自ら天に昇り星になったよだかとは、違う道をたどります。
病を得た かけるんが どう生きてどうなったか。
飛べないまま、何を見て何を思ったか。
そしてたどり着いたのは、、、
ぜひ絵本を開いて、その後の かけるんを見てください。
私はこれまで幾人もの方の「病気になんかならない方がいいに決まっている。それでも、病気になったから見えた世界もある」との言葉に触れてきました。
そんなことをあらためて思い返しながら読みました。
作者のあとがきには「精神的疾患をもつ方にも生きていてほしい」とあります。
祈りを感じる作品です。
温かい筆づかいの絵が、物語をさらに印象深いものにしています。
(追記)
作者のかけるんさんがこの記事についてポストしてくださいました。
ありがとうございます。
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