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窓際の松子さん。

僕は、名前を呼ばれると嬉しい。

実は深く考えると、
いいことばかりではないかもしれないけど…
『いいように使われてる…?』ってなったりね。

でも、単純に嬉しい。

名前を呼んで話をすると、
頼られてるなっていう実感、
役に立ってるな、と思うことができる。

誰かの役に立ちたい。
まさにそのためにこの仕事してるようなもん。



僕は老人ホームで働いているんだけども、

うちの入居者さんは、どうか。
頼られて、名前を呼ばれることがあるだろうか。


『〇〇さん』

『歯を磨きましょうね。
おむつ変えましょうね。
お風呂行きましょうね。
ご飯食べましょうね。』


援助の対象者として
呼ばれることばかりじゃないだろうか。



仕事もやめ、

伴侶に先立たれ、

病気を抱え、

身体の自由がききにくくなり、

慣れ親しんだ家・地域、
友人・家族と離れ、

援助の対象者としてのみ、
名前を呼ばれる日々。


あかん、書きながら辛くなってきた。



マザーテレサが、
「この世で最大の不幸は貧しさや病などではなく、
自分は誰からも必要とされていないと感ずること」
と言っていたそうで、

高齢者施設で働く僕にとっても、
人の役に立ちたいと思っている僕にとっても、
社会的役割の喪失、
この言葉は、とても怖い言葉だ。


入居者さんは、
どんな気持ちで毎日を過ごしているんだろう。



今日、そんな中で、
僕を一番、腹の底から笑わせてくれたのは、

要介護5、という一番重度の段階の、
寝たきりの、100歳を超えた、
おばあちゃんだった。


その方を仮に松子さんとする。


松子さんは、口からご飯が食べれない。

食べると肺炎を起こしてしまう。

だから、胃ろうという
胃に直接入れる方法で、栄養をとられている。


昔は、車いすを自分で動かし、
トイレに行き、
もちろんご飯も食べていた。

ご家族に愛され、
冗談も言う、
ちょっと下ネタ好きの
かわいいおばあちゃん。

僕を見ると
「おとこまえやなー」と言ってくれるが、
記憶障害で毎回初対面なので、
「あんただれ?」と言うのがお決まりだった。


肺炎を繰り返し、胃ろうになり、
起きる機会も減り、
今ではあまり目も開かないし、
声も聞かない。

僕のこだわり、お願いで、
1日に一回は車椅子に移ってリビングで
窓際で日を浴びてもらうよう、
職員さんにお願いしている。

…それだって松子さんはどう思ってるかわからない。
ただの僕のエゴかもしれない。
何やったら迷惑やと思ってるかも知らない。
(ついでに職員さんも、面倒に思ってるかも知れない。)

でも、それがなかったら、
完全に寝たきり。

ベットから起きる機会は無くなってしまう。
出来る限り続けてもらおうと思っている。


今日も、
窓際にいる松子さんに声をかけた。

最近は目も開かない、声も聞けない。


ただ僕は『おとこまえがきたでー。』と
声をかける。

寝てる松子さんは、
特に反応することもなく、

いつもは僕も、寝息を立ててる松子さんに
安心しながら離れるんだけども、

今日は、
右目が開いて、僕の顔を見た。

すぐ閉じたけど、たしかに。

『松子さん!目開いた!見える?!』

うなづいてくれる。

『うわー!松子さん!調子どう??おとこまえやで!?』

テンション上がってしまって笑
自己紹介男前て笑


すると松子さん、何か言ってる!

『何?松子さん、何か?!』









「ね゛む゛だ ー い゛…」








『松子さん、いつも…

松子…

いつ…

いつも…

うひひひひ。

松子さん、

いっつも寝てるやん!笑笑笑笑笑笑

足らん???足らんのん???

あはははははは!!!』




あー、楽しかった。



僕にとって、松子さんは、必要。

癒しの、窓際の松子さん。


追伸、
僕のわがままを聞いてくれてる、
職員さん、看護師さん、
あなたたちのおかげで、
今日も松子さんは、元気です。

ありがとうございます。


ちょっと何言いたいのか分からなくなってしまった…


毎日脈絡のない文章で申し訳ないです笑




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