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まだ見ぬ君の小さな手

むっちり、きゅっと、ふんわりやわらか。
赤ちゃんの手はクリームパンに似ているらしい。

産休に入ったら、毎日パンを焼きまくりたい。焼きたてパンの匂いで部屋中を満たして、日がな読書に勤しみたい。お昼には焼き上がったばかりのパンを食べよう。

趣味全開の野望を胸に、妊娠8ヶ月、ついにその時はやってきた。お休みに入ってから最初に作るパンは、ずっと前からクリームパンと決めていて、インターネット上には、いろんなレシピが溢れているけど、作ってみたいレシピも決まっていた。

いつものルーティンで立ち寄った書店で、平積みにされた「パンどろぼうのせかいいちおいしいパンレシピ」を一目見た瞬間、思わず手に取っていた。どのページをめくっても、絵本の中のかわいらしいパンが忠実に再現されている。「どれを作ろうか」「何が食べたい?」そんな話をしながら、まだ見ぬ君と一緒にパンを選ぶ姿を思い描いて、じんわり胸があたたかくなった。

見ているだけでわくわくするような動物パンや、パンどろぼうの顔が描かれたお絵かき食パン、そのなかに一際シンプルな成形のクリームパン。パン屋さんでよく売っているあの形のクリームパン。

このレシピ集に登場するクリームパンを作るのに、特別な準備はなにも必要ない。パン作りが気軽にできる理由のひとつに、作りたいパンが変わっても主材料は基本的に変わらない、というポイントがある。お菓子作りみたいに材料集めに奔走する必要がないので、一度お家パン作りをしていれば、思い立ったときに、好きなパンを作ることができる。

ふたりでレシピをながめながら、もし君に「クリームパンが食べたい!」と言われても、「ベーコンエピがいい!」と言われても包むベーコンさえ冷蔵庫にあれば、生地作りに必要な材料は一緒なのだ。このレシピ集でも、たった2種類の生地から何種類ものパンが生み出されている。同じ材料でも配合の違いや、フィリングの違いで、十分に違うパンとして成立する。それがまた、パン作りのおもしろさでもある。
どんなパンをリクエストされようと、以下の材料があれば大抵のパンが焼けてしまうのだ。

基本生地
強力粉、砂糖、塩、牛乳、水、インスタントドライイースト、バター

「パンどろぼうのせかいいちおいしいパンレシピ」より


まだ見ぬ君の小さな手。
ふわふわになあれ、美味しくなあれ。
ふたりで捏ねればどんなにしあわせだろうか。

小さな手から生まれる、溢れんばかりの甘いしあわせに今日も胸がいっぱいに満たされている。お母さんは君と会える日を心待ちにしています。



#このレシピが好き

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