連休中の『シンドラーのリスト』:10代の時に初めてこの作品を見た時の気持ちを思い出したこと
皆さん、こんにちは。今日はゴールデンウィーク中ということで、連休の過ごし方のオススメとしての、「こういう時こそ、普段見ないようなメッセージ性の強い、力の入る映画を見るのはいかが?」のお誘いの話です。
私は先日、以下の記事で、スピルバーグ監督に対する敬愛の念の話をしました。
そこでも言ったことですし、その繰り返しになってはしまいますが、
実はスピルバーグ監督というのは「スリリングで楽しい映画をたくさん作ってくれたエンタメおじさん」などで済ませられない、
真面目に考察すると、テクニック的にも、テーマ的にも、かなり論ずるのが難しい人と思います。
※だいいち、ご本人がユダヤ系という出自を隠さず前面に押し出した上で、『ミュンヘン』という、見た者をたいへん厳しい論争に巻き込んでくるような重い映画を放ってきた人ですぜ。『ミュンヘン』見た時は「よくこんな、イスラエル寄りからもパレスチナ寄りからも憎まれそうな映画をアメリカ映画として撮れたな、、、」と私のほうが怖くなりましたよ、、、。
だが今回は『ミュンヘン』の話ではなく、
私がスピルバーグ監督作品の中でも、とにかく、人生で何度も見てしまっている映画、『シンドラーのリスト』です。
私はこの作品を10代の時に、一人で映画館へ見に行った、
もともと私が『ジュラシックパーク』などの影響でスピルバーグ映画が好きな少年だった上に
「凄い映画だ」と評判だったので見に行ったわけですが、
いやあ、本当にあの年齢の時にリアルタイムで劇場で見ておいて、よかった。
以来、生涯で何度も、確認するように見てしまっている映画です。
いうまでもなく、こちらは
ホロコーストを扱った大作。
そして私としても、
「ホロコーストのことをそれほど詳しく知らない人」(※たぶん10代の時の私を筆頭に、特別な興味を持ったことでもなく過ごしていた場合の、たいていの日本人のそうだと思いますが)への入門として、本作を広くオススメしたい。
言い方はよくないのですが、さすがはスピルバーグ、「オハナシ」として、メリハリのきいた起承転結と、わかりやすいキャラクター造形と、そして感動的な音楽と描写でぐいぐいと私たちをホロコーストの「現場」に惹きこんでくれます。オハナシとして、ね。
ただし、この映画、注意点もあります。
この映画で描かれているホロコーストは、歴史考証や、さまざまな人の証言を踏まえて作られているとはいえ、
やはり「オハナシ」としてまとめている上での嘘や省略もある。この映画を見ただけでホロコーストがわかった、と思ってはいけないし、
いやそもそも、
ホロコースト最大の怖さ、というか、気持ちの悪さは、
「実際には何があったのか、どれだけのことが本当は起こっていたのか、全貌がいまだに、まだまだ、よくわからない」点にあるわけです。よくわからないうちに、当時を知る証言者は減っていく。
そもそも、敗戦時のナチスが徹底的に証拠隠滅を図ったために、かなり意図的に「肝心なことがわからない」。
それゆえに600万人という犠牲者数もあくまで「推計」であって、ここにドイツ本国でも「実際の犠牲者数はもっと少なかったはずだ!戦争の中でホロコーストとは別の理由で死亡したユダヤ人数が紛れているのだ!」と主張する人々が出てくる余地もある(※まあ、私個人の意見としては、600万人が実際には500万人だろうと400万人だろうと、ベースの桁が巨大すぎるのでそこの数字の厳密さにこだわる理由はとうに吹っ飛んでいると思っていますが・・・)
毒ガス室についても、「実際にあった」「いや、さすがに毒ガス室なんてものはなかった」の両方の食い違い論争がずっと続いている。『シンドラーのリスト』もその経緯は踏まえていて、毒ガス室そのものはこの映画には登場せず、「毒ガス室があるらしい」という噂に怯える囚人たちの描写があるのみにとどまっている。
そういう意味では『シンドラーのリスト』はかなり配慮した作りになっているが、この一本でも、「実際にはこんなことはなかった」「いや、実際もこうだった」の喧々諤々の言い争いのタネになる。
けっきょく、それほどにいまだにセンシティブな問題なわけです。そして残念ながら今後もそう。「こんな恐ろしい話、せめてすべての真実と犠牲者の名前を明らかにしてほしい」と思っても、それが、もはや、よくわからない。
だから、いつもの言い方にはなってしまうものの、
こういう映画を入門にして、見て、感情を揺さぶられたことをきっかけに、そのあとは自分でいろんな本やいろんなサイトを巡って勉強してください、ということになります。ナニゴトも最後は自分で勉強して掴むしかない。そして、そういう勉強のきっかけとして、『シンドラーのリスト』のようなドラマとしてよくできた映画を一度見て、おおいに感情を揺さぶられるのは良いことと思うのです。
そういう意味で、
繰り返しになりますが、
私は10代の時に、この映画を観ておいて、本当によかった。
私は10代の時に映画館でこの映画を観て、文字通り、最後に涙がこぼれてしまった。その10代の時の感情を生涯大切にしていたいと思います。
そして、そんな純粋な心でこの映画を観た私が、ユダヤ人問題に関心を強め、バックパッカーとしてイスラエルやエジプトを歩き、社会人になってからイスラエル出身の英語の先生に出会って中東戦争のことを聞き、とうぜん、今起こっている中東の問題についてもいろいろな思うことがあるが、それはまた、私個人の話で、別の話だ。
この連休にまたひさびさに『シンドラーのリスト』を見て、10代の頃の感情を再び思い出した私としては、今日の記事で言いたいことは「連休と言うものはぜひ、こういうメッセージ性の強い映画をじっくり見る機会にするのはいかが?」ということであり、
見たい映画を迷っているなら、『シンドラーのリスト』はオススメである、ということです。特に、若い人たちには積極的に見てほしい。とてつもなく打ちのめされる作品なので、勉強や仕事がお休み中、つまり、連休中に見るのがとてもオススメな映画です。