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【トルコ語学習ノート】日本とトルコの友情を描いた映画『海難1890』に感動しつつ、あえて指摘したい「実際の歴史と違うところ」

日本とトルコの友情を描いた映画『海難1890』。私は、これだけトルコ語を熱心に研究しつつも、ある理由からこの映画を長らく避けてきたのですが、このたびトルコ人の方のほうから「あの映画は絶対みるべきだ!」とススメられましてw、鑑賞しました!

鑑賞した結果としては、いたく感動しました。なるほど、これはすごく良くできた映画です!

前半が1890年のエルトゥールル号遭難事件、後半がイラン・イラク戦争を扱っているのですが、

たしかに「トルコの人々の命を日本人が救ったことが、100年後、戦地に取り残された日本人をトルコ人たちが救出してくれることにつながった」という展開は、泣けます。特に子供を持っている親としては、トルコの少年と日本の少年が手を繋いでテヘラン空港を通過するシーンとかは、胸にもう、熱いものが、、、!

というわけでこの「海難1890」は、私にとっても、「是非、人にオススメしたい映画」となりました。特に日本とトルコの関係に興味がある人には必見映画でしょう。

ではなぜこれまで私が「食わず嫌い」をしてきたかというと、

実は私もトルコ語学習などを通じて、現代中東史にかなり興味を持ち、親戚で運輸省関係の仕事をしていた人に、80年代の中東での仕事の話をメールで聞いてみたり、かなり調べたことがあるのです。

その観点でいうと、実際にイラン・イラク戦争の時の日本人救出を担当していた人々にとっては『海難1890』には違和感があるらしい、ということが雰囲気でピンときていた。

そう明確に言われたわけではないのですが、「映画では『日本政府が何もしてくれなかったのに、トルコ政府が助けてくれた』ように描かれているが、日本は日本でさまざまな救出方法を検討していて、最終的にトルコ政府に動いてもらったのもその外交努力の結果。日本政府が無能だったように描かれているのは現場の努力を知っている側からすると違和感がある」ということではないでしょうか?

この話については、以下の方の記事が、かなり真相に近いのではないかと思います。↓

ともあれこんな細かい話を映画でするのは無理がある。映画というのはどうしてもドラマチックにまとめざるを得ない。

それゆえこの映画を見た人には「日本政府はまるでダメだった」という印象が強くなり、あろうことかこの映画の感想記事には「憲法第9条があるせいだ」といった飛躍した話まで出てきている。

映画をきっかけにそういう議論にまで興味を広げること自体は、よいこととは思います。ですが、ちゃんと当時のことを詳しく調べてから議論を立ち上げないと、「現実に関わった人たちからすると違和感しかない」話になる、ということです。

結論としては、実話を基にしているという映画を観て、感動することはもちろんよいことですが、それを観た印象で何か政治的な意見・議論をしたくなったら、図書館や書店に行き、正確な文献にもあたりましょう!ということになるのではないでしょうか?特に、イラン・イラク戦争の日本人救出劇は比較的最近の歴史なので、政府の公式議事録や当時の新聞記事などもたくさん検証できますから。

で、私としても、上記のような発言を今回のnoteでしてしまった以上(w)は、時間をとってイラン・イラク戦争下のこの「美談」の検証、やってみたいと思います。たぶん、「美談は美談だが、現実はもっとたくさんの人が関わって成功した話だった」という、プロジェクトエックス的な事実が出てくるはず。まとめたら、このnoteにも上げていきますね。

などと、「映画と現実」をめぐる難しい話をしてしまいましたが、「そういう細かい背景は映画としてハショッている」ということをご理解いただいた上で、『海難1890』はたしかに、できるだけ多くの日本人・トルコ人に見てほしい映画だ、とオススメします!時代考証などもすごくキチンとしているので、19世紀のトルコ海軍の制服や武装や船上生活を知りたいというマニアックな方にも見応えあるのではないでしょうか?そんなマニアックな視点で見ているのは私くらいか、、?



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