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『ほんとうに映った!監死カメラ』をフェイク系ホラーの教科書として見る!【フェイクドキュメンタリー幻視行】

>>『ほんとうに映った!監死カメラ』

そりゃ私としても、もともと真面目なシネフィルからは「ホラー」などというジャンルは低俗サブカルとして周縁に追いやられるものとして見られているだろうとは思うし、

その中でも「ほんとうに写っちゃった!系の心霊ビデオ作品」などというものは、ホラー好きの中でもさらに周縁ジャンルとして見られているだろうこと、それを無視する気もありませんが、

実は芸大出身で、かつ、「ゴダールやカサヴェテスと同列にB級ホラーを研究する」という、真面目な教授からするとかなり困った映画論文を書いていた学生でもあったこの私、

そんな私はつくづく思うのです↓、

「本当に写っちゃった!系の心霊ビデオ」ほど、その歴史を追いかけていて面白いものはない!と!

まことに、マジメな映画史が進んでいく、その傍らで、

「できるだけ低予算で、しかし、もっと怖いものを!もっともっと怖いものを!」の表現をひたすら洗練させ続けている人たちもいるのだ、という点、私には実に痛快に見える。いいぞ!頭の固いシネフィルが絶対に口を出してこないこのジャンルで、どんどんクリエイターの皆さん、もっと自由に、もっと大暴れしてくださいってね。

さて今回は、

2010年代の心霊ビデオ界でまちがいなくひとつの枢軸を(!)担っていたと私が絶賛するシリーズ、『監死カメラ』の第一作のことを取り上げます。

>>『ほんとうに映った!監死カメラ』

つまりは、監視カメラにとらえられた心霊映像を集めたビデオ、、、といういかにもな「ほんとにあったと言い張る心霊映像集」ですが、シリーズが進むと寺内康太郎監督が製作陣に乱入し、

私が好む「フェイクドキュメンタリー系ホラーの境地」で大冒険を繰り広げてくれることになりますw

だが今回語るのは、寺内監督合流前の、

いわば、まだ「普通の」心霊動画をやっていた時代。

でもこの第一作を舐めてはいけない。新しいシリーズの幕開けとして、

なんとも(良い意味で)教科書通りな「心霊ビデオ」の姿勢を貫いている。そうです。この手の動画を自作して世のホラーファンをアッと言わせてみたい、という夢を持つ方にはぜひぜひ、心霊ビデオの教科書としてこのシリーズは研究してほしいのです!

そんな目線で見たとき、まず、私が指摘したいところ。

オープニングのナレーションが素晴らしいと思いますw。私の書き起こしですが、以下のナレーションでこの長期シリーズは幕を開けるのです↓

我々が普段目にしている世界は
本当に真実の世界なのであろうか?
人間の脳は無意識のうちに
見なくてもいい情報を都合よくコントロールし
脳内で削除しているという。
しかし機械となればそうはいかない。
気が付けば我々の頭上には無数の監視カメラがある。
その数は日本全国に400万台と言われている。
一日に数千万時間以上撮られる監視カメラ映像。
しかしそこに写っているのは
果たして我々が目にしている世界と同じものなのだろうか?

『ほんとうに映った!監死カメラ』

この言葉の選び方だけで、私の心を掴んでしまったのが『監死カメラ』!いいですか、私が感心している点、一気に指摘しますよ?

・「監死カメラ」という、いっけんダジャレともとれるタイトルの説明を、ちゃんと冒頭でしている(監視カメラは、時に、死の世界の片鱗を捉えるから、「死を監るカメラ」で、監死カメラ、なのですね?

・これは絶対にフェイクドキュメンタリーホラーを志す人にも、どんどん真似してほしいと思うのですが、やけに数字が具体的なところw!「いま、日本には監視カメラは〇〇台あります。それを合わせると毎日〇〇時間もの新しい監視カメラ映像がどこかで増えているんです」って具体的な数字で話すところから、すとんと、心霊動画の世界に突入していくのですね。そうです、たとえフィクションの世界に入っていくにせよ、最初にホンモノの統計数値を出すところから視聴者を引き込むのは、現代の視聴者を作品世界に引き摺り込むテクニックとしてぜひ、乱発してほしい!

というのも、私自身がエンジニアの会社にいる者なので、普段のビジネスシーンで数字を使ったプレゼンに慣れているからw。いい感じで私達をフェイクの世界に導いてくれるには、やはり、数字で導入していただくのが、いちばん入りやすいです。そういう意味で『監死カメラ』の導入は理想と思ってる。

そしてこのようなオープニングナレーションの後に、以下のようなテロップが現れます。

これからご覧頂くのは、死者と関わりがあるであろう、
なんらかの奇怪な現象をとらえた
監視カメラ映像集です。
この映像を見たことによって引き起こされた災いや
体調への悪影響などには、
一切責任を負いかねます。
くれぐれもご注意してご覧下さい。

『ほんとうに映った!監死カメラ』

このテロップもいいですねえ!というのも、読めば読むほど、これは実は「本当なの?フェイクなの?」とマジで突っ込んでくる方への「免責」になってるのです。

・死者と関わりがあるで「あろう」
・「なんらかの」

と濁したことばかり書いているのは、「本物かフェイクかいっさい断言しないので、そういうビデオだと思って楽しんでね」というオトナな対応を視聴者に求めているわけだし、

・まんいち、これを見てマジになっちゃった人が「霊障で災が起きた」とか制作会社に怒鳴り込んできても我々は何の責任も取れません

とも、ちゃんと言っちゃってますね。これを本物だと思い込んでしまった人が騒いでも知らんよと。

で、ここは私見ですが、

この『監死カメラ』第一作のネットのレビューに、「こういうビデオを出すなら、映像はホンモノだと言い切るべきだ!」と述べている方がいたのですが、私はそれには反対です。

そのココロは、「すべて本当だ」と言い切るのは、もうみんな嘘だと知っている昨今の「視聴者」の賢さを前にしては、しらじらしいと思われるだけだろうという点。

だからといって、「このビデオの心霊動画はすべてフィクションです」と言い切るのも、それはそれでシラけるwので、

オトナな対応というのは、やはり、上記した免責分割のような、「本当ともフェイクとも言い切らない曖昧な断り書き」ではないでしょうか?

そして、何よりも大事なのは、そのように、普段から「本物なのか、フェイクなのか、我々制作スタッフにもわからないのです」という曖昧な態度をとり続けていればこそ、

「実は、白状しますが、このあいだ公開した心霊動画はフェイクでした、すいません、、、でも、我々がフェイクのつもりで作った動画の中に、我々の用意していなかった変なモノが写り込んでいたのです!」と、

「フェイクでした」「と思ったらホンモノの霊が?」「いや、それも調べたらフェイクでした」「いや、でも、それでもまだ説明のつかない部分がこの動画には残っていて、、、」の無限迷宮に視聴者を引きずりこむことができるのです!

もっとも、この、「前の作品は実はフェイクだったと、いきなり製作者が顔を出し白状してくる」「しかし、そのフェイクのはずの映像に、やはり説明のつかない部分がある」の二重三重の迷宮化は、のちにこのシリーズに合流する寺内監督チームが深化させていき、

ついには『境界カメラ』という、私の愛する奇跡のフェイクドキュメンタリー傑作の誕生に繋がっていくわけです!

、、、というわけで、今回紹介した『ほんとうに映った!監死カメラ』が、続編を出していく中でどのように進化し、やがて数々の2010年代の心霊系ビデオ傑作誕生に繋がっていくのか、私も今後、都度、記事をあげて追いかけていきますので、何卒、ご期待!

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!