ChatGPTと議論した話

 前回はBing AI面白いな、という話をしたのですが、

 今回はChatGPTです。

 前回の教訓を踏まえて、ChatGPTを使ってみたところ、面白い可能性を感じたという話です。

やっぱり辞書じゃない

 即物的な答えを知るために使うのは、ChatGPTの10%も使えてないんじゃないかというのが第一感。
 即物的な答えが欲しければ、普通に検索した方がよろしい。使い方が違うのだ。万能の必殺技ではない、ということを知るところからが、まさにAIリテラシーというものではないだろうか。

 質問力が問われるのは間違いない。質問の仕方がヘボいと、回答も知りたいことから外れたものしか返ってこない。
 とは言え、それだけだとGoogle検索に対する「検索力」と同じ話でしかなくて、やはりそれなら普通に検索しなさいよ、という話に行き着く。

 ChatGPTの使い方がイメージできないという人は、それを計算機的に捉えてるからだろう。つまり、新しい計算機を手に取って、最初にとりあえず「1+1=」を計算させてみるように、「既知の結果が得られるかどうかをテストする」アプローチでChatGPTを使ってしまうと、もうそれは初手から使い方が間違っているということになってしまう。

 自然言語による会話、というのが肝であって、それを活かせるような使い方を思いつけるかどうかで、ChatGPTの使い方が拓けるかどうかが左右されると言える。

 その肝の部分をストレートに使ってみましょうということで、ChatGPTと議論してみよう、というのが今回の主題。

いわゆる、Get Startedってやつ?

 ということで、普通にチャットで会話するがごとく、ChatGPTと会話を始める。
 何を話すんだということだが、まあ最初は何でも良いんですよ。
 それこそ、何かについての一般的な情報を聞くところから始めても構わない。
 ちなみに、2023/04/02時点では、URLを参照する機能はないみたい。

会話途中の一コマ

 ChatGPTの回答に関して、最初のうちは何かの情報をまとめた形の、言わば冗長なスタイルであることが多いが、そのまま会話を続けていくと徐々に回答が短くなっていく傾向がある。

仕組みについても教えてくれる

 このような仕組みが備わっていることから、一問一答のような使い方だと、その旨味を活かせてないということになってしまう。

 話題が思いつかない場合は、何でもいいので質問してChatGPTから回答を引き出した後、その回答に含まれる話題を使って、わらしべ長者的に次の質問を考えれば良いだろう。

では本格的に議論しよう

※本項では、ChatGPTと行った議論の途中をピックアップして画像として貼り付けてますが、あくまで一部分です。実際はもっと会話してます。

 まあ、結論から言うと、すげえ建設的な議論が楽しめます。
 確かに厳密な情報を求めてしまうと見当外れな答えが返ってくるのだが、そうではなく「何らかの見解」を求めれば、人間相手よりも遥かに安定した答えが返ってくる。
 そりゃあ、あまりに個人的事情や特定の現場に特化した回答は無理としても、普通にちょっと真面目な議論をする分には、全く問題のないやり取りができる。

 ただ、これも質問力が要求されるのと、最初はちょっと根気がいる。
 と言うのも、まさに先ほど紹介した「会話が進むにつれて回答が短くなる」が発動するまでは、回答が全体的に一般論的で冗長である傾向がある。ぶっちゃけ、ほとんど同じ文句が繰り返されてると感じる部分が多い。

Quoraについて、人間側がやや懐疑的な立場で質問を繰り返しているところ。
「適切な監視やモデレーションが行われてるから!」をやけに繰り返してくる。

 ただ、これが気になったということは「議論が進んでいない」わけだから、こちらから「何らかの刺激を与えるような質問」を投げかけてやらないといけない。要は、話題を変えるなり、もっと掘り下げたいテーマを指定するなり、そうやって軌道修正を図れば良い、ということだ。

 ここまでで気づいた人もいるだろう。
 そう、これって人間相手の議論でも同じことだわな。

 何か同じところで議論が停滞してる場合は、ちょっと違う質問を投げかけたりするでしょ。それと全く同じことがChatGPTとのやり取りでも必要なのだ。
 ただ、ここが機械相手の良いところで、人間相手で起こり得る「相手が全く意見を変えない」という事態が起きない。話題を変える質問を投げかければ、文句を言わずにそれに応じてくれる。

 で、このあたりまで来ると、こちら側(人間側)にも変化が現れる。
 どういう変化かと言うと、単に直接的な答えを求める質問から、異なる意見を求める質問や、自分の考えを投げかける発言(もはやこれは質問ではない)になっていく。
 何なら、割と脊髄反射的な感想を述べても、それなりの回答を返してくれるので、議論が停滞しない。(人間同士だと、お互いに「そうだね」「わかる」で終了しかねない発言にも、律儀に何らかの見解を返してくれる)

情報リテラシーの話へのフォーカスを始める。
こちらの「相槌を打つような発言」に同意しつつ、まとまった見解も欠かさないChatGPT。
なんて良く出来た子だ。

 ChatGPTとの会話には少しコツがいる。
 話題を誘導するような質問を重ねることで、少しずつ回答を変化させることができる。例えば、最初は建前的に一般論を繰り返すだけだったところに、その一般論に対しての反論を重ねることで、少しずつ回答の論調を変えることができる。

疑問を投げかけると「確かに、」と言いながら直前の回答の論調を変えてくれる。

 こうやって、提示される回答を変化させていくことで、話題に対する情報の切り口を変えていくこともできる。
 もちろん、直接的にその話題を方向付けるアプローチができるのなら、その方が早い。ここでは、ChatGPTの回答に対して簡単なツッコミを繰り返すだけでも、同様の効果が得られる例としている。

 こういったやり取りを続けていくと、ChatGPTの提示する回答をたくさん読むことになる。何らかの話題について、微妙にアプローチを変えながら次々と見解が提示されることになるので、さすがにこちら側にもアイデアが浮かんでくる。

途中で課題を整理してもらえる。つまり、モデレータ役も兼ねてくれる。有能。
下書きを依頼してみると、時間がかかると言われた。ふむ、ドン・モハメを思い出すな。
と、思ったら、舌の根乾かぬうちにこんなことを言い出す。実はテキトーな奴なのかも知れない。

 この辺まで来ると、ChatGPTとの議論にも慣れてくるので、相手の主張の方向性と、自分の持っていきたい方向性とを意識しながら、この議論の着地点を探すようになる。ここでは、何らかのアイデアを思いつけるような見解を引き出す質問を探ることになる。

結構フランクな言い方でもしっかり対応してくれる。
ChatGPTの回答の切り出しも、概ねこちらの発言を尊重した言い回しなので安心できる。

 会話を重ねてくると、ここまでの会話の経緯が蓄積されることから、ChatGPTの例にあるような一問一答形式の回答とは一線を画した、議論を続けた者同士での「打てば響く」ような回答になっていることが判るだろうか。

適当なタイミングでまとめを入れることも出来る。ホワイトボードに書き出すイメージ。
議論を進めるうち、良さげなアイデアを思い付く

 何となくアイデアを思い付いたら、それを掘り下げていく。
 前回の記事で気付いた通り、やはり要素同士の組み合わせを考えさせるといい仕事してくれるので、同様にChatGPTに例を挙げてもらう。
 ここでも、質問の仕方が曖昧だと意図しない組み合わせが提示されるので、意図と違う場合は限定条件を指定することで、何度でも文句を言わずやり直してくれる。

組み合わせ問題を指定できると、議論はほぼ終了と言って良い。

 もう、このへんまで来ると、ChatGPTの回答を元に、次にどのような問いかけをすれば思考の役に立つか、最終的な落としどころに到達できるか、を考えてる。
 つまり、普通の議論と同レベルに頭を使うことになる。

ひとまずは議論を畳むところまで到達

まとめ

 普通に議論できます。
 ぶっちゃけ、人間相手よりもストレスが無いレベル。もちろん、意図しない回答が提示されて首を傾げる場面もあったが、そこは質問を補正したり、何なら回答に含まれる「不正確な部分」が主題でなければスルーしても良いのだ。(スルーされても別にChatGPTさんは鼻白むこともない)

 あと、途中で気付いた人もいると思うけど、これは一種の議論のシミュレーションと言うか、思考の訓練として成立する。
 むしろ、何か一人で物を考える時のサポート役としてChatGPTを活用してみた、という事例だ。
 よって、ChatGPTに自動で何か答えを出してもらおう、というアプローチとは真逆の考え方になる。

 とは言え、これって実はコミュニケーションの本質に触れる話で、普段他人と議論するときに、他人の意見というのは議論の中でどのような機能を持っているか?を考えたとき、その出所が必ずしも人間である必要があるか?という問いかけに繋がる。
 ChatGPTの提示する、基本的に中立的な見解がその機能を満たすのであれば、最初の方でも言及した「人間であればあり得る、意見を全く曲げない」ケースが無い分、人間よりも適切であるという見方が出来てしまう。
(もちろん、瞬間的な最大値は人間同士側にあるとしても、平均値は間違いなくChatGPTとの議論に軍配が上がるだろう。それも安定的、という意味での平均値である)

 しかし、ChatGPTとの議論を進めるには、人間側に一定以上のスキルが要求されることは間違いない。ここでのスキルというのは、ChatGPTのクセを知ることから始まり、議論を進めるための把握力とか質問力とか操舵力とか、そういうのね。
 が、そんなものはちょいと訓練して身につければ良いのですよ。
 そして、ChatGPTはいつでもその訓練に付き合ってくれると考えれば、これって教育訓練の場でも使えるネタになるんじゃなかろうか。
 それこそ、社会人向けの教育の一環としても成立できそうな気がする。
 特定のテーマについて、ChatGPTと議論した結果を持ち寄って品評するとか。当初のテーマから外れていくケースも込みで、どういうやり取りをしたかを比較検討すると面白いのではないだろうか。

 AI活用と言えば「単純作業の代替」という論調に行きがちだけど、ChatGPTに関して言えば、議論のサポート役やパートナー、練習相手という活用の道もあるんじゃねえかと思った次第。ここから派生するアイデアは色々出てくるだろう。

 Twitterじゃ議論なんか出来やしねえし、しかしホイホイと議論に付き合ってくれる奴も心当たりねえし、という議論難民の方は、ChatGPTとの議論をエンジョイしてみてはどうだろうか。

 ということで、今回は「やってみた」記事で終わることにする。得られた気付きなどをもう少し語りたいところだが、長くなるのでまた今度。

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