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世界映画市場分析①〜日本は世界で何番目の映画市場?〜

これまでのnoteでは、北米および日本の映画市場がコロナ禍によってどのような変化に晒されたのかを考察してきました。今度はさらに視点を広げ、「世界各国」の映画市場がどのように変化しているのかを探ってみたいと思います。

先日、知人からとても興味深いデータが詰まった冊子を共有していただきました。「Marche du Film」という世界の映画マーケットトレンドについてまとめた60数ページの読み物です。毎年、カンヌ国際映画祭にて(有料で)配布されているようなのですが、恥ずかしながら私はその本の存在をこれまで知りませんでした。ページをめくってみると、映画市場に関する世界各国の様々なデータが所狭しと並んでおり、この手のものが大好物な私は小躍りしてしまいました。

Marche du Film

今回は、「Marche du Film」の中から、特に興味深いデータについてピックアップし、いま世界の映画市場がどのような状態にあるのかを考察してみたいと思います。

2022年時点での世界TOP10マーケット

下のグラフは世界における「2022年:年間興行収入TOP10マーケット」をまとめたものです。

2022年:年間興行収入TOP10マーケット
※単位は百万USD ※2022年為替レートにて算出

2022年の年間興収で1位の座についたのは北米市場でした。68億5000万ドル(約9000億円)という興収は、コロナ前の水準と比較すればまだまだ回復途上ですが、それでも世界市場でみれば堂々たる王者の貫禄を示しています。

ただし、前年の2021年に世界No.1の座に君臨していたのは中国でした。北米市場がコロナの影響にいまだもがき苦しむ中、いち早く苦境を脱した中国が初めて北米市場を逆転して首位に立ったのです。しかし、その中国に再びパンデミックの余波が襲いかかり、劇場の一時的な休館などが相次いだ結果、2022年は前年から約40%減という厳しい結果となりました。

両国ともにまだまだ本来の力を取り戻しているとは言い難いながら、その市場規模は世界的に見れば「2強」と呼ぶにふさわしい存在感です。

そして、2強に次ぐ3番目の興収をあげているのが、日本です。16.3億ドル(約2130億円)という興収は、インドやヨーロッパ諸国、韓国らの市場を上回るものでした。かつては世界で2番目の巨大映画市場と評価されていた日本。近年ではその力が徐々に弱まっているという声もよく聞くのですが、今でも世界3番目の市場という地位をしっかりと守り続けています。

ただ、興収をドル換算すると(ドルに対して円が弱くなっている関係で)4位以降の国との差はだいぶ縮まっているというのも事実です。2019年当時、4位韓国との差は7.6億ドルありましたが、2022年の4位インドとの差は2.8億ドルまで縮まっています。

興行収入で比較すると、チケット料金や為替レートなどの計算でややこしくなりますので、今度は「動員数」で各国の市場規模を確認してみましょう。

動員数ではインドが世界一

2022年:年間動員数TOP10マーケット
※単位は百万人

興行収入ランキングから、順位が変動しました。動員数で堂々の首位に立ったのはインドです。中国とほぼ同等、北米に比べて約4倍の人口を誇るインドですから、2強と並ぶ動員数があっても驚きません。

お気づきのとおり、興行収入ランキングでは日本に次ぐ4位でその興収は北米の2割にも満たないインドは、つまり平均チケット料金が格安である、ということです。このあたりの事情については別の項で詳しく解説していきます。

日本は、フランスとほぼ同数の1億5200万動員という数字です。興行収入はフランスの約1.5倍ですから、つまりはチケット代がフランスの1.5倍ということですね。などという書き方をすると、やはり日本は世界標準よりもチケット代が高額すぎるのでは…という疑念が生まれてきますが、そのあたりの真実も追って考察していきます。

ではこの項の最後に、世界の映画マーケットの各国シェアについて確認しておきましょう。それぞれの国の市場規模(興行収入)を円の大きさで表した図を下に載せておきます。

世界の映画市場シェア
興行収入TOPマーケット

各国の市場規模がおおよそおわかりいただけたでしょうか。興行収入においては、北米と中国が完全な2強として君臨しています。日本は3番目の市場規模を誇りますが、4位以下の国とはかつてほどの差はありません。コロナにより大きな影響を受けた世界の映画市場ですが、この先どのように変化していくのでしょうか。次項ではその未来を見極めるべく、コロナによってそれぞれの国の映画市場にどのような変化がもたらされたのかを分析してみたいと思います。

世界映画市場分析②~明暗分けるコロナからの回復~」に続きます。

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