作者目線で読みとく読書感想文講座をしてみた2019。しごとってにがてとむき合うことかも?
2019年は、どんな年だったか。なんとな〜くこのタイミングで、みんな考えると思います。
で、年末に思うのが、仕事をきっかけにして、ちゃっかり苦手なことにむきあっているのではないか、という感じ。
あえて「苦手を克服」と言わないのは、克服できてるかはなぞだから。でも、むきあってはいると思う。
たとえば2019年の夏、フィットネスクラブ・スポーツジムのヴィムスポーツアベニュウさんで、「学校では教えてくれない!読書感想文が書けるようになる講座」というものを、やってみました。
まったく本が読めなかった小学校時代
シナリオ・センターという、脚本家養成学校で働いていると、というかそんな会社の副代表的なポジションにいると、世の人はぼくは文章を書いたり、本を読んだりするのが、好きなのだと思うらしい。
シナリオ・センターは、1970年に優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に、新井一が創立。
ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど600名以上の脚本家、小説家を輩出するの学校です。
URL:https://www.scenario.co.jp/
でも、そんなことはないんだな、これが。
小学生のときの国語の時間。
教科書の音読というのがありました。みなさんもやったでしょ?物語とかを、立って声を出して読むやつ。
小学校1、2年のとき、まったく読めなかったのです。
つっかえ、つっかえしか、読めなかった。だから、うしろから余野さんっていうやさしい女の子が、こっそり一緒に読んでくれるの。
いわゆる、ささやき女将方式。
それくらい本が読めなかった。もちろん、文を書くなんてとんでもない。今でも覚えているのが、卒業文集。テーマは、よくある『将来の夢』。で、夢も文章力もなかったぼくは、とりあえず野球選手を選択。チームにも入ってないのに。
そんなもんだから、野球の夢は、もろくも原稿用紙はんぶんで終了。困ったかずき少年は、サッカー選手も夢に追加。二兎追うことで、なんとか原稿用紙1枚を埋めたのです。
一番にがてだった読書感想文
そんなぼくが今年むきあったのが、読書感想文。
ぼくは、本も読めず、文も書けなかったから、読書感想文はひどかった。『トム・ソーヤーの冒険』を読んで、「トムの冒険がすごかったです」と書いて先生の度肝をぬいた小3年の夏休み明け。
もちろん、書き直し。でも、書けない。だって、そもそも読んでもまったく内容がわからないんだもん。きっと、かずき少年泣いたはず。
で、昨年2018年の夏まえに、「感想文って、どうやったら書けるの?」って困っている、あの日のかずき少年のような子がいると思ったのです。
で、昔どんなふうに教わったのか思い出せないし、まわりに聞いても意外にみんな、「たしかに、私もにがてだった」というばかりで、答えがでない。
ググってみても、大した情報がない。なので、ぼくはぼくを救うためにまとめてみたんです。去年。
作者の側のロジックをひも解けばいいんじゃない!?
気づいたのが、読書感想文が書けないで困っている子には、まずは本をどう読めばいいかがわかる必要があるのではと思ったわけです。
かずき少年理論でいうと、書けないのは、読めないから!
シナリオ・センターで受講生にお伝えしているのは、「物語をどう書くか」という表現技術。それをもとに、「作者はどう書いているか」をばらしちゃえば、読めるんじゃないの、誰でも!と、2018年にブログでまとめたことをもとに、思い切って今年は小学生を対象に講座にしてみたわけです。
めっちゃ、にがてとむき合ってる!
で、開発しちゃったのが、「かんそう文の書くじゅんびバッチリシート」。
『起承転結』の機能をもとに物語を読む
「本読むのが好き!」「文章書くのが好き!」という子は、対象外。そういう子は、きっとこんなシートなくても書けちゃう。
でも、かずき少年みたいな子には、役立つはず。余野さんのように、ささやいてくれるのが、このシート。
まずは『起』の機能をもとに、冒頭の数ページを読めばいいわけ。
・『起』の機能:天地人を整理
天:時代の紹介
地:場所の紹介
人:人物の紹介
よっぽど不条理な小説でない限り、最初の10ページも読めば、物語がどんな時代の話で、舞台となる場所はどこなのか、そして、だれが主人公なのかわかります。
だって、作者はどれを読者に伝えなきゃいけないから。
さらに作者としたら、作家さんは、主人公のことを読者の人に好きになってもらいたいから、「憧れ性」と「共通性」というのを冒頭のほうに書きます。
「この主人公すごいなぁ~」と思う箇所があったら、すかさずチェック!
でも、「なんかここら辺は自分にちかいなぁ~」と思ったら、そこもチェック!!
それが作者がこっそりと用意した「憧れ性」と「共通性」です。で、その部分に対して、自分はどう思ったかをバッチリシートに書けばいいわけです。
いおた:「感想、書くの難しい……」
新井「だよね~。このモグラって、いおたくんに似てる?似てない?」
いおた「う~ん。パパみたい」
新井「じゃあ、シートの“起”のブロックに、主人公のモグラとの共通点はパパみたいって書いておこう」
引用:『学校では教えてくれない 読書感想文 の書き方』https://www.scenario.co.jp/online/24637/
・『承』の機能:作者は主人公を困らせまくる
小説でも、ドラマや映画でも、読んでいて(観ていて)ハラハラドキドキするのは、主人公がいろんな問題にぶつかって、困って、それを解決できるかどうか。
作者は起承転結の「承」で、主人公を困らせまくるわけです。
たとえば、お父さんたち大好きな池井戸潤さんの小説なんてまさに、そう。『ノーサイド・ゲーム』も『陸王』も『下町ロケット』も、そして『半沢直樹』も……これでもかってくらいに主人公を困らせます。
だって、困れば困るほど、物語は面白くなるから!
でも、ただ困らせればいいってものではありません。作者は、この主人公だからこそ困ること、を書いてくるわけです。
そして、その困りごとを、その主人公だからこその解決法で突破するわけです。
ここが、作者の腕の見せどころ。そこを見透かしながら、読んで、主人公がどんなことに困り、そしてどう突破したのかをもとに、自分ならどうするかを考えていけばいいわけ。
新井:「“承”のブロックには、モグラに起きたことを書いてみよう。最初、モグラに何が起きた?」
いおた:「フクロウにつかまっちゃった。でもモグラは泳ぐのが得意だから、わざと川に落ちて、泳いで逃げたんだよ」
新井:「いおたくんだったらどうする? もしフクロウにつかまったら」
いおた:「僕は泳ぐの苦手だから、巣に着いたら死んだフリして逃げるなぁ」
新井:「おお!死んだフリ、いいね。それが“感想”だよ!いま言ってくれたことも“承”のブロックに書いておこう」
引用:『学校では教えてくれない 読書感想文 の書き方』https://www.scenario.co.jp/online/24637/
・『転』:クライマックスで主人公が変化する場面を探す
ここまで来たら「転」。クライマックスです。
クライマックスは、主人公が最大のピンチを乗り越える場面。大ヒット映画『君の名は。』であれば、彗星の落下を食い止めるために、必死に山道を駆け上るシーン。
主人公はココで一番頑張ります。だから、ある意味わかりやすい。主人公が一番頑張っているところがクライマックス。
そして、クライマックスを経て、主人公や主人公のまわりが、『起』と『転』で変化しているところがあれば、それもバッチリシートに書いておきます。
そして、その変化に対して、どう感じたかを書けば、これまた感想になります。
かんそう文の書くじゅんび ALRIGHT!
物語の基本構造である『起承転結』をもとに、バッチリシートに何が書いてあるかをまとめれば、あらすじができちゃう。
そして、『起承転結』それぞれの出来事にたいして、思ったことを書いていけば感想ができちゃう。
すごいぜ、バッチリシート。自画自賛!!
それもこれも、にがてだった本を読むこと、感想文を書くこととむき合った結果、かもしれない。昔からできる人には、できないはず!こればかりは、余野さんにもできなかろう。
ぼくは、自分がいまの仕事に向いているかどうか、いつも悩むけれども、もしかしたら、本を読むことも、文を書くこともにがてだからこそ、
「ドラマを描きたい!けど、どうしたらいいの?」
「表現しなきゃいけないけど、うまくまとまらないよ~」
という人の助けになることができるのかもしれない、そんなことを思った2019年の暮れなのでした。2020年はシナリオ・センター50周年だし、がんばろっと。にがてなこと、減るかもしれないし。
2020年もよろしくお願いします