「五行歌集 白つめ草」石村比抄子著を読んで
感想文集ー統合失調症をもつ人の著作を中心にー no.13
「2級」「3級」という冷ややかな行政用語に象徴される「友」と「わたし」の状況の差。
そんなことをあっさり飛び超えて「わたし」におもいきりの励ましを届ける友。
冷たいはずのお役所言葉が逆に温かさをまとうのが不思議です。
白つめ草は、統合失調症をもつ作者による五行歌集です。
五行歌とは “字数にこだわらず現代のことばをそのままに自分の呼吸で五行に分ける詩” (「五行歌の会」による)
本歌集には、統合失調症にまつわる経験、家族、大切な出会いなど、さまざまなことがらが詠まれています。
家族を詠んだ歌からは、作者の「五行歌に救われ」る必要のあった過去と、その後の歩みが垣間見えます。
統合失調症を発症し入院した病室でも五行歌を書き続けた作者。
統合失調症にまつわる歌の数々は、「私の第二章がはじまる」にあります。
病を患った自身の内面とともに、家族、友、草花(表題の白つめ草)とのつながりが詠われています。その中で回復していった作者の息づかいを感じます。
ほかにも自然や動植物を詠んだ歌がたくさんあります。
自然や宇宙に育まれ、それらと一体である自分を忘れない、そんな作者の心に触れる気がします。
悲しみの湖底に沈んでいた何かが意を決して顔を上げ、凛として歩み出したよう。
静かで確かな足音を感じる歌集です。
最後に余談ですが
私はこの一冊を読んでから、折々に拙い五行歌を作って日記に書き加えるようになりました。
それは自分が長年抱えていた問題に一つの区切りをつけるのに、助けになりました。
(追記)
作者の石村比抄子さんがこの記事についてポストしてくださいました。
ありがとうございます。
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