社長のひとりごと(32)
『関心の幅』
以前、よく本を読むということに触れました。
今は以前ほどは読んではいませんが、それでもジャンル問わず月に数冊は目を通しています。
少し話は変わりますが、最近の本屋さんに並ぶ文庫やコミックや、またそこから映像化される作品の傾向として「異世界もの」というジャンルがとても増えたな、と感じています。
「果てしない物語」(ネバー・エンディング・ストーリー)や「ナルニア国物語」それから「オズの魔法使い」など古くからあるジャンルではあります。「ハリー・ポッター」や「十二国記」なんかもそうですね。
ひょんなことから、現世から異世界に紛れこんだ主人公たちが、都合よく授かった特殊能力を活用して、現状を打破していったり、異世界に新たな文化を吹き込んでいくというものです。
興味本位で何作か目を通してみましたが、まるでお礼状の書き方のように、何かもう決まったフォーマットがあるのではないかと思うほど、どれもよく似通ったストーリーが多いです。
悪く言えば、数ある過去の作品の焼き直しであり、良く言えば、万能な主人公が活躍するのを安心して読み進めることができるストレスフリーの読み物です。
似たようなジャンルでも昔の作品の作風と違うのは、現世で苦労をしていた主人公たちは元の世界に戻る必要はないという点でしょうか。
一旦現世での苦労はすべてリセットして、大いなる力を得た上で、新たな生を異世界にて労せずしてやり直せるというお手軽な点。
ドラクエを最強レベルでスタートから遊べるようなものです。
本当にマンガのようにサクサク読めますし、決してつまらないワケではありません。ただ、一抹の危惧としてあるのが、基本ご都合主義で進んでいく話が多いですから、その甘美な設定が、ある意味麻薬のように読む人の脳内に快楽物質を発生させているのではないかということ。
こればかりにハマって読んでいると、他のジャンルに目を向ける時間もあっという間に無くなってしまいそうです。
なにしろ、物凄いスピードで物凄い量の物語が世に出続けていますから。
もちろんそれぞれの趣味の範疇ですから、お好きなものを読めばいいのですが、私個人としては、なるべく多ジャンルに渡って読むように意識をしています。
好きな作家やジャンルなどの傾向は私にだってあります。ただ、それより多ジャンルに渡って読める機会を与えてくれるのは「文学賞受賞作品」や「書評家による薦め」などです。好みの文学賞や好みの書評家を押さえておくと、それらに薦められた結果として未踏のジャンルの良書に出会える喜びが得られたりします。また、マンガと違って文字だけの本は自身の中での想像力の発揮が求められます。
今の年齢になってもまだ柔軟な発想が出来ているかどうか、確認の意味でも年に一冊以上は難解な海外のSF作品などにも挑戦するようにしています。
これも翻訳による当たりはずれがあるのですけどね。
関心の幅は自らの意志で広げられますし、狭めることもできます。