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【goodな仲間 特別編】木原実さん インタビュー

【goodな仲間 #2】にてご紹介した「もしもプロジェクト」さんが主催する『TOKYOもしもFES渋谷2023』が、9月2日(土)と3日(日)に代々木公園にて開催されました。

イベント2日目のステージ企画では、NHKと民放5局のアナウンサーさん、マスコットキャラクターたちが集まり、楽しく防災を学べるトークショー『みんなの防災+ソナエ』が行われました。

今回は、【goodな仲間 #2】特別編として、『みんなの防災+ソナエ』ステージにも登壇された気象予報士・木原 実さんのインタビューをお届けします!

気象予報士、そして防災士としての立場から、「防災と渋谷」についてお話を伺ってきました。

▶︎『TOKYOもしもFES渋谷2023』イベントサイトはこちら
▶︎【goodな仲間 番外編】TOKYOもしもFES渋谷2023 《イベントレポート》

(写真:『みんなの防災+ソナエ』に登壇された木原さん)

⚫︎防災を意識するようになったきっかけ

学生スタッフ:木原さんが防災について考えるようになったきっかけを教えてください。

木原さん:私は以前から、気象予報士として気象災害等を扱ってきましたが、阪神淡路大震災の時に、地震についてあまり知らないということを痛感したんです。テレビの報道では、気象予報士の私にも地震のことを話すように求められたのですが、私にはテレビで話せるほどの地震についての知識がありませんでした。当時、番組のスタッフに、『気象庁に地震課があるから、地震についてもう少し知っていると思った』と言われた時に、ハッとしました。そして、台風等の気象についてだけではなく、自然災害の一つである地震のことを勉強しようと思いました。
 それからしばらくして、防災士という資格があることをニュースを見て知り、地震の勉強をするために防災士の資格を取りました。防災士の資格を取ったことで、地震に関する情報にアンテナを張るようになり、それ以来、地震等の報道が目に留まるようになりました。少しずつ勉強を進めてきて、今では防災に関する講演等のお仕事も増えるようになりました。

⚫︎『もしもFES』について

 私は以前、渋谷区に住んでいたこともあり、渋谷での防災イベントにお誘いいただいて、お手伝いできることがあればぜひ協力したいと思いました。
このイベントステージは昨年から行っていますが、普段視聴率を競っているテレビ局が、局の垣根を越えてこうしたイベントを行うことはなかなかないですよね。ただ、地震災害に関しては、NHKさんの働きかけもあり、民放各局が局の垣根を超えて勉強会等を行っていたりするんです。昨年のもしもFESも複数のテレビ局が集まったのですが、今年はNHKも参加し、6局が揃ってイベントを行うことができました。
 もしもFESに参加する度に、知らなかったことをいくつか学べるので勉強になりますし、有意義なイベントだと思っています。また、普段のテレビでの仕事は、カメラを相手にしているので、ステージからお客さんの顔や反応が見えるのもとても良いなと思います。テレビと違うライブの良いところですね。もしもFESは、自衛隊の方もいらしたり、総合的に多くの方が関わっていたりするので、魅力的なイベントだと感じています。
 また、イベントを開催している代々木公園は緊急時の避難場所になっていますよね。その場所でこうして防災のイベントを行えるというのは、ますます有意義な活動だなと思っています。機会があれば、来年以降も参加したいです。

(写真:『みんなの防災+ソナエ』木原さん)

⚫︎テレビでのお仕事について

学生スタッフ:災害につながる気象情報(台風や大雪など)を扱う際に心がけていることはありますか。

木原さん:テレビって画を見るものですからね。普段は割とカラフルなシャツ等を着て番組に出演しているのですが、台風が近づいたり、警報等の気象情報が多く出ていたりする時は、無地のシャツを着用するなどして、「いつもと違うな」「木原がいつもと違うぞ」というところから、警報等、防災情報が出ているということを伝えるように意識しています。
 また、テレビの情報番組には、決まった短い時間で天気予報のコーナーがありますよね。番組は3時間以上ありますが、お天気コーナーを全部合わせても、12分くらいしかない。なので、複数回あるお天気コーナーごとに、「その時」に起きていることを伝えるようにしています。
例えば、記録的大雨といった情報等、その時に分かっている最新情報を必ず入れるようにしています。
 今起きていることを伝えられるのが生放送なので、天気予報の部分は基本的に録画しないんです。録画して繰り返し放送する場合もあるけれど、天気予報は、どのテレビ局でも生で、屋外から放送していることが多いと思います。例えば、今吹いている風や雨の強さの様子等、生放送だからこそ伝えられる「見える」情報を伝えることは、屋外から届ける天気予報ならではの要素であり、重要だと思っています。

学生スタッフ:災害時の報道に関して、見る側が意識すべきことはありますか。

木原さん:テレビは、不特定多数の人が見ているものです。誰が見ているかは僕らにもわからないので、視聴者全員にあまねく「今起きていることは何か」を大雑把に伝えています。そのあとは、自分たちで情報を拾ってもらいたい
 情報を拾うために、気象庁のキキクルや、ハザードマップで、自分の今いるところの安全性・危険性を確認して、今どのレベルまで危険なのかを見てくださいと、テレビでも呼びかけています。
 テレビで扱える情報には限りがあり、一人一人が住んでいる地域の詳細情報までは、地上波のテレビは扱えないんです。あなたの家のことはあなたが調べなくてはいけないのです。
 我々もテレビで様々な情報をお伝えしますが、刻一刻と状況は変わっていきます。テレビで報道したことも30分後には変わってしまうかもしれないのです。そうした情報を30分ごと、15分ごとに確かめるのはあなた自身がすることなのだということを繰り返し伝えています。
 最近は、「自分の身は自分で守る」とよく言われていますよね。いささか無責任に捉えられてしまうかもしれませんが、昔のように、自衛隊、消防、町内会からというふうにトップダウンしてきて、避難するよう指示を受けるのではなく、自分で自分の情報を見定めて、避難するという時代になってきているのだと思います。
 ただ、今はまだそのことが伝わりきっていないと感じています。防災の講演を行う際にお客さんに呼びかけるのですが、キキクルやマイ・タイムラインといったツールもまだ認知度が低いなと感じています。
 マイ・タイムラインは、逃げ遅れないように前もって自分の行動をチェックし、メモに書いておくというものです。関係者の間では、マイ・タイムラインとハザードマップ、そしてキキクルについて、徹底して認知を広げていこうという話になっています。もっともっと伝えていかなくてはいけないなと思います。
 ですが、毎日毎日天気予報で「防災情報のいろは」ばかり放送するわけにはいかないですよね。なので、防災に関する講演でお話したり、もしもFESのようなイベントであったり、こうした機会を大切にしたいと考えています。地震のような災害は、今来るかもしれないし、いつ来るかわからないものですが、予測できないからこそ、いつでも今できる100パーセントを行えるように、備えておくことが重要だと思います。

もしもの時に活用すべき防災コンテンツ

▶︎キキクル(危険度分析)- 気象庁
大雨等の災害から、あなたやご家族の大切な命を守るための情報です。
▶︎ハザードマップ - 国土交通省
▶︎マイ・タイムライン - 国土交通省
住民一人ひとりの防災行動計画です。

⚫︎渋谷について

学生スタッフ:気象予報士と防災士の資格をお持ちの木原さんから見て、渋谷はどのような街ですか。

木原さん:渋谷という街は、住んでいる人も、外から来る人も大勢いて、朝も夜も賑わっているところなので、言うなれば東京中の人たちが集まってくるような非常に代表的な場所の一つだなと思っています。その場所でもしもFESのような防災イベントを行えることは、有意義であると感じています。
 ただ、渋谷の地形や、人が多く集まるという意味では、「もしも」の時、渋谷は危ない場所であると思います。名前の通り、渋谷は谷の地形をしていますよね。ハザードマップを見ればわかると思うのですが、もしも最大級の水害が起きてしまったら、多分ハチ公は水没するというレベルの土地なんです。安全だと言われている場所でも想定外のことが起こる可能性もあります。
 渋谷が水没してしまうとなると、地下鉄が心配です。ハチ公が水没しているのに地下鉄が無事だという状況はなかなか考えにくいです。「三十六計逃げるにしかず」ということわざがありますが、やっぱりどんなに強い土地でも逃げることが一番強いのです。なので、危ないところには近づかないでほしいです。

 また、大勢の人たちが集まっていると人はパニックになってしまいます。もしもの時パニックにならないように、街にいる人たちそれぞれが冷静な対応を取れたら良いのですが、現状は防災知識があまりない人も多くいるわけですよね。なので、もしもの時は、知識のある人に「落ち着きましょう」「危ないですよ」と呼びかけてもらいたいです。街はすぐには変わりませんが、人の気持ちを変えることはできるので、みんなで安全を呼びかけていくことが大事だと思います。
 私は、パニックが一番怖いと思っていて、特に夜中は酔っ払っている方も多いので、騒いだりふざけたりしてしまう人もいるでしょうし、危ない状況も想定されます。そうなると、そういうことに乗じて悪さをする人が出てきてしまったり。東日本大震災の時には、悲惨な被災地で、空き巣に入る人が出てくる等、悲しい出来事も発生してしまいました。非常に危険なことが災害の最中に起きることも想定して、災害以外のことからも自分の身を守らないといけないのです。悪いことばかり考えると怖くて渋谷に遊びに来られなくなってしまいますが、一人で歩かないようにする等、危機感を持つことは必要だと思います。
 しかし、もちろん良い人たちも仲間もいますし、災害時に備えて安全な街にしようと取り組む行政の人たちもいるので、みんなで意見を交換しあい実現に向けて取り組んでいけば、安全な街になるだろうと思います。
 いつ地震が来ても大丈夫な街を目指したいですよね。それは渋谷だけではなく、自分たちの住んでいる街もそうしたいなと思います。そして、自分たちの生きる今だけではなく、自分の子や孫の世代など後世もずっと続くように、少しずつ安全な街にしていかなくてはいけないなと思います。

【さいごに】

 木原さんのお話を伺い、「もしも」のために備えられること・学べることが多くあると感じました。テレビやインターネット、スマートフォンのアプリ等を合わせて活用し、私たち一人ひとりが主体的に情報を調べることが大切だと思います。
 また、木原さんは「まずは、自分の家の中の対策をきちんと行い、それから家族、お友達、あるいは会社や学校と、徐々に意識を広げていってほしい」ともお話されていました。
 多くの人が集まる渋谷に通う1人として、「もしも」の時に冷静に行動できるように知っておくべき情報や基本的な行動意識があると気付かされました。こうして気付くことから、「守られる人から守る人に変わろう」と意識する人が増えれば良いなと思います。
 今回のこの記事も、みなさんが防災について考えるきっかけになれば嬉しいです。

 もしもFESのような防災イベントに参加したり、防災に関する番組やサイトをチェックしたりする等、普段の生活の中にも、もしもの時に備えて行える行動や意識が多くあります。
 みなさんも一緒に「もしも」の備えについて考えてみませんか。


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