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TSUTAYA CREATORS' PROGRAM最終審査会、プロデューサーの視点。作品への『想い』と『観客』をつなぐ大切さ

TSUTAYA CREATORS' PROGRAM 2019の最終審査会にお邪魔してきました。

来年のTCPに挑戦しようと思っているという方や、最終審査ってどんなこと突っ込まれたの?と気になる方、プロデューサーって、どんなところを観ているのか知りたい方、企画のキモってなに?という方まで、気軽にご覧ください。ちょっと長めです。

TSUTAYA CREATORS' PROGRAMとは……
『TSUTAYA発の映像クリエイターと作品企画の発掘プログラム。「本当に観たい映画作品企画」をプロ・アマ、年齢、性別、国籍など一切の制限なく募集』公式サイトより https://top.tsite.jp/special/tcp/

第5回となる今回は、応募総数622名の中から選ばれた企画部門3名、監督部門3名、脚本部門2名の計、8名のファイナリスト達が応募作品の映像化に向けて、最後のプレゼンテーションを行うというものです。

TSUTAYA CREATORS' PROGRAMが、何よりもすごいのは、グランプリを受賞すると、5000万円の総製作費をバックアップしてくれるという点。

本気で、映像クリエイターを生み出していこうという意気込みを感じます。
実際に、すでに映像化されている作品もありますしね。

『ルームロンダリング』(2017)
『嘘を愛する女』(2018)
『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(2019)
『ゴーストマスター』(2019)。

脚本家養成学校として、シナリオ・センターも応援していきたい取組みなんです!

シナリオ・センターは、1970年に優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に、新井一が創立。
ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど600名以上の脚本家、小説家を輩出するの学校です。

そして、2020年には、我らが出身ライターの土橋章宏さん企画・脚本、中条あやみさんが主演、兼重淳さん監督『水上のフライト』が公開されます!

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(c)2020映画『水上のフライト』製作委員会

▼代表の『表参道シナリオ日記』でも取り上げています

審査員の質問からひも解くプロデューサーの視点

TSUTAYA CREATORS' PROGRAM、略してTCPの最終審査は、誰もが知っている映画作品を手掛けている敏腕プロデューサーのお歴々。
詳しくはこちら(https://top.tsite.jp/special/tcp/apply#judgeMember

これは、プロデューサーが企画や作品のどこを気にしているのか、それをひも解くチャンスかと思い、可能な限りまとめてみました。

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「どういう方に観てもらいたいの?」

最終審査は、企画者の8分くらいのプレゼンテーションのあと、最終審査員との質疑応答という形で進みます。

審査員からの質問で目立った一つ目が、

「どういう方に観てもらいたいの?」

というもの。

たとえば、村上 美然さんの『バカダンス(仮)』。

あらすじ
『超一流大学に合格し人生の勝ちを確信する田中亮太が、女の尻を追いかけ入部したのは、強豪社交ダンス部の常勝集団「フォーメーションチーム」。強豪とはいえしょせん社交ダンス、お目当ての先輩と…とムフフな田中は、「部内恋愛禁止」の部則と極限まで心身を追い込む練習の厳しさに面食らう。「人生を約束されたはずのこいつらは、なぜそこまでして踊るのか?」暴発寸前の性欲とフォーメの悪魔的魅力の板挟みになりながら、田中は常勝集団の謎に挑み始める』
公式サイトより https://top.tsite.jp/special/tcp/info

「あえて弱いチームではなく、社交ダンス大会常勝のダンスチームにしたのは面白いけど、弱いチームがって方が観客にはわかりやすい。
常勝チームにすることで、社交ダンス愛が試されるというのはわかるけど、社交ダンスを好きではない一般の観客にはどう伝わるの?


たとえば、野村 東可の『▽サンカク ―女は、愛を、くっつけた―(仮)』。

あらすじ
『愛する男の最期のとき、女はその愛おしい彼のイチモツを切り取った。そして、自分の下着に隠して逃げるが、その後イチモツが自身にくっついてしまう。女はイチモツと共に男として生きていくことを決める。女性から男性に変わった主人公の葛藤と悦びとは。』
公式サイトより https://top.tsite.jp/special/tcp/info

「男性のイチモツを切り取りたいという衝動は、男の私には共感しずらい。観客にはどんな気持ちで観てもらいたいの?」

取材はどれくらいしているの?

次に審査員の方から多かった質問。

「取材はどれくらいしているの?」
「○○については、取材が必要だと思いますが、そのつもりですか?」

企画段階でも、企画内容をうらづける取材がなされているのか、否かは気にされるようです。
実際に企画が動き出したときに、「実はそうではなかった……」となったら大変ですからね。取材の大切さを感じます。

たとえば、室井 孝介 さんの『658km 陽子の旅(仮)』。

あらすじ
『人生を諦め惰性で日々を過ごしていた草壁陽子(46)は、長年疎遠になっていた父が事故に遭い重体であることを知る。 父に会いにいきたいが、東京から父が入院する青森まで移動するための所持金も頼れる友人知人もなく、ヒッチハイクで向かうことにする。その旅の過程で様々な人と触れ、閉ざしていた感情に小さな変化が生まれてくる』
公式サイトより https://top.tsite.jp/special/tcp/info

「40代で青森まで電車で行くお金もないような陽子的な人は、どれくらいいるのか。陽子的な人への取材はされているの?」

「ヒッチハイクで青森まで向かうというけれど、日本でヒッチハイクのイメージがあまりない。実際にヒッチハイクをしている人への取材はしたの?」


たとえば、Jo Motoyoさんの『ヨンチンの成長日記(仮)』。

5歳で母親が蒸発してから自分の成長日記をつけているヨンチンが17歳で妊娠し、一つの命を生み出すまでの、ささやかで劇的な日常を綴った物語。

生まれてからずっと孤独を感じていたヨンチンは、妊娠の10か月で初めて孤独ではないと感じられ、赤ちゃんが出てくるのが寂しいと思ってるという設定。それに対して、唯一演者側として審査員に加わっていた女優の寺島しのぶさんから

「わたしは、妊娠中に早く赤ちゃんに出てきてほしいと思っていた(笑)。いろいろな妊婦の方への取材とかは必要だと思います」

「妊婦の方への取材は、たくさんしたほうがいい。どんな感情を抱くのかなどヨンチンを描くうえでも必要」

自分の想いと観客をどうつなぐのか

最終審査を拝見して思ったのが、みなさん思い入れの強い作品なんだな、ということ。
入魂の一作を、満を持して的な感じでTCPに応募されたんだと思います。きっと、最終に残ってない企画にも、そんな熱い想いが詰まっていると思います。

だからこそ、想い>観客になっていないか

という視点、大切だと思うんです。
これは、TCPに限った話ではなく、すべてのコンクールや普段『20枚シナリオ』など習作を描くときにも言えます。

なぜ、そう思うかというと、今回のプレゼンを聴いていて、実はワクワクするシーンがイメージできなかったんです。

「クライマックスは、きっとそんな感じだよね」

とか

「そんなドタバタシーンがあるなら、観てみたい」

とか

「そんな濃いキャラクターなら、会ってみたい(観てみた)」

という感じが、ぼく個人としてはありませんでした。すべてのプレゼン作品は、さすがに設定も練られているし、熱い想いも感じます。

でも、ぼく(観客)は、どこを楽しめばいいのか

が、プレゼンの段階では、明確に伝わってこなかった気がしました。ちなみに、当日こられていた業界関係の方と、ちょっとお話しさせていただきましたが、同じような感覚の方が多かったです。

で、この感覚が審査員の方々にもあったような気がします。結果、グランプリは該当がなく、3部門からそれぞれ審査員特別賞が授与される形になったのも、そういうことなのかな、と。

なので、
クリエイターとして、この作品はここが面白いんだ!
そこを観客は、こう面白がれるんだ!
だから、興行主にとっても、作品化する意味があるんだ!

という感じで、作品への想いを起点に観客、興行主とつながれたらいいんだと思います。黙阿弥さんの『三大深切』って、さすがですね。

まぁ言うだけなら簡単なんです。えらそうに、ごめんなさい。

では、どうやって観客のことを考えるのか。
意外と、特別なことではないと思いませんか。だって「この映画、形にしよう」から「今日、飲みに行こう」まで、基本は同じです。相手がグッとくるお誘いか否か。そういう意味では毎日プレゼンなわけです。

いつでも、どこでも、自分の想いを相手とつなぐ練習はできますね。
ぼくもがんばらねば!(自戒をこめて)

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