【漫画の海外展開の話のつづき】経産省の海外コンテンツ産業データを分析していたら少し絶望した⇒ここからなんとか奮起したい
経済産業省「コンテンツの時代研究会」が、昨月末に以下のようなニュースリリースを出しておりました!
2030年のコンテンツの世界市場を体感する経営シミュレーションゲームの設計
ただし、このニュース「シミュレーションゲーム云々」の話そのものは、正直あまり面白くなく(!)、添付されていた世界のコンテンツ市場データがとても有益でした!↓↓↓
これを私なりに分析した結果を、本日は掲載します。
結論を先に述べますと、「日本漫画の海外展開」というテーマについては、このデータから導き出せるかぎりでは「かなり絶望的」というのが所感でした。
ただし、それは産業構造が不利なだけで日本漫画のコンテンツが悪いわけじゃないから、「ここからがんばろう」!が本日の記事の概要となります。いばらの道っぽいですが。
※なお、あくまで以下の分析は趣味の延長での私見ですので、異論・くつがえしは大歓迎、の前提でお読みください。
【要点1】コンテンツ産業全体は緩やかに伸びているが、けっきょく牽引役は映像系・ゲーム系
これは私が前から持っていた仮説の通り。
「日本文化は海外でも人気があるというのに、なんで漫画は儲けていないんだろう」というのがこのNOTEに前に載せた疑問でしたが、この経産省データを見る限りは、
「順調に伸びているのはゲームやアニメであって、出版系は弱いから」
がとりいそぎの回答のようですね。
上から三番目、「出版」の見込み成長率は、調査対象の国でのきなみ「×」か「△」。
そもそも、上の【総括】のところに「日本は出版以外は緩やかな成長」というおそろしいことが書いてありますね。出版は緩やかにすら成長できていないというのか!
「日本文化はCOOL!」という宣伝だけでは、そもそも世界中で書籍市場がシュリンクしている傾向には勝てない、ということです。
「でも、それはフィジカルな印刷媒体が衰退しているわけであって、デジタル媒体はまだ伸びしろがあるんじゃないの?」と思うかもしれません。たしかに気なるところ、、、なので、内訳のページも探してみました。
確かに、フィジカルな媒体は衰退している中で、デジタル媒体では出版業はまだ食っていく余地があります。ただし「電子書籍は拡大するが市場全体の成長につながるほどではない」と総括に書いてある通り。
※やや余談ながら、フィジカル媒体すらまだ伸びしろがあるインドってやっぱり凄いんだな、と思ったことは、付け加えておきます。。。
【要点2】悪いのはどこの誰でもなく「人口減少」という潮流なのだ
なぜこんなに市場が縮小傾向なのかということの「あくまで理由のひとつ」ですが、
ジリジリと若年層の比率が減っていく、という時限爆弾があげられます。
日本の場合は、国自体の人口も減っていくのは確実なのですから二重の人口危機ですね。
いくら「日本文化を輸出するのだ」と息巻いても、それを支える日本国民の数が激減していくならそもそも未来に希望はないのでは?と思っちまいますが、それはいったん現実として受け止めるとして・・・
これを見る限り「漫画が生き延びるには国外の読者を増やすしかない」の命題は正しそうです。しかしアメリカを例外として、いわゆる先進国は軒並みこの問題でシュリンクしていく未来が見えているのは、海外展開を考える時にやはり頭の痛い問題です。
【要点3】要するに日本人以外は漫画をそんなに読んでない
ここからはバリッとした統計値を私もまだ見つけられていないのですが、有力そうな仮説として言えること、
単純に、日本人以外は習慣的に漫画を読んでいないというだけでは?
ひとつ、気になるデータを確認しましょう。「世界各国の読書事情」を扱ったこのページを参照するかぎりでは、一週間で読書にあてる時間が多い国・少ない国ランキングの中で、日本はめっちゃ下位ランクなのです。
残念ながらどこまでを「読書」に含めているかの内訳が入っていないのですが、「世界各国で読まれている本」をハリー・ポッターやらダヴィンチコードやらアルケミスト(しぶいw)がおさえていて、「日本でよく読まれている本はグインサーガ」と書かれているところを見ると、活字書籍のみを対象にしていて漫画は抜かれているのではないかな、と推測。
もしそうだとすると、「海外旅行に行って、電車の中で漫画を読んでいる人って見たことないなー」という私個人の実感には、一致します。ドイツの深夜列車に乗った時はみんなイカツイ小説を読みふけっていたし。。。
結論として、出版物の漫画の海外展開には三重苦がある
まとめると、日本の漫画が海外展開する上での懸案は大きく三つ
・コンテンツ産業の中で出版系は映像系やゲーム系に飲み込まれ続けている
・ターゲットであるはずの若年層が減っている
・そもそも日本人以外は漫画をそんなにたくさん読まない
というあたりでしょうか。
では「海外展開は諦めて国内市場で現状維持をすればいいじゃん」となるかというと、人口減少は日本語圏の必然なので、それはそれで衰退の道、ということになる。進むも地獄、退くも地獄。
ざっと取り得るおもいつく手としては、
・映像やゲームといったマルチメディアとセットで海外展開する
・日本の人口を激増させる(w)
・外国の人にももっと漫画を読んでもらう
というあたりですが、まず人口激増は無理なので、、、
映像やゲームといったコンテンツと組みつつ(比較的希望はある)、漫画を読んでもらう機会を少しでも海外の方に増やしてもらう(これは茨の道だがやらないと先はない)、という2つをしつこくやっていくしかないのだろうな、と思った次第でした。
でもそうなると、私が別の記事に書いていた「聖闘士星矢はメディア展開しやすい内容だから海外展開向きのはず!」という話は、我ながらなかなか悪くない仮説だったのかもしれない、とも思い。
発注したイタリア版の聖闘士星矢、はやく到着しないかな、とますます思う次第でした。
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