名称未設定

こんこんの施設名称とロゴ開発プロセス

こんにちは、京都にできるコンテナ複合施設「こんこん」のコンセプト開発を担当してるNue incの松倉です。

気づけば「こんこん」の情報開示から数週間。あっという間に半分のテナントに入居者が決まりました。
今回は、「こんこん」という名前に至った理由やロゴの制作プロセスを公開していこうと思います。

依頼プロセスのデザイン

このプロジェクトの制作ハンドリングは全て松倉のやりたいようにやらせてもらいました。ありがたき!
ぬえさんの通常の案件では、以下のようなフローが一般的かと思います。

<通常のフロー>
1)ターゲットの選定
2)コンセプト開発/戦略開発
3)制作クリエイターのチームメイク
3)施設名称の作成
4)ロゴデザイン開発
5)レビュー/調整
6)納品

しかし、2年前にふと、お決まりのこのフローをこの施設なら変えていけるのではないか?と気づいたんです。というのも〜2)の時点でターゲットは「共創自治区」というキーワードが生まれていました。

この言葉にあるように
「共創」…コラボレーションしながら生み出していくこと
「自治」…自分たちの事をみずから処理すること
という流れではあれば、オーナー/クライアントの承認フローを取っ払っていくことが大前提でした。

とはいえ、クライアントオーナーと言いながらもオーナーたちは、僕らと同じ作る側で一緒に動き回ってくれている関係性。なんども酒を飲み交わし信頼関係でがっちり結ばれたチームになっていました。
これは!実現できるのではないか!と提案したのが以下のプロセス。


入居者がすべてをつくる

資料のテキストの抜粋。この手の施設を考える上で日本中に誕生している「コワーキングスペース」との差別化を図る必要があった。レッドオーシャンに飛び込む提案はしたくない。

なので「コワーキングスペースができないこと」を探った。
設備も空間もオシャレに完璧に仕上げてくれているコワーキングスペース。
その逆張りで空っぽの何もない状態を提供することこそ、一番の差別化ではないかと思ったのだ。なぜなら自分たちの空間は自分たちで作りたい!というターゲットにがっちり含まれる僕自身の決断もある。

そして、一緒に遊ぼうと誘うように同じ作り手を巻き込みながら生まれる状況は、この場ならではのグルーヴを生むのではないかと考えたのです。


一緒に遊ぼうよ!という急なお誘い

そんな提案を「いいね!新しい!」と喜んでくれたクライアントオーナー含む、企てメンバーのGOもあって、まずは身近な仲間に声をかけた。

デザイナーのmem前田健治さん。もはやスタメン。

コピーライターのかたちラボ田中さん。

ぬえさんが一番よく仕事を依頼してる二人は大阪と兵庫と全然京都じゃないのに誘った。そしたら、乗ってくれるし入居するわ!とまさに本当に一緒に遊ぼうという感じで集まってくれた。


名前を決めるまで

入居を決める人たちが集まり、わいわいと議論を重ねる。ジャズセッションのようなかたちだ。その会議の中でコンテナコンビナートという言葉がでてきた。頭だけとって「コンコン」。そのときは無数のアイデアの一つだった。そこから、ドアをノックする音もコンコンだね。水が懇々と湧き出るもコンコンだ。献献と酒を飲むもコンコンだ。コンコンって音にはいろんな意味がある。

コピーライター田中さんが、それを持ち帰り料理をする。
で、送られてきた言葉がこちら。

施設名称なのに、その先の時間が見える。
そんな言葉に添えられて、「とことん、こんこんと。」の締めくくり。
あ、これがいい!と即決。カッコつけた名前でもなく、良いのか悪いかもわからない得体の知れない音「こんこん」に込められた想いがぐっとこのテキストで温度感を持った瞬間でした。


デザインは一発勝負

松倉自身、この全丸投げ依頼のクリエイティブ・プロセスは初めてのことだったのですが、ネーミングの決定プロセスにすごい手応えを感じ、これら名前が出来上がるまでの経緯を前田くんは全て把握してくれていたので、このコンセプト、施設名称、そこで起きてほしい時間の情報から、自由にロゴを発想してもらいました。そして、出来上がったのがこれ。

事前に面白い視点を見つけたと前田くんから連絡を受けていました。
この手のとんちの掛け合いのような制作プロセスはおそらく松倉と前田くんの間ではなんども行われており、そのとき「あぁ、多分めっちゃ良いの出来上がってくるな」という個人的な予感がありました。

パッと見ると2文字。よくよくみると「こ」と「ん」が合体している。
記号的ロゴとメッセージがこちら。

こんこん”とする様
ー「“こんこん”としてますねー。」
ー「この“こんこん”ってどういうところからきたの?」
ー「100年前の京都に「こんこん」っていう施設があって、その様がそのまま言葉として使われるようになったらしいよ。」

というようになってほしい、
そんな20・30年後もしくは100年後単位での望み。
ちょっと大げさかもしれませんが。。

漢字はどうしても意味が限定的にしてしまうので悩ましい。
そこで今は使われることはないのですが、
江戸時代以前まで多く使われていた「合字(合略仮名)」で“こんこん”を考えてみました。
表音文字として捉えているので、特に意味があるわけではなく、
これから作るというニュアンスが近いかもしれません。
合字自体も多くの人が使うからゆえに生まれた古人の知恵なので。

よく「合字」や「合略仮名」に行き着いたなと驚くばかりだったのですが、このあたり読むと非常に面白いです。今はなく文字。

前田くんがさりげなく添えた「表音文字として捉えているので、特に意味があるわけではなく、これから作るというニュアンスが近いかもしれません」という言葉にこのプロジェクトを深く理解してくれていることを感じたのでした。


なんだかんだ全てが1発で決まる

初めてやって見た制作プロセスは、いつも一緒に仕事している関係性もあるかもしれませんが、本当にジャズセッションのようでうねりがあり、その発露がどれもこれも予想しない展開で判断すべき僕自身も「あぁ、なんかわかんないけど、超良い気がする」という予感部分でのジャッジが続いた。

わかるものをわかるように作る。
これは結構商業的には大切なことなんだけれど、イマココの目の前の消費を促す為に磨かれたスキルだと痛感した。

ここで実現したいことは、ずっと長くそこにあり続け普遍的な空間であることだ。そうなったとき、普段飯を食う為に磨き上げたスキルとは対岸の領域でクリエイションをしていく必要があるのだなと大いに学んだ。

そして普段のプロセスでは絶対に行き着かないアウトプットへと着地でき他ことが嬉しい。

少し長くなったが、こうやって「こんこん」という名前とロゴが出来上がったのでした。

この「コンコン」ドキュメントしている間にもどんどん入居者が増え続けている。たくさんあったテナントも残り6室。もし興味ある人がいたら、ぜひ一度覗きにきてください。個別で内覧受け付けています。



いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。