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本物の気持ち

もはや定番になっているけれど、東京から京都に戻ってきたタイミングでこの文章を書きはじめた。いつも得るものが多いからか、自然と書きたい気持ちが湧きはじめる早朝の京都。これも笠置に移住したからこそ。常に新鮮な気持ちで東京に向かうことができているし、新しいなにかを笠置に持ち帰ることができている。今回の東京滞在も僕にとって奇跡のようなギフトが待っていた。

写真家として、そして”ひと”として”師”の存在は本当に大切だ。なにか道に迷ったときや、途方に暮れてしまったときに光明のような温かいキヅキを与えてもらったり、時には厳しく、道を踏み外しそうになった軌道を修正してくれる。そして、僕にとって常に人生の刺激を与えてくれる存在だ。

今回の滞在中、藤里一郎先生の写真展「おんな」に伺うことが出来た。常に女性ポートレイトの最前線を走り続ける先生の新たなジャンルの確立をするためのプロジェクト。そこで僕を待っていたのは”本物”だった。五感を刺激するような写真たち。愛する女性を愛おしくも優しく切り取り、ふたりの間にある空気、湿度、温もり、匂い、そして切ないほどの”愛”が写っていた。触れてみたいと思ってしまうウェットな質感。波紋と波紋が重なり合うようなやわらかなリズムが気持ちの揺らぎを写す。気付けば僕は涙目になっていた。

いま僕は「町の魅力は”ひと”の魅力」をテーマに市井の人々にカメラを向け、ポジティブな空気やひとの温かさ、ひとっていいなと少しでも感じてもらえるような写真を心がけて日々シャッターを切っている。

そんな僕の原点も女性ポートレイト。

偶然か必然か、今回の滞在最終日に僕の写真家人生において原点のモデルである女優・井上彩子との再開を果たすことができた。ファインダー越しに見る彼女は誰よりも綺麗で、愛おしく、どこか懐かしい。限られた時間の中で、愛する女性を切り取る。なんて切ない行為なんだろう。

次があるのかはわからない。これが最後かもしれない。

ずっと同じ”ひと”と過ごせる保証なんてどこにもないからこそ、僕は写真という永遠に残す。恋人も家族も、仲間も友人もみんな一緒だ。共に時間を過ごすことのできる奇跡をもっと大切にしていきたい。

はじめて会う”ひと”との素敵な瞬間や、どこか見過ごしがちな大切な一瞬もすべて気持ちは同じ。”愛する”という当たり前のことを改めて心に刻むことができた本当に貴重な時間だった。本当にありがとう。

”本物の気持ち”は写る。

またカメラを手に、笠置町の”ひと”の魅力を伝えていきたい。
僕にとって写真は希望だ。

シバタタツヤ


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